もう一度君と…

海津渚

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1-1 井原悠太

突然の告白

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 4月の終盤。緊張した空気も少しずつ薄れていき、安定してきた。 

 俺は相変わらずずっと拓斗といる。ほかのクラスメイトとも話すが、名前を覚えられるほど仲良くなっていない。ほんとに名前覚えるのが苦手なのだ。 
 
 そんなとき、ヒロがにやにやした顔つきで俺のクラスにやってきた。 
 クラスのやつらは不審そうな顔つきで彼を眺める。 
「悠太~こっちこい。」 
「なんだよ。」 
 俺まで変人扱いはされたくないんだけれど。
 
「おまえ、普通科の間でモテてるぞ。」 
「はあ?」 
 俺がモテる?中学は嫌われ者だったのに。 
「冗談だ。」 
「それがそうじゃないんだ。ほらこれ。」 
 1通の手紙を差し出された。 
「なにこれ。」 
「クラスの子に井原くんに渡してほしいって。」 
 俺は封筒を開けてみた。 

[2組の橋本姫月です。話したいことがあるので放課後屋上にきてくれますか。] 
「なんだよこれ。」 
「なんだよ、じゃねーよ。放課後楽しみですね~」 
「こんなことに付き合うほど放課後暇じゃないんだわ。今呼んできてくれる?俺階段のところにいるから。」 
「了解。」 
 

 階段のところにいるともじもじした生徒が1人やってきた。 
「えっと、井原くん…私2組の橋本姫月です。」 
 ずいぶんおとなしそうな子だ。 
「どうした?」 
「えっと…その…一目ぼれしてしまいました…。友達からでいいので仲良くしてくれませんか。」 

 はあ?そもそもなんで俺のこと知っているんだ。それに友達からで、って初対面なのに?なんて答えればいいんだ。めんどくさい。わからない。


「ごめん、無理。」 
 頭が真っ白になり、最終的に俺の口から出てきたのはそれだった。 
 何が無理なのかわからない。なんでそんな言い方しかできないのかもわからない。 
 彼女は泣き出した。勝手に言って泣いて、どういうことだ。 
 俺は……今は恋愛したくない。考えたくもない。 
「じゃ。」 
 俺はそっとその場を離れ、教室に戻った。朝からしんどい。 


 帰るなり、拓斗に質問攻めされた。 
「ラブレターもらったの?さっきその子と会ってきたの?どんな感じだった?告白された? タイプだった?かわいい系?かっこいい系?何話した?」 
 
 彼の声が大きいせいで、周りの人たちもこそこそ話しだした。 
「井原告白されたの?」 
「何組だろ。」 
 はあ。 
 俺は周りにも聞こえるような大きな溜息をつく。 
「俺さ、恋愛とかそういうこと興味ないんだ。だからそっとしてくれ。」 
「えー彼女ほしくないの?」 
「今はいらない。」 
「でも彼女出来たら絶対楽しいじゃん~人生きらきらするよ。」 
「恋愛はそんな甘くないよ。」 


 
『なんであんなやつが付き合えたんだろ。』 
『年上と付き合うとかエロイことしか考えてないだろ』 
『気持ち悪。』 
『早く別れたらいいのにな。』 
『それなー』 


  
 うっ。 
「悠太、顔真っ青だけど…。」 
「そうかな…?」 
「悩んでいる?話聞くよ。」 
「何にも悩んでない。」 

 言えない。拓斗に言えない。ヒロにも言ってないことだし。嫌われたくない。 
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