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1巻
1-3
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「今日もデート? 最近、多いね」
「うん……」
私が王子と会うための服に着替えていると、心配そうなポッドに声をかけられた。
確かに、最近の王子は頻繁に私をデートに誘ってくる。
前は、デートなんて月に一日あれば良い方だったのに、最近は週に二日、多い時は週に五日は会っている。
「エミリア、疲れているんじゃない? 今日のデートは断れないの?」
「私が王子の誘いを断れるわけないじゃない」
「でも、君をちゃんと思ってくれるんだったら、きっと許してくれるよ。王子はエミリアの好きなようにしていいって言ったんだろう? それなら――」
「そんなことしたら、婚約破棄されちゃうかもしれないじゃない! そんなの無理だよっ!!」
ポッドは私の大声に驚いたのか、体を固くした。
私はしまったと思い、ポッドに謝罪する。
「ご、ごめん……」
「ううん。いいんだ……僕こそ、ごめん。そうだよね。エミリアが断れるわけないものね」
「うん……」
気まずい空気が流れる。
私はいたたまれなくなって、「行ってきます」と部屋を飛び出した。
◇ ◇ ◇
俺――ポッドは、またもや妖精の酒場で机に突っ伏していた。
そんな俺に声をかけてきたアランに、俺はエミリアの様子がおかしいという話をした。
「……最近のエミリアの様子が変?」
アランはそう言って、眉をひそめる。
「ああ。それも王子様と会った後が変なんだ。まるで熱に浮かされたみたいなんだ」
「恋してる相手に会ったら、熱にも浮かされるさ」
アランは、俺を諭すようにそう言った。
俺はそれを否定する。
「そういう感じでもないんだ」
「ふぅん? 例えば?」
そんな質問をしてくるアランは、俺の言葉をあまり信じていないようだ。
「熱に浮かされたような様子で帰ってくるんだが……俺の顔を見ると、突然、正気に戻ったような表情をする」
「お前の顔があまりにもかっこいいから?」
「だったらいいんだけどな! この! 俺が真剣に相談してるというのに! 茶化すな!」
「ははは。悪い」
アランは俺の説明を聞いて笑い出した。
俺は努めて平静を装い、説明を続ける。
「……俺は、あの王子様が何かエミリアにやってるんじゃないかって思う。じゃないと、あんなに……情緒が不安定になるはずがない」
「エミリアって元から情緒不安定なところがあるんじゃないか?」
「落ち着いてきていたんだ。それなのに、最近は毎晩泣きながら寝ている」
「ほぉ……」
「王子様と会うのを控えろって言ったら、それは無理だって言われたし」
俺の言葉を聞いて、アランが頷く。
「そりゃ無理だろ。身分が違いすぎる」
「だって、エミリアが何をしても許すと言ったらしいんだぞ? エミリアが疲れたら休ませるべきだし、それを許すべきじゃないのか?」
そんな話をしていると、やがてアランは用事があると言って、店を出て行った。
俺が一人でウンウン唸っていると、後ろから誰かが近づいてくる。
「どうした? 何かあったのか?」
その声を聞いて、俺は振り返る。
「ジョアン……」
声をかけてきたのはジョアンだ。噂好きの妖精で、人間観察が趣味の男。
俺が、エミリアと王子様の件を話すと、ジョアンは「なるほど」と頷き、「おもちゃにされてるんだな」と言った。
言っている意味が分からなく、俺は聞き返す。
「は? おもちゃ?」
「あの王子様。妖精の間じゃ、あんまり評判よくないぜ」
「妖精に評判がいい人間がこの国にいるのかよ」
「まあな……それにしても、あの王子様はちょっと訳あり物件だ。なぜなら、これまでの王子の婚約者は全員死んでいるんだからな」
「全員……? ってか、エミリアが初めての婚約者じゃないのか!?」
王子の婚約者が死んでるなんて初耳だ。
エミリアの心が不安定なのも、体調が良くないのも、それが関係しているのだろうか。
しかし、どうやって? 毒を飲まされでもしているのだろうか。
「お前、あんまり人間に関心がないからこういうことも知らないんだろうけど、王子様が青髭物件だなんて常識だぜ?」
「青髭? 王子に髭なんて生えてたか?」
俺がそう尋ねると、ジョアンは驚いた様子で答える。
「童話だよ! お前、童話も読まないのか! 自分の妻を何人も殺している男の話だ。そこから来ている」
「童話なんて読まねぇよ……それよか、このままだとエミリアがやばいんじゃないか?」
ジョアンが頷いて、答える。
「かといって、王子様と会うなって言っても聞かないだろうしな」
「ジョアン。他に何か知らないのか? その王子様のこと」
ジョアンは俺の質問を聞いて考え込む。
「う~ん」
「その昔の婚約者は、どういう子たちだったんだ? エミリアとの共通点はあるか?」
「エミリアとの共通点……? ……あぁ。そういえば、全員魔法が使えなかったような気がするな」
「魔法が使えない?」
王子は魔法が使えない人間を婚約者にしていた?
