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第2部

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「王様……ですか」

確かに人間のまとめ役。リーダーは必要なのかもしれない。

妖精たちは、私が。国の人たちには、また別の人が。お互いの橋渡し役がいないことは、課題の一つでもあった。どうにもこの国の人たちは、魔法が使えなかった私を知っていたし、何よりずっと年齢が低すぎた。人生経験も少ないから、彼らを説得することも私自身が橋渡し役としては、役不足だということも実感している。

「エミリアちゃんは、まだ子どもだから分からないかもしれないけど、人間社会にはリーダーが絶対に必要なんだよ」
「はい」
私は、レミーさんの言いたいことが分からず、ただ黙って彼の言葉を待った。
「君は妖精たちと仲がいいし、彼らとの仲を取り持ってくれるだけでいい」
「仲を取り持つ?」
「君は、ただ俺の言うことだけを聞いてくれればいいんだよ。簡単だろ?」
「それは……」

―それはなんという傲慢だろうか。

私に対しても妖精たちに対しても失礼だと思わないんだろうか。

私がなんて言葉を返したらいいか悩んでいると、ポッドが代わりにレミーさんに話しかけた。

「対価は?」

まさかポッドから話しかけられるとは思っていなかったのか。レミーさんは、ギクッとした顔でポッドを見た。人好きのするニコニコとした表情が、固まっていた。

「対価?」
「ああ、そうだ。俺たちをまとめて、それで俺たちに何の得がある」
「得って…人間たちの役に立てる」
「人間たちの役に立てる?……今は役に立っていないと?今だって慈善事業みたいなもんじゃないか。お前たちなんかに指示されなくても、俺たちは見返りもなく、よくやっていると思わないか?感謝されてもいいくらいだ」
「俺が指示したら、もっと効率的に動かせる」
「効率的?」

ポッドは、その言葉を聞いて、ハッと馬鹿にしたような、少し意地悪な顔をした。
不謹慎かもしれないが、私はそのポッドの顔が少し新鮮で面白かった。
私の前じゃ、絶対にそんな表情はしてくれないだろう。
私が、ジッと見つめていると、視線に気づいたのか、「こほん」と咳ばらいをして、ポッドは仕切り直すかのように真面目な顔になった。……もう少し、その意地悪な顔が見たかったのに。

「別にリーダーをしたかったら、すればいい。こっちは勝手にやる。そっちも勝手にやってくれ」
「だから、そのために君たちの力が必要なんだ」
「何の力だ?あいつらを屈服するための力か?」

レミーさんは、何も言わない。

「図星か?リーダーっていうのは、誰かの力を借りてやるものなのか?俺は、人間社会に疎いから分からないんだが、意見がまとまってから俺たちに話を持ってきてくれ」
「……エミリアちゃんはどう思う?エミリアちゃんだって今のままじゃイヤだろう?俺たちの仲間に入りたいよね?」

ポッドと話しているのは、分が悪いと考えたのか、私と話したほうが、都合がいいと思ったのか、無理やり私に話を持ってくる。私は、少し考えてからレミーさんに質問をすることにした。

「少し質問してもいいですか?」
「質問かい?もちろん!俺のことをいっぱい知ってもらうのは、とてもいいことだと思う」
「この国には、王が必要だと言われたじゃないですか。誰か王にふさわしい方がいらっしゃるのですか?」
「それはもちろん俺さ!」

後ろでポッドが「そんなとこだろうと思った」と呆れたように言ったのが聞こえたが、あえて無視をした。私も、そう思ったからだ。

「どんな王様になりたいと思っていますか?」

レミーさんは、何か勘違いしているのか、安堵したような笑顔を浮かべた。

「素晴らしい王だよ」
「具体的にどのようなことをしたいと思っているのでしょうか」
「王なのだから、周りがしてくれるさ」
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