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1-2 遠崎佳奈
私の後輩
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入学式が始まり、私たちは体育館へ向かった。
「新入生が入場します。拍手でお迎え下さい。」
周りのとろんとした目が大きく開く。
「イケメンいるかなぁ」
朝陽が言う。
「朝陽もイケメン好きになったの?」
クラスメイトのひなたが笑う。
「楓ならこういうかなと思って。」
彼は微笑む。
「あ!」
「どした?」
「私の後輩!!」
岩倉ヒロト。私の大切な後輩。
彼とは中学3年生の体育祭の時に出会ったのであった。
『いたああああああああい』
体育祭の片付けをしていると、1人の男子生徒が悲鳴をあげた。(それがヒロだった。)
どうやら金具を片付ける際、その金具の間に手を挟んでしまったらしい。
手からは血が滲みだしている。
『保健室行っていく!』
友達にそう言ってその男子は走っていった。
金具に手を挟むなんて災難だな。私はそんなことを考えながら黙々と自分の作業に取り掛かっていた。
すると、その男子が手を怪我した状態で戻ってきた。
『先生いなかった。』
彼は困った表情でそこに立っていた。
血、流したままじゃん。痛いだろうし、衛生的にも悪いと思って、私は彼の怪我してない腕を掴んだ。
『ねえ、洗いに行かないと!』
なんでそんなことをしたのかはわからない。
私は急いで水道の蛇口をひねって大量の水を出す。
『ほら洗って。』
止血しないと。彼はハンカチを持っていなかったので、トイレに行き、トイレットペーパーをぐるぐる巻きにして持っていった。
『これ使って。』
彼の安堵した表情を見て、やって良かったなと思った。
それで終わりだと思っていたが、その次の日、私は彼に声を掛けられた。
『あの、昨日はありがとうございました。名前なんですか?』
正直答えるか迷った。
もしかしたら私の知られたくない事情を知っているかもしれない。
でももう半年もしないうちに卒業するし、いいやと思って答えた。
『遠崎佳奈です。』
『俺は岩倉ヒロトです!ヒロって呼んでください!』
そこからヒロと会うたびに話すようになった。おもしろくて良いやつだった。
卒業後は彼に勉強を教えた。私と同じ天沢国際高校の普通科を目指していると聞いて、精一杯教えた。合格はできないだろうといわれていた彼だったが、徐々に成績が伸びていき、合格した。
「入学おめでとう!」
入学式の後、偶然ヒロと会った。
「もう全部先輩のおかげです!ありがとうございます!」
「いえいえ。」
「これからまたよろしくお願いします!」
「よろしくねー」
良かった。昨年まで同じ出身の人が1人もいなかったため、少し寂しかった。でも今年は違う!
今後が楽しみだ。
「新入生が入場します。拍手でお迎え下さい。」
周りのとろんとした目が大きく開く。
「イケメンいるかなぁ」
朝陽が言う。
「朝陽もイケメン好きになったの?」
クラスメイトのひなたが笑う。
「楓ならこういうかなと思って。」
彼は微笑む。
「あ!」
「どした?」
「私の後輩!!」
岩倉ヒロト。私の大切な後輩。
彼とは中学3年生の体育祭の時に出会ったのであった。
『いたああああああああい』
体育祭の片付けをしていると、1人の男子生徒が悲鳴をあげた。(それがヒロだった。)
どうやら金具を片付ける際、その金具の間に手を挟んでしまったらしい。
手からは血が滲みだしている。
『保健室行っていく!』
友達にそう言ってその男子は走っていった。
金具に手を挟むなんて災難だな。私はそんなことを考えながら黙々と自分の作業に取り掛かっていた。
すると、その男子が手を怪我した状態で戻ってきた。
『先生いなかった。』
彼は困った表情でそこに立っていた。
血、流したままじゃん。痛いだろうし、衛生的にも悪いと思って、私は彼の怪我してない腕を掴んだ。
『ねえ、洗いに行かないと!』
なんでそんなことをしたのかはわからない。
私は急いで水道の蛇口をひねって大量の水を出す。
『ほら洗って。』
止血しないと。彼はハンカチを持っていなかったので、トイレに行き、トイレットペーパーをぐるぐる巻きにして持っていった。
『これ使って。』
彼の安堵した表情を見て、やって良かったなと思った。
それで終わりだと思っていたが、その次の日、私は彼に声を掛けられた。
『あの、昨日はありがとうございました。名前なんですか?』
正直答えるか迷った。
もしかしたら私の知られたくない事情を知っているかもしれない。
でももう半年もしないうちに卒業するし、いいやと思って答えた。
『遠崎佳奈です。』
『俺は岩倉ヒロトです!ヒロって呼んでください!』
そこからヒロと会うたびに話すようになった。おもしろくて良いやつだった。
卒業後は彼に勉強を教えた。私と同じ天沢国際高校の普通科を目指していると聞いて、精一杯教えた。合格はできないだろうといわれていた彼だったが、徐々に成績が伸びていき、合格した。
「入学おめでとう!」
入学式の後、偶然ヒロと会った。
「もう全部先輩のおかげです!ありがとうございます!」
「いえいえ。」
「これからまたよろしくお願いします!」
「よろしくねー」
良かった。昨年まで同じ出身の人が1人もいなかったため、少し寂しかった。でも今年は違う!
今後が楽しみだ。
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