そうだとすると、なぜエミリアを婚約者にしたのかという謎が解ける。
だが、なぜ魔法が使えない人間を選んでいるんだ?
しかも、全員死んでいる?
「王子が婚約者を殺したのか?」
「いや。確か自殺だったはず」
「自殺?」
どんどんきな臭くなってきている。
王子の婚約者が全員自殺しているとなれば、もう少し騒がれてもいいはずなのに、そんな話を聞いたことがない。
「魔法が使えない人間の扱いは知ってるだろう? 彼らが自殺しようが、見て見ぬふりなんだろう」
ジョアンの言葉を聞いて、俺は首をひねる。
「だが、王子の婚約者だぞ? そこらへんの人間じゃない」
「ああ……思い出した。確か王子は魅了魔法の加護持ちだったはず。その力を使えば隠蔽もどうとでもなるな」
「魅了魔法?」
「加護というより、最早呪いみたいなエグイやつだったはずだ。見た人間の心を、ある程度操れるんじゃなかったっけな」
そんな加護が存在しているのか……
でも、以前、俺が王子様を見た時は、何も起きなかった。
「俺が王子様を見てもなんともないが?」
「そりゃ俺たちには効かないさ。でも、人間には猛毒みたいに魔法が回るだろうな。魔法が使えない女の子なら、なおさらだ」
「でも、エミリアは普段、そこまで王子様に夢中じゃないぞ。どうしてだ?」
「お前、王子様がかけた魅了を無意識に消してるんじゃないか? エミリアにかけられた呪いをよく消しているんだろ? 王子様のやつも消えてるんだろ」
「そうだったのか」
呪いとは、魔法が使えれば、相手にはね返せるものである。
でも、魔法が使えない場合は、かけた呪いが術者に返ることはない。
それゆえに、エミリアはよく呪いをかけられていた。
遊び半分のものもあるし、冗談にもならないほど強いものもある。
俺は、それを見つけ次第消していたのだが……
「じゃあ、今度はエミリアが」
ジョアンの言葉で、俺は頭が真っ白になる。
どうしてエミリアばかりがこんな目に遭わなくてはいけないのだろうか。
俺がいなければ、エミリアはとっくに殺されていたのかもしれない。
とにかく、その王子をどうにかしないといけないのだが、どうすればいいのか。
エミリアは、王子に依存しているところがある。王子の婚約者という立場に守られているところもあるからだろう。
しかし、その元凶にエミリアが殺されてしまっては意味がないではないか。
俺が酒場から出ると、外はずいぶんと暗かった。
「エミリアの方が先に帰ってるかもな」
家にたどりつくとエミリアの自室に彼女の姿はなかった。
「こんなに暗いのに外にいるのか?」
家族に虐められて外に出されているのかと思って外を捜すが、どこにもいない。
その時、家の中からエミリアの姉――アイラの声が聞こえてきた。
「ねぇ、お父様。アレがまだ帰っていないようだけど、いいの?」
アレというのはエミリアのことだ。
この家族は、徹底的にエミリアのことを物扱いしている。
「ああ。王子からエミリアの帰りは遅くなると聞いている。もしかしたら、帰ってこないかもと」
エミリアの父親――ルドルフがそう答えると、アイラは驚きの声を上げる。
「え!? それって……」
「ああ。心配しなくていい。王子は、アレを森の奥深くに置いてくると言っていたからな」
「なぁんだ。てっきり私は王子のところに泊まるのかと思ってたわ」
「そんなわけないだろう。しかし、王子に任せて正解だったな。こちらの手を汚さずとも、アレの処分が出来るなんてな」
……は?
