もう一度君と…

海津渚

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1-1 井原悠太

ヒロと拓斗

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[悠太、国際科どんな感じ?2組はわいわいしてる] 

 入学式ぶりだろうか。親友のヒロからメールが来た。 
 親友だといってもあんまり連絡はしない。話があったら直接話すという感じなのだが、クラスが遠いのでまだ話しに行ったことがない。
[どちらかというと静かかなー] 
[よかったら2組来て] 
 そこまで言うなら、行ってみるか。 
 
「拓斗ー、2組行くんだけど来る?」 
「2組?」 
「うん、親友のヒロがいるんだ。」 
「おけ。」 

 廊下を歩いていると、やけに周りがざわついていることに気が付いた。何かあったのか。女子がきゃーきゃー騒いでいる。 

 2組を覗くと、ヒロは10人くらいの中心にいて盛り上がっていた。さすがヒロ。どこにいたって人気者だ。 

「ヒロ!」 
「おっ!」 
 ヒロはすぐに気が付き、やってきた。 
「おひさ~」 
「久しぶり。電車が同じ方面だったらなー」 
 ヒロと俺は同じ町に住んでいるが、住んでいる位置が違っていて、それで乗る電車の種類が違うのだ。 

「悠太の親友さんこんにちは!俺は拓斗。よろしくな。」 
 ヒロは、 
「電車同じ方面じゃない?毎日見かける!」 
とわくわくした様子だ。 
「え!まじ?」 
「うん!何駅?」 
「下山駅。」 
「同じじゃん。今度会ったら一緒に帰ろうぜ。俺いつも1人で寂しんだよー」 

 楽しそうに話す2人の横で俺は話についていけず、戸惑っていた。拓斗をヒロにとられたようなそんな気持ち。初対面でも話せるヒロは羨ましい。 
 俺も帰りは1人だ。まだ同じ方面の友達を見つけてない。1人は楽だから別にいいんだけれど…。 
 先に教室に戻ろう。 

 廊下を歩いていると、やっぱり視線が集まり、嫌だった。 
 


「ごめん悠太、話ついていけなかったよな。」 
 拓斗が教室に戻ってきて言う。
「ううん。」 
「機嫌悪くした?ごめんよ?」 
「いいって。」 
「ゆうちゃん~ごめんって~」 
 びくっ。

 
 
『ゆうちゃん、なんちゃって。あはは。』 
 


「ゆうちゃん~ゆうちゃん~」 
「その名前で呼ばないで。」 
「ゆうちゃん~」 
「ほんとにやめて!!!」 
「ごめんごめん。」 
 全然謝っているような声じゃなかったが許した。
 ずっと引きずっていたらだめだ。 
「でも、話ついていけなかったのは…。ヒロ誰とでも仲良くできるから、羨ましいというかなんというか。」 

 俺の言葉に拓斗はくすくす笑う。 
「そっかあ。それだけ俺のこと好きなんだね~」 
「その言い方やめろ。」 

 拓斗はいつもの感じで接してくれる。それだけで十分だと思った。 
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