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「アデラ!」
「あら、レナード」
アデラは駆け寄ってきた婚約者に、にこりと笑みを向ける。
「来ていたのね」
わざとそう言うアデラを、レナードは非難した。
「どうして先に会場に来たんだ。エスコートするのは、婚約者である僕の役目だろう?」
その言葉に、思わず呆れたような顔で笑ってしまう。
今まで一度も婚約者としてエスコートなどしたことがなかったのに、こんなときだけ主張するのか。
「いいのよ、レナード。私はわかっているから」
「アデラ?」
信じてくれたのではなかったのか。
そう言いたげなレナードに、アデラはあのときと同じ言葉を、ゆっくりと言い聞かせるように告げた。
「あなたがシンディーを愛していることは、知っているわ。だって、あなたがそう言っているのを聞いたもの」
「アデラ、何を」
レナードは狼狽えていた。
アデラがこの場で、そんなことを言い出すとは思わなかったのだろう。
「まさか、あんな噂を信じているのか?」
それでもアデラの言葉を、何とか否定しようとする。
でも、無駄な足掻きだ。
「私よりも、シンディーのほうが大切だと言っていたわ」
そんな彼に、あの日、扉越しに聞いた言葉を突きつける。
「私があなたのお父様に頼んで、ふたりきりで会いたいと要求したとも言っていたわね。不満そうだったと言われたけれど、そんな態度をしたことは、一度もなかったはずよ」
「……どうして、それを」
レナードの顔が、たちまち青ざめた。
その会話をアデラが聞いていたとは、思いもしなかったようだ。
いつの間にか、会場中の人達たちがこちらを見ている。
それに気付いたが、構わずにアデラは言葉を続けた。
「ハンカチを忘れてしまって、部屋に戻ろうとしたの。そのとき、あなたはシンディーに、アデラではなく君が僕の婚約者だったらどんなによかったかと言っていた。抱き合う気配もしたわ」
「ち、違うんだ、アデラ」
「私は、扉の前にいたの。盗み聞きのようになってしまったけれど、その会話を聞いたあとに、部屋に入ることなんてできなかった」
そのときのことを思い出して、胸が痛くなる。
もう彼のことなどどうでもいいのに、裏切られた痛みだけは簡単に消え去ってくれない。
「だから、わかっていると言ったの。私との婚約を解消して、シンディーを選びたかったのでしょう?」
「違う……」
レナードは、必死に言葉を探している。
多少噂は広まっても、アデラをエスコートして一緒に夜会に参加すれば、それで解決すると思っていたのだろう。
浅はかな人だ。
でもそんな人だからこそ、義理とはいえ妹となった女性に愛を囁けるのかもしれない。
「私のことは、もういいの。ふたりの愛を応援するわ。だから、私の分までしあわせになってね」
そう言ってアデラは、悲しみを堪えたような顔で笑ってみせた。
レナードは、その言葉に答えることもできずに、真っ青になって震えている。
周囲から聞こえてくるのは、婚約者がいながら、よりによって義妹に愛を囁いた彼を非難するものばかりだ。
(こうなってはもう、シンディーとの真実の愛を貫くしか方法はないでしょうね……)
これ以上噂を否定すれば、レナードはふたりの女性の心を弄んだ、不誠実な男になってしまう。醜聞を最小限に抑えるのならば、シンディーとの純愛だったと片付けるしかない。
それをレナードは、わかっているのだろうか。
「違う。そんなつもりはなかったんだ。……シンディーが、僕を頼ってくるから仕方なく……」
「お義兄さま?」
どうやら理解していなかったようだ。
アデラは思わず溜息をつく。
彼は、よりによってこの場でシンディーを否定して、切り捨てようとした。今まで青ざめた顔をして立ち尽くしていたシンディーも、レナードの言葉に抗議の声を上げる。
「そんな……。わたしのこと、遊びだったの?」
「人聞きの悪いことは言わないでほしい。ただ、ふたりで出かけただけじゃないか」
「そんな。愛しているって言ったわ。わたしのことを、愛しているって」
「これ以上、話すな」
「ひどいわ」
「……レナード。いい加減にしろ」
そのとき、アデラの目の前で揉み合うふたりを制するように、入り口から静かな声がした。