今、なんて言った? エミリアを森の奥深くに置いてくる? あの、魔物も出る森にか? 何も出来ない女の子を置いてきた? なぜ?
俺は探索魔法を使い、エミリアのいる場所へと急いだ。
森の奥深くにたどりつくと、幸いなことにそこには魔物の姿も気配もない。
エミリアは、すっかり暗くなった森の中、ぼんやりとそこに立っていた。
「エミリア!」
「……」
反応がない。
エミリアの体にうっすらとまとわりついているのは、確かに俺がいつも消している呪いだった。
これが魅了魔法なのか。
エミリアのように、魔法に抵抗のない人間には、とてつもない効果を発揮するだろう。
対象者の言うことを何でも聞き、逆らわない状態になる。
この国のトップに立つ人間が、使っていいような魔法ではない。
「エミリア」
「……ポッド?」
俺の呼びかけにようやく応えたエミリアは、しばらくぼんやりとしていたが、やがて夢から覚めたように徐々に顔色が変わっていく。
そして、彼女は周りを見渡し、「ここは?」と尋ねた。その声は震えていた。
知らない場所に立っていた上に、俺に声をかけられるまで気づかなかったのだから、怯えるのも当然だ。
俺はエミリアの質問に答える。
「ここは街はずれの森だ。早く帰ろう。魔物が現れない保証はない」
「だって……何で? 私、王子と、デートに行っていたの。街を散歩して、それで……それで? どうしたんだっけ……」
「エミリア。落ち着いて」
「私……私、最近こんなことばっかり。いつも王子と会う時、記憶がないの。何も覚えていないの。王子の言葉も声も顔も、ぼんやりしていて、それで時間が経ったら、いつのまにか家に帰ってる。……こんなのおかしいよ……それともおかしいのは、私の方なのかな」
エミリアは混乱しているようだが、魅了魔法を使われていたのだから無理もない。
「エミリアは、おかしくなんかない」
「だって、こんなの変じゃない。どうして記憶がないの? どうして私、こんな場所にいるの?」
「エミリア」
「やっぱり王子が私に何かしているの……? でも、どうして?」
「エミリアは、王子様に他に婚約者がいたことは知ってる?」
俺は、王子様の婚約者の話をエミリアにした。巻き込まれた以上、知る権利がある。
「……え? し、知らないわ……王子には私の他に婚約者がいたの?」
「うん。今はいないけどね」
「いない? 別れたってこと?」
「違う。全員……」
俺は、その先の言葉を言えずに黙った。
それは、エミリアがこの森にいる理由でもある。
「今ここに私がいることと関係がある?」
「……うん」
「そう」
エミリアは黙ってうつむいてしまった。
俺はそんなエミリアに優しく声をかける。
「帰ろう。エミリア」
「帰る? ……帰ってどうするの?」
「エミリア……」
「ああ……いえ、ごめんなさい……そうよね。帰らないと。他に行く場所もないし……」
俺は、エミリアを魔法で彼女の自室まで運んだ。その間、エミリアはずっとぼんやりしていた。
王子の魔法は解いたけれど、エミリアの心にずいぶんと侵食しているのかもしれない。特に、人の心を惑わす魔法は副作用がある。
最近のエミリアの様子がおかしかったのも、王子に何度も心を魔法で操られていたせいなのだろう。
「おやすみ。エミリア」
「……おやすみなさい。ポッド」
◇ ◇ ◇
私――エミリアは夢を見ていた。
王子とのデートは、いつも霧がかかったようにぼんやりとしか思い出せなかったのに、夢の中ではしっかりと思い出すことが出来た。
――思い返せば、今日の王子の様子は、最初から少しおかしかった。
「待たせたね。エミリア」
いつもは、王子の顔を見たら、王子のことしか考えられなくて、頭がふわふわして、楽しい気持ちになる。なのに、今日はずっと冷や水を浴びせられたような気持ちだった。
落ち着かなくて、少し王子が怖い。
