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・小畑つむぎ
学校が終わり、高崎くんは私と一緒に美術室へやってきた。 杏華も来たら高崎くん喜ぶと思っていたが、彼女は歯医者があるそうで帰ってしまった。残念、いや、これは彼と距離を縮めるチャンスなのだ!
美術室からはいつもの油絵具のにおい、そしてカタカタと鉛筆の音だけが鳴っている。みんな文化祭のために自分が描きたい「絵」を一生懸命かいている。まだ何も決まっていない私のキャンバスだけ白紙のまま。納得がいかず黒塗りされた案の数々が自分の作品の引き出しに溜まっている。
中にいた後輩たちのうちの1人が顔を上げて私の方を向く。
「つむぎ先輩、その人誰!」
「彼氏とか!?」
作品に向かっていた全ての視線が私を向く。
「違うよ!!クラスの友達!!芸術を見せようと思ってー」
「高崎誠です。ちょっと見学させてもらいます。お願いします。」
彼は頭をぺこぺこさせる。礼儀正しくていいな…。
部活の子たちは目を輝かせている。
「デッサンしてもいいですか?」
1人の後輩がいつもより高いトーンで言う。
「ねえ、困らせちゃだめだよ!」
そう言いつつ、自分もものすごく彼をデッサンしたいという思いが止まらなかった。
「俺で良ければ全然いいで~」
彼は歯を見せながら笑った。
という訳で彼のことをデッサンすることになったのだ。
キャンパスを円形に並べてその真ん中に台を置く。
「では、高崎さん、ここの真ん中で好きなポーズをしてください!なんでもいいので!それで5分間キープしてて欲しいです!」
「はい!なんかして欲しいポーズとかありますか?」
彼は聞くと、後輩が
「恋しているポーズして欲しいです!!」
気まずい空気が流れる。
えっと、それはさすがに…。
「わかりました。やってみます!」
彼はその場に座り、どこか遠くを見つめるポーズをとった。
かっこいい。素直にそう思う。杏華のことを思いながらポーズしているのだろうか?わからないけれど、もし私がその眼差しの先にいけたらいいのにな…。
ピピッ!ピピッ!
5分を知らせるタイマーが鳴る。
「ありがとうございました!!」
デッサンを提案した後輩は満足げだ。
「いえいえ!小畑、描いたの見せてー。」
「あ、これ…」
横からのデッサン。
「すげえじゃん!めちゃかっこよく描いてくれたな、ありがとう。」
「こちらこそ、後輩が無茶してごめんね。」
「ううん。その絵、もらってもいい?」
「あ、はい。」
「やった!」
その笑う姿に…はっ、と思いついた。
高崎くんを描きたい。彼の笑う姿を文化祭の絵にしたい!私の心がそう叫んだ。
学校が終わり、高崎くんは私と一緒に美術室へやってきた。 杏華も来たら高崎くん喜ぶと思っていたが、彼女は歯医者があるそうで帰ってしまった。残念、いや、これは彼と距離を縮めるチャンスなのだ!
美術室からはいつもの油絵具のにおい、そしてカタカタと鉛筆の音だけが鳴っている。みんな文化祭のために自分が描きたい「絵」を一生懸命かいている。まだ何も決まっていない私のキャンバスだけ白紙のまま。納得がいかず黒塗りされた案の数々が自分の作品の引き出しに溜まっている。
中にいた後輩たちのうちの1人が顔を上げて私の方を向く。
「つむぎ先輩、その人誰!」
「彼氏とか!?」
作品に向かっていた全ての視線が私を向く。
「違うよ!!クラスの友達!!芸術を見せようと思ってー」
「高崎誠です。ちょっと見学させてもらいます。お願いします。」
彼は頭をぺこぺこさせる。礼儀正しくていいな…。
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「デッサンしてもいいですか?」
1人の後輩がいつもより高いトーンで言う。
「ねえ、困らせちゃだめだよ!」
そう言いつつ、自分もものすごく彼をデッサンしたいという思いが止まらなかった。
「俺で良ければ全然いいで~」
彼は歯を見せながら笑った。
という訳で彼のことをデッサンすることになったのだ。
キャンパスを円形に並べてその真ん中に台を置く。
「では、高崎さん、ここの真ん中で好きなポーズをしてください!なんでもいいので!それで5分間キープしてて欲しいです!」
「はい!なんかして欲しいポーズとかありますか?」
彼は聞くと、後輩が
「恋しているポーズして欲しいです!!」
気まずい空気が流れる。
えっと、それはさすがに…。
「わかりました。やってみます!」
彼はその場に座り、どこか遠くを見つめるポーズをとった。
かっこいい。素直にそう思う。杏華のことを思いながらポーズしているのだろうか?わからないけれど、もし私がその眼差しの先にいけたらいいのにな…。
ピピッ!ピピッ!
5分を知らせるタイマーが鳴る。
「ありがとうございました!!」
デッサンを提案した後輩は満足げだ。
「いえいえ!小畑、描いたの見せてー。」
「あ、これ…」
横からのデッサン。
「すげえじゃん!めちゃかっこよく描いてくれたな、ありがとう。」
「こちらこそ、後輩が無茶してごめんね。」
「ううん。その絵、もらってもいい?」
「あ、はい。」
「やった!」
その笑う姿に…はっ、と思いついた。
高崎くんを描きたい。彼の笑う姿を文化祭の絵にしたい!私の心がそう叫んだ。
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