「え? あ、兄上?」
レナードのその言葉で、アデラは手紙を出した相手が帰国したことを知った。
(思っていたよりも、早かったわね)
オラディ伯爵家の嫡男、テレンス。
彼は弟と義妹を冷たい瞳で見つめている。それはとても家族に向けるようなものではなかった。
テレンスは背が高く、銀色の髪と水色の瞳をした、人目を惹く華やかな容貌の青年だ。
レナードはオラディ伯爵によく似ていて、濃い茶色の髪と緑色の瞳をしているので、こうして並んでいても兄弟には見えない。
「兄上、いつ戻られたのですか?」
テレンスを見上げるレナードの声は、少し震えていた。
家族であるが故に、彼の冷酷さをアデラ以上によく知っているのだろう。
「王城の夜会で騒ぎを起こすとは……」
テレンスは厳しい声でそう言うと、レナードとシンディーを見る。
「お、お義兄さま?」
シンディーもまた、レナードと彼を交互に見つめてそう呟いた。
レナードの父とシンディーの母が再婚したのは、彼がティガ帝国に留学している間だ。ふたりは初対面なのだろう。
シンディーは可憐な笑みを浮かべて、テレンスを見上げた。
「わたしのお義兄さまですね。はじめまして。シンディーです」
だがテレンスが彼女に向ける視線は、ますます冷たくなるばかりだ。
「父上はあの女性と離縁することになった。だから私が君の義兄になることはないよ」
彼は淡々とそう言い、それとは逆にシンディーは驚いて声を上げる。
「お母さまが? どうして、そんな……」
シンディーは縋るようにレナードを見たが、彼もまた混乱しているようで、口を開いたり閉じたりを繰り返している。
(……仕事が早いわね)
そんな様子を他人事のように眺めていたアデラは、テレンスの手際の良さに驚く。
彼はアデラからの手紙を見て即座に帰国し、義母となっていたジネットの調査を開始したのだろうか。
そうしてアデラと同じ情報を掴み、彼女が殺人の容疑で逮捕される間近であることを知って、父に離縁するように迫ったのか。
テレンスは、狼狽えた様子の弟とシンディーに、静かな声で告げた。
「だからお前たちはもう、義兄妹ではなくなる。何も心配せずに、心置きなく真実の愛とやらを貫くがいい」
「あら、レナード」
アデラは駆け寄ってきた婚約者に、にこりと笑みを向ける。
「来ていたのね」
わざとそう言うアデラを、レナードは非難した。
「どうして先に会場に来たんだ。エスコートするのは、婚約者である僕の役目だろう?」
その言葉に、思わず呆れたような顔で笑ってしまう。
今まで一度も婚約者としてエスコートなどしたことがなかったのに、こんなときだけ主張するのか。
「いいのよ、レナード。私はわかっているから」
「アデラ?」
信じてくれたのではなかったのか。
そう言いたげなレナードに、アデラはあのときと同じ言葉を、ゆっくりと言い聞かせるように告げた。
「あなたがシンディーを愛していることは、知っているわ。だって、あなたがそう言っているのを聞いたもの」
「アデラ、何を」
レナードは狼狽えていた。
アデラがこの場で、そんなことを言い出すとは思わなかったのだろう。
「まさか、あんな噂を信じているのか?」
それでもアデラの言葉を、何とか否定しようとする。
でも、無駄な足掻きだ。
「私よりも、シンディーのほうが大切だと言っていたわ」
そんな彼に、あの日、扉越しに聞いた言葉を突きつける。
「私があなたのお父様に頼んで、ふたりきりで会いたいと要求したとも言っていたわね。不満そうだったと言われたけれど、そんな態度をしたことは、一度もなかったはずよ」
「……どうして、それを」
レナードの顔が、たちまち青ざめた。
その会話をアデラが聞いていたとは、思いもしなかったようだ。
いつの間にか、会場中の人達たちがこちらを見ている。
それに気付いたが、構わずにアデラは言葉を続けた。
「ハンカチを忘れてしまって、部屋に戻ろうとしたの。そのとき、あなたはシンディーに、アデラではなく君が僕の婚約者だったらどんなによかったかと言っていた。抱き合う気配もしたわ」
「ち、違うんだ、アデラ」
「私は、扉の前にいたの。盗み聞きのようになってしまったけれど、その会話を聞いたあとに、部屋に入ることなんてできなかった」
そのときのことを思い出して、胸が痛くなる。