「さぁ、行こうか。今日は遠出をしようかと思ってね」
王子はそう言って、私を、街中では目立つ豪華な馬車へ案内した。
「あ、えっと今日は、美術館に行く予定ではなかったのですか?」
「気分が変わってね。エミリアは街の外に出たことがないと聞いた。街の外の森に遊びに行くのも面白いと思ってね。行くだろう? エミリア」
「は、はい……」
元から私に拒否権はないので、素直に馬車に乗る。
王子が合図をすると、すぐに馬車は走り出した。
車内は無音だった。馬の蹄の音と、車輪の音だけが響いている。
いつもであれば王子の方から私に話しかけてくるのに、今日の王子は口を開かずに外の景色を眺めている。
そこで、私から話しかけたのだ。
「あの。最近よく私のことを誘ってくださるのは、どうしてでしょうか?」
「ん? エミリアに会いたいからだけど? エミリアは、私と一緒にいるのは嫌かい?」
私は慌てて否定する。
「そ、そんなことはありません! ただ、どうしてか気になってしまって……すみません」
「いいんだ。お前をずっと放っていたのに、突然どうしてこんなにも会う回数を増やしたのかと考えてしまうのも、仕方ないからね」
「ありがとうございます」
「それより、今日はずっと私といるのに、いつもと様子が違うね?」
王子は笑顔でそんな質問をしてきた。
私は、予想外のことを言われ、驚いて固まってしまう。
「え?」
「いつもより口数が多い」
「そ……うかもしれません」
そういえば、いつも王子と会う時は頭がぼんやりとするのに、今日はそれがない。王子と会うと夢心地で、ろくに話すことも出来ず、王子の言葉に相槌を打っていただけだった。
だけど、今日はやけに頭がすっきりしている。
……そういえば、熱に浮かされたような状態にもならない。
「エミリアは、私のことが好きか」
「え? ……はい……お慕いしております」
「私のためならどんなこともしてくれるか?」
「は、はい……」
王子の顔は笑っているのに、とても怖い。
気まずいと思っているのは私だけなのだろうか。
そわそわと落ち着かなく、視線を外に向けると、街からずいぶんと離れたようで見えるのは木ばかり。あまり街から離れると、魔物が出ると言われている森にまで行ってしまう。
しかし、さすがに王子も何か考えがあるのだろう。
私が行き先に関して口を出せるわけもない。
「私もお前に聞きたいことがある」
「はい。私に答えられることなら、何でも」
「私の魔法を解いているのは誰だ」
「……え?」
「答えてくれるのだろう?」
王子の魔法を解く? どういうことだろうか? そもそも魔法とは何のことだろうか?
「な、何のことだか、私には……」
「とぼけるな」
冷たい王子の言葉を受けて、私は王子の顔が見られなくなってしまった。
「ほ、本当です。ま、魔法なんて分かりません……わた、私は魔法には疎いですから。それに解くって一体どういうことでしょうか」
「私には言えない人物か」
「も、申し訳ございません。私にはお話の意味が分かりません……」
本当に……私は何も知らないのだ。
「まさかお前を手助けするような人間が現れるなんてな。まぁ、潮時か。ちょうどいい。やはり今日にして正解だったな」
「王子……?」
「ここで降りろ」
馬車が止まった場所は、深い森の中。
こんなところで降ろされる理由が分からなかった。
街はずいぶんと遠くにあるし、道も分からない。歩いて帰れるとして、家に着くのはどれくらいになるのだろうか。
馬車の車輪の跡を追っていけば、なんとか帰れるかもしれないが。しかし、なぜ。
「どうしてですか。王子……どうして……」
そう言って、王子の顔を見ていると、またあの多幸感に包まれた。
何もかもどうでもよくなって、どうしてここに立っているのかも分からなくなっていく。
「幸せな気持ちで死ねるのだ。本望と思え」
「……はい」
