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都市は隙間なく、紅蓮の炎に包まれていた。
それは、煌びやかな王宮までも悪魔の如く飲み込み、洒落た飾窓のある都市部から、森林部まで達しようとする程だ。
…その中で、国軍へ向って跳躍する影が、三つ。
一人は、目尻にさしている紅の様に赤い着物と日本刀を持った、まるで日本人形の様に整った顔立ちの少女。
一人は、黒いローブを着て繊細で美しい銀細工のある大きな鎌を持った、何処か影のある青い目の女性。
一人は、顔や耳に、ついには指にまでピアスを開けていて、周りに輝く七つ魂が見える妙齢の女性。
血で濡れた地面に着地すると同時に、雑多な足音の国軍に周りを囲まれる。口々に罵詈雑言を浴びせられるが、彼女らは知らない言語を聞いているかの様に、気にもしないどころか、口端に笑みを浮かべて、余裕の表情だ。
「どうせ、某には勝てまい」
女性が扱うには重過ぎるであろう大鎌をクルクル廻しながら、黒いローブの女性が笑った。
「当たり前」
まだ、幼い声で、赤い着物の少女が間合いを取る。
「…こんなやつら、僕だけでもいけるのに…」
ピアス狂の妙齢の女性がため息をつく。
そんな言葉の意味を知らない国軍が、あまり上物とは思えない刃こぼれした刀や潤滑油が垂れている機関銃を構えて、言う。
「貴様らは、聖なる都を乗っ取る反逆者と見た。今だったら、命は取らない。降伏したまえ」
「聞き飽きたよ、そのセリフは」
ピアス狂が、フィンガーと呼ばれる部位のピアスから、ゼリーを分けるかの様に青く広がる魂を取り出した。
黒いローブの女性は、大きな鎌『無黒』を勢いよく地面に突き刺し、爆風の様な風が生まれ、周りが騒めく。
赤い着物の少女が日本刀『絡繰』の刀身を抜く。
その刀身は、草食動物を襲った肉食動物の牙の様に赤くぬらぬらと光っていた。
…息を殺し、三人は
大鎌、『無黒』
霊魂を、
日本刀『絡繰』を構えた。
夏だというのに足下から、冷気が漂ってくる。
それは、大鎌の方から。螺鈿の太刀の様な銀細工が幻想的に光り、誰しもが少々見惚れてしまう。
「いいよ…彼らは某の『無黒』を見れたんだ、死んでも悔いはないだろう?」
「では…」
赤い着物の少女が、はっきり聞こえる声で宣言した。
「いざ、『九想典』」
「『丹色に染める』、二兎」
「『死を司る』、華四」
「『七つの魂を持つ』、霊七」
「「「尋常に参る」」」
それは、煌びやかな王宮までも悪魔の如く飲み込み、洒落た飾窓のある都市部から、森林部まで達しようとする程だ。
…その中で、国軍へ向って跳躍する影が、三つ。
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「どうせ、某には勝てまい」
女性が扱うには重過ぎるであろう大鎌をクルクル廻しながら、黒いローブの女性が笑った。
「当たり前」
まだ、幼い声で、赤い着物の少女が間合いを取る。
「…こんなやつら、僕だけでもいけるのに…」
ピアス狂の妙齢の女性がため息をつく。
そんな言葉の意味を知らない国軍が、あまり上物とは思えない刃こぼれした刀や潤滑油が垂れている機関銃を構えて、言う。
「貴様らは、聖なる都を乗っ取る反逆者と見た。今だったら、命は取らない。降伏したまえ」
「聞き飽きたよ、そのセリフは」
ピアス狂が、フィンガーと呼ばれる部位のピアスから、ゼリーを分けるかの様に青く広がる魂を取り出した。
黒いローブの女性は、大きな鎌『無黒』を勢いよく地面に突き刺し、爆風の様な風が生まれ、周りが騒めく。
赤い着物の少女が日本刀『絡繰』の刀身を抜く。
その刀身は、草食動物を襲った肉食動物の牙の様に赤くぬらぬらと光っていた。
…息を殺し、三人は
大鎌、『無黒』
霊魂を、
日本刀『絡繰』を構えた。
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それは、大鎌の方から。螺鈿の太刀の様な銀細工が幻想的に光り、誰しもが少々見惚れてしまう。
「いいよ…彼らは某の『無黒』を見れたんだ、死んでも悔いはないだろう?」
「では…」
赤い着物の少女が、はっきり聞こえる声で宣言した。
「いざ、『九想典』」
「『丹色に染める』、二兎」
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