もう彼のことなどどうでもいいのに、裏切られた痛みだけは簡単に消え去ってくれない。
「だから、わかっていると言ったの。私との婚約を解消して、シンディーを選びたかったのでしょう?」
「違う……」
レナードは、必死に言葉を探している。
多少噂は広まっても、アデラをエスコートして一緒に夜会に参加すれば、それで解決すると思っていたのだろう。
浅はかな人だ。
でもそんな人だからこそ、義理とはいえ妹となった女性に愛を囁けるのかもしれない。
「私のことは、もういいの。ふたりの愛を応援するわ。だから、私の分までしあわせになってね」
そう言ってアデラは、悲しみを堪えたような顔で笑ってみせた。
レナードは、その言葉に答えることもできずに、真っ青になって震えている。
周囲から聞こえてくるのは、婚約者がいながら、よりによって義妹に愛を囁いた彼を非難するものばかりだ。
(こうなってはもう、シンディーとの真実の愛を貫くしか方法はないでしょうね……)
これ以上噂を否定すれば、レナードはふたりの女性の心を弄んだ、不誠実な男になってしまう。醜聞を最小限に抑えるのならば、シンディーとの純愛だったと片付けるしかない。
それをレナードは、わかっているのだろうか。
「違う。そんなつもりはなかったんだ。……シンディーが、僕を頼ってくるから仕方なく……」
「お義兄さま?」
どうやら理解していなかったようだ。
アデラは思わず溜息をつく。
彼は、よりによってこの場でシンディーを否定して、切り捨てようとした。今まで青ざめた顔をして立ち尽くしていたシンディーも、レナードの言葉に抗議の声を上げる。
「そんな……。わたしのこと、遊びだったの?」
「人聞きの悪いことは言わないでほしい。ただ、ふたりで出かけただけじゃないか」
「そんな。愛しているって言ったわ。わたしのことを、愛しているって」
「これ以上、話すな」
「ひどいわ」
「……レナード。いい加減にしろ」
そのとき、アデラの目の前で揉み合うふたりを制するように、入り口から静かな声がした。
「え? あ、兄上?」
レナードのその言葉で、アデラは手紙を出した相手が帰国したことを知った。
(思っていたよりも、早かったわね)
オラディ伯爵家の嫡男、テレンス。
彼は弟と義妹を冷たい瞳で見つめている。それはとても家族に向けるようなものではなかった。
テレンスは背が高く、銀色の髪と水色の瞳をした、人目を惹く華やかな容貌の青年だ。
レナードはオラディ伯爵によく似ていて、濃い茶色の髪と緑色の瞳をしているので、こうして並んでいても兄弟には見えない。
「兄上、いつ戻られたのですか?」
テレンスを見上げるレナードの声は、少し震えていた。
家族であるが故に、彼の冷酷さをアデラ以上によく知っているのだろう。
「王城の夜会で騒ぎを起こすとは……」
テレンスは厳しい声でそう言うと、レナードとシンディーを見る。
「お、お義兄さま?」
シンディーもまた、レナードと彼を交互に見つめてそう呟いた。
レナードの父とシンディーの母が再婚したのは、彼がティガ帝国に留学している間だ。ふたりは初対面なのだろう。
シンディーは可憐な笑みを浮かべて、テレンスを見上げた。
「わたしのお義兄さまですね。はじめまして。シンディーです」
だがテレンスが彼女に向ける視線は、ますます冷たくなるばかりだ。
「父上はあの女性と離縁することになった。だから私が君の義兄になることはないよ」
彼は淡々とそう言い、それとは逆にシンディーは驚いて声を上げる。
「お母さまが? どうして、そんな……」
シンディーは縋るようにレナードを見たが、彼もまた混乱しているようで、口を開いたり閉じたりを繰り返している。
(……仕事が早いわね)
そんな様子を他人事のように眺めていたアデラは、テレンスの手際の良さに驚く。
彼はアデラからの手紙を見て即座に帰国し、義母となっていたジネットの調査を開始したのだろうか。
そうしてアデラと同じ情報を掴み、彼女が殺人の容疑で逮捕される間近であることを知って、父に離縁するように迫ったのか。
テレンスは、狼狽えた様子の弟とシンディーに、静かな声で告げた。
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