そして、私は森に置き去りにされたのだ。
あのまま、ポッドが来てくれなかったら、きっと私は魔物に食べられて死んでいただろう。
それこそ、王子の言った通り、幸せな気持ちで。
◇ ◇ ◇
夢から覚めると、涙が溢れていた。
いつも通りの朝のはずだった。昨日の出来事がなければ……
あぁ。これが絶望なのか。今日から、この胸にあいた空虚を抱けというのか。
何もない。何もなくなってしまった。
…………ポッド。
私は、どうして生まれてきてしまったのかしら。
どうして、ここに存在しているのかしら。
こんなことなら、私は……私なんか、生まれてこなければ良かったのよ。
こんなに苦しくなるくらいなら、もっと昔に死んでいれば良かった。
ポッド。私の願い事が決まったわ。私を殺して。あなたの手で、私は殺されたい。
「おはよう。エミリア」
いつもならポッドの笑顔を見て安心するはずなのに、今は虚しいだけだった。
「エミリア? 顔色が悪いね。どうしたの? もしかして、体調を崩してしまったのかい? 早くそこの椅子に腰かけて。僕が……」
「ポッド。私の願いが決まったわ」
私の言葉を聞いて、ポッドは嬉しそうな顔をする。
「え! 本当!? どんな願い? 僕に叶えられる?」
「その前に一つ教えてほしいのだけど。ポッド、妖精が人間を殺すのって重罪になるの?」
「……ずいぶんと物騒な質問だね。いいや、妖精に法律という概念はないよ。誰かを罰するなんてことは、妖精の間にはない」
「そう。良かった」
その答えを聞いて、私は安心した。
私を殺しても、ポッドは罪に問われないのだから。
「誰かを殺してほしいの?」
「ええ。私を殺してほしいのよ」
「…………え?」
「私を殺してほしいって言ったの」
「今、なんて言った? 殺して……? それが……願い?」
「そう」
ポッドは、急な私の言葉にずいぶんと困惑しているようだった。
うろうろと視線がさまよっている。
普段、テキパキしている彼にしては珍しい。
「どうしたの。どうして、急にそんなことを…………」
ポッドが、呆然と私を見つめた。
そのなんとも間が抜けた顔がなんだかおかしくて、私は久しぶりに笑った。
「あはは」
「エミリア?」
「ふふ……あはは……」
ポッドが私を見つめる瞳に確かな怯えを見つけて、笑いが止まらなくなった。
ああ。なんておかしい。
…………ああ。なんて、苦しいの。
目から涙が溢れて、止まらない。
感情が嵐のように体中を駆け巡っていた。
自分だけの力では止められない。自然災害のようなものなんだなと、頭の片隅で考える。
感情なんて、なければ良かったのに。ただの能無しであれば良かった。
何も考えず、何も感じない、そんなものになりたかったのに。私は、結局なれなかった。
「うん……」
私が王子と会うための服に着替えていると、心配そうなポッドに声をかけられた。
確かに、最近の王子は頻繁に私をデートに誘ってくる。
前は、デートなんて月に一日あれば良い方だったのに、最近は週に二日、多い時は週に五日は会っている。
「エミリア、疲れているんじゃない? 今日のデートは断れないの?」
「私が王子の誘いを断れるわけないじゃない」
「でも、君をちゃんと思ってくれるんだったら、きっと許してくれるよ。王子はエミリアの好きなようにしていいって言ったんだろう? それなら――」
「そんなことしたら、婚約破棄されちゃうかもしれないじゃない! そんなの無理だよっ!!」
ポッドは私の大声に驚いたのか、体を固くした。
私はしまったと思い、ポッドに謝罪する。
「ご、ごめん……」
「ううん。いいんだ……僕こそ、ごめん。そうだよね。エミリアが断れるわけないものね」
「うん……」
気まずい空気が流れる。
私はいたたまれなくなって、「行ってきます」と部屋を飛び出した。
◇ ◇ ◇
俺――ポッドは、またもや妖精の酒場で机に突っ伏していた。
そんな俺に声をかけてきたアランに、俺はエミリアの様子がおかしいという話をした。
「……最近のエミリアの様子が変?」
アランはそう言って、眉をひそめる。
「ああ。それも王子様と会った後が変なんだ。まるで熱に浮かされたみたいなんだ」
「恋してる相手に会ったら、熱にも浮かされるさ」
アランは、俺を諭すようにそう言った。
俺はそれを否定する。
「そういう感じでもないんだ」
「ふぅん? 例えば?」
そんな質問をしてくるアランは、俺の言葉をあまり信じていないようだ。
「熱に浮かされたような様子で帰ってくるんだが……俺の顔を見ると、突然、正気に戻ったような表情をする」
「お前の顔があまりにもかっこいいから?」
「だったらいいんだけどな! この! 俺が真剣に相談してるというのに! 茶化すな!」
「ははは。悪い」
アランは俺の説明を聞いて笑い出した。
俺は努めて平静を装い、説明を続ける。
「……俺は、あの王子様が何かエミリアにやってるんじゃないかって思う。じゃないと、あんなに……情緒が不安定になるはずがない」
「エミリアって元から情緒不安定なところがあるんじゃないか?」
「落ち着いてきていたんだ。それなのに、最近は毎晩泣きながら寝ている」
「ほぉ……」
「王子様と会うのを控えろって言ったら、それは無理だって言われたし」
俺の言葉を聞いて、アランが頷く。
「そりゃ無理だろ。身分が違いすぎる」
「だって、エミリアが何をしても許すと言ったらしいんだぞ? エミリアが疲れたら休ませるべきだし、それを許すべきじゃないのか?」
そんな話をしていると、やがてアランは用事があると言って、店を出て行った。
俺が一人でウンウン唸っていると、後ろから誰かが近づいてくる。
「どうした? 何かあったのか?」
その声を聞いて、俺は振り返る。
「ジョアン……」
声をかけてきたのはジョアンだ。噂好きの妖精で、人間観察が趣味の男。
俺が、エミリアと王子様の件を話すと、ジョアンは「なるほど」と頷き、「おもちゃにされてるんだな」と言った。
言っている意味が分からなく、俺は聞き返す。
「は? おもちゃ?」
「あの王子様。妖精の間じゃ、あんまり評判よくないぜ」
「妖精に評判がいい人間がこの国にいるのかよ」
「まあな……それにしても、あの王子様はちょっと訳あり物件だ。なぜなら、これまでの王子の婚約者は全員死んでいるんだからな」
「全員……? ってか、エミリアが初めての婚約者じゃないのか!?」
王子の婚約者が死んでるなんて初耳だ。
エミリアの心が不安定なのも、体調が良くないのも、それが関係しているのだろうか。
しかし、どうやって? 毒を飲まされでもしているのだろうか。
「お前、あんまり人間に関心がないからこういうことも知らないんだろうけど、王子様が青髭物件だなんて常識だぜ?」
「青髭? 王子に髭なんて生えてたか?」
俺がそう尋ねると、ジョアンは驚いた様子で答える。
「童話だよ! お前、童話も読まないのか! 自分の妻を何人も殺している男の話だ。そこから来ている」
「童話なんて読まねぇよ……それよか、このままだとエミリアがやばいんじゃないか?」
ジョアンが頷いて、答える。
「かといって、王子様と会うなって言っても聞かないだろうしな」
「ジョアン。他に何か知らないのか? その王子様のこと」
ジョアンは俺の質問を聞いて考え込む。
「う~ん」
「その昔の婚約者は、どういう子たちだったんだ? エミリアとの共通点はあるか?」
「エミリアとの共通点……? ……あぁ。そういえば、全員魔法が使えなかったような気がするな」
「魔法が使えない?」
王子は魔法が使えない人間を婚約者にしていた?
そうだとすると、なぜエミリアを婚約者にしたのかという謎が解ける。
だが、なぜ魔法が使えない人間を選んでいるんだ?
しかも、全員死んでいる?
「王子が婚約者を殺したのか?」
「いや。確か自殺だったはず」
「自殺?」
どんどんきな臭くなってきている。
王子の婚約者が全員自殺しているとなれば、もう少し騒がれてもいいはずなのに、そんな話を聞いたことがない。
「魔法が使えない人間の扱いは知ってるだろう? 彼らが自殺しようが、見て見ぬふりなんだろう」
ジョアンの言葉を聞いて、俺は首をひねる。
「だが、王子の婚約者だぞ? そこらへんの人間じゃない」
「ああ……思い出した。確か王子は魅了魔法の加護持ちだったはず。その力を使えば隠蔽もどうとでもなるな」
「魅了魔法?」
「加護というより、最早呪いみたいなエグイやつだったはずだ。見た人間の心を、ある程度操れるんじゃなかったっけな」
そんな加護が存在しているのか……
でも、以前、俺が王子様を見た時は、何も起きなかった。
「俺が王子様を見てもなんともないが?」
「そりゃ俺たちには効かないさ。でも、人間には猛毒みたいに魔法が回るだろうな。魔法が使えない女の子なら、なおさらだ」
「でも、エミリアは普段、そこまで王子様に夢中じゃないぞ。どうしてだ?」
「お前、王子様がかけた魅了を無意識に消してるんじゃないか? エミリアにかけられた呪いをよく消しているんだろ? 王子様のやつも消えてるんだろ」
「そうだったのか」
呪いとは、魔法が使えれば、相手にはね返せるものである。
でも、魔法が使えない場合は、かけた呪いが術者に返ることはない。
それゆえに、エミリアはよく呪いをかけられていた。
遊び半分のものもあるし、冗談にもならないほど強いものもある。
俺は、それを見つけ次第消していたのだが……
「じゃあ、今度はエミリアが」
ジョアンの言葉で、俺は頭が真っ白になる。
どうしてエミリアばかりがこんな目に遭わなくてはいけないのだろうか。
俺がいなければ、エミリアはとっくに殺されていたのかもしれない。
とにかく、その王子をどうにかしないといけないのだが、どうすればいいのか。
エミリアは、王子に依存しているところがある。王子の婚約者という立場に守られているところもあるからだろう。
しかし、その元凶にエミリアが殺されてしまっては意味がないではないか。
俺が酒場から出ると、外はずいぶんと暗かった。
「エミリアの方が先に帰ってるかもな」
家にたどりつくとエミリアの自室に彼女の姿はなかった。
「こんなに暗いのに外にいるのか?」
家族に虐められて外に出されているのかと思って外を捜すが、どこにもいない。
その時、家の中からエミリアの姉――アイラの声が聞こえてきた。
「ねぇ、お父様。アレがまだ帰っていないようだけど、いいの?」
アレというのはエミリアのことだ。
この家族は、徹底的にエミリアのことを物扱いしている。
「ああ。王子からエミリアの帰りは遅くなると聞いている。もしかしたら、帰ってこないかもと」
エミリアの父親――ルドルフがそう答えると、アイラは驚きの声を上げる。
「え!? それって……」
「ああ。心配しなくていい。王子は、アレを森の奥深くに置いてくると言っていたからな」
「なぁんだ。てっきり私は王子のところに泊まるのかと思ってたわ」
「そんなわけないだろう。しかし、王子に任せて正解だったな。こちらの手を汚さずとも、アレの処分が出来るなんてな」
……は?
今、なんて言った? エミリアを森の奥深くに置いてくる? あの、魔物も出る森にか? 何も出来ない女の子を置いてきた? なぜ?
俺は探索魔法を使い、エミリアのいる場所へと急いだ。
森の奥深くにたどりつくと、幸いなことにそこには魔物の姿も気配もない。
エミリアは、すっかり暗くなった森の中、ぼんやりとそこに立っていた。
「エミリア!」
「……」
反応がない。
エミリアの体にうっすらとまとわりついているのは、確かに俺がいつも消している呪いだった。
これが魅了魔法なのか。
エミリアのように、魔法に抵抗のない人間には、とてつもない効果を発揮するだろう。
対象者の言うことを何でも聞き、逆らわない状態になる。
この国のトップに立つ人間が、使っていいような魔法ではない。
「エミリア」
「……ポッド?」
俺の呼びかけにようやく応えたエミリアは、しばらくぼんやりとしていたが、やがて夢から覚めたように徐々に顔色が変わっていく。
そして、彼女は周りを見渡し、「ここは?」と尋ねた。その声は震えていた。
知らない場所に立っていた上に、俺に声をかけられるまで気づかなかったのだから、怯えるのも当然だ。
俺はエミリアの質問に答える。
「ここは街はずれの森だ。早く帰ろう。魔物が現れない保証はない」
「だって……何で? 私、王子と、デートに行っていたの。街を散歩して、それで……それで? どうしたんだっけ……」
「エミリア。落ち着いて」
「私……私、最近こんなことばっかり。いつも王子と会う時、記憶がないの。何も覚えていないの。王子の言葉も声も顔も、ぼんやりしていて、それで時間が経ったら、いつのまにか家に帰ってる。……こんなのおかしいよ……それともおかしいのは、私の方なのかな」
エミリアは混乱しているようだが、魅了魔法を使われていたのだから無