一妻多夫制

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番外編

一妻多夫制(番外編34・眺める女)

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 実家の玄関の扉を開けて元気に
 「ただいま~!今、帰ったわよ~!」

 まるで部活帰りの子供のように家に上がる。

 リビングのテーブルの上で頭を抱える両親。

 そりゃ、そういう反応になってもしょうがない。
 私は10年間で4回出戻りした娘だから.....

 3人兄妹だけど兄2人は立派に自立、結婚して幸せな家庭をもっている。
 2人の兄ともに性交渉件を持って奥さん子供と一緒に生活していることから、2人がどれだけ優秀かお分かり頂けるでしょう.....

 それに比べて私ときたら、、
 両親からは初めての女の子という事で、幼少期から小学、中学、高校と女子専門学校に莫大な資金をかけて大切に育てられた私。

 結局は世間知らずのお嬢様。
 結婚する男4人にことごとく裏切られ、その度に実家に帰って来ている。


 4度目ともなると慣れたもので、何事も無かったかの様に自分の部屋に入り、前もって配送していた荷物の段ボールを開けて片付ける。

 唯一、毎回自分で持ち運ぶのは30センチ程の保菌バックに入ったものだけ。
 中身は4本のおチンチン。

 私を裏切ってきた元夫たちの分身だ....

 初めての去勢科で会った専門女医がまさかの同級生だった。

 「それどうするの?」
 切り取った男の部分を前に私は彼女に聞いた。

 「医療廃棄物の処理業者に渡すけど。、、まっ、ゴミね!」

 「ゴミなら貰ってもいい?」
 真面目に聞く私に彼女はニコリと笑い
 「秘密を守れるなら、腐敗処理して渡してあげるわ」

 30過ぎの実家暮らし、またまた独身の私。
 たいした貯蓄もなく、手元にあるのは4本のおチンチンだけ。

(腐敗処理と同時に人工血液で海綿体内部の血液を入れ替え、免疫抑制処置をしているから移植も可能なチンチンらしい.......、が。こんな邪魔くさそうなもの、私は頼まれてもつけたくないな)

 私はたまーに恋愛モードになると自分の目を覚ます為におチンチンを眺める。
 4回も失敗した男性との生活を思い出す!
 
 いい年になった自分をお姫様モードから現実に戻すには充分過ぎるインパクト!!

「おえっ、グロッ。。」

 毎回そう思うのにツイツイ見てしまう。


 そんな生活を送っていたある日、幼馴染みの翔と偶然出会った。
 (なに、えっ!?めっちゃイケメン♡)

 小学生低学年までは2人でよく遊んでいた。

 年齢が上がるにつれてお互いに同性の友達とあそぶようになり、いつしか話すこともなくなった。

 2回目の離婚で私が実家に暮らしていた頃だったかな?
 母親から、翔が離婚して地元に帰ってきたらしいときいていたが、私は特に興味もなく聞き流していた。


 
※※※※※※



 ある日の夕方、私は買い物の為に近所の大型スーパーに来ていた。
 買い物が終わり外に出てビックリ、、、、まさかの大雨。

  (えっー?今日雨予報なんてなかったのに~!)

 傘も持っていない私は店先の駐輪場の屋根の下で止みそうもない雨空を恨めしそうに見上げていた。         

 その時だった。

 [プップッ!!]

 短いクラクションが鳴った方を振り向くと翔がいた。
 
 翔が乗っている車が高級外車とかなら一気に私のシンデレラストーリーに花が咲き誇る様なものだけど、現実は......

 ボロボロの白い軽自動車の助手席側の窓を開けて翔が話しかけてきた。

 「送ろっか??」

 
 車内ではたわいもない会話。
 マトモに会話したのは20年振りくらいかもしれない。
 
 ガタゴトと軽自動車の乗り心地は悪く、エアコンの風はカビ臭かったけど、、、、、
 運転席の翔の横顔には昔の面影があり、2人の距離を縮めるのに時間はかからなかった。

 その後、、、
 私は実家から通える距離でアルバイトを始めた。
 実家でほとんどパジャマ暮らしをしていた私は少しずつ変わって行った。

 高い服やメイク道具は買えないけれど、私なりに努力していく。
 30も過ぎて何してんだか、、、、そう思うことも多々あったが、只々会えるのが楽しみ。

 そう。翔と会うのがいつしか楽しみになっていった。

 翔と毎週の様にご飯に行ったり、白いボロボロの軽自動車でドライブに行く様になった。
 (もしかしたら、私、翔の事が好きなのかも)

 そう思うものの、バツ4の私から行動する事は難しかった。
 この前なんか、2人で居酒屋で盛り上がって飲んだ帰りの公園のベンチで、暗がりの中キスだってしたのに......

 キス止まり。
 私は翔となら幸せな家庭を築けるという変な自信だけを持ち始めていた。

 でも。翔にその気がないなら私は迷惑な女に過ぎない、、、
 ある日、別れ際に私は意を決して本心を打ち明ける。
 翔からの返事に私は正直戸惑った。

 「別にそれが全てだとは思わないけど。
オレ.....チンコ無いんだっ。浮気を疑われて前の嫁さんに、、、、。」

 翔は続ける
 「チンコ無いのに玉だけあるの!?笑えるでしょ?だから、なんで言うか。中途半端な男が更に適当な事は出来ない。ゴメン.....」


 私は何も考えずに即答していた。

 「そんな事どうでもいい!でもっっ。
私、おチンチン持ってる!!私のおチンチン、翔にあげる。」
 

 ???、、、翔の表情は不思議でいっぱいそうだった。


 でも、そこからの行動は早かった。
 私は同級生の女医に連絡をした。

 ペニスの移植は実践例が少なく、安全の保証は出来ない事。
 生体拒絶反応は抑える事が出来ても下手をすれば健全な睾丸の生殖機能にも作用し取り返しのつかない事になる可能性もあると....

 あと手術費用に最低50万はかかると。

 私と翔は散々話し合った結果、移植術を受けることにした。
 
 手術は成功した!

 その後、結婚することを女医に伝えると、彼女は笑顔で

 「おめでとう!仕事で式には参加できないけど前回の手術費用はお祝い代わりに無しって事で、、、まっ、最初から受け取る気はなかったけど。お幸せにっ♡」


※※※※※※


 それから10年
 私と翔は大きな公園の、大きな木の下のベンチに並んで座っている。
 視線の先には公園の遊具ではしゃぐ子供2人。

 今は子育てに必死で翔と一緒に寝る時間もない。

 
 保存していた残り3本のおチンチンは医療廃棄物として処理してもらった。
 
 あんな物、もう必要ないから......

 
 私は翔に意地悪な質問をしてみた。
 「私の身体が不自由になって、ご飯も作れないし。エッチも出来ない様になったらどうする?」  

 翔は即答した。

 「ずーっと一緒にいる。ただただ側にいる。それだけかな。」

 私は急に恥ずかしくなり子供達のもとに駆け出した。

(そう。今の何気ない瞬間が幸せなんだと...なんとなく理解出来たから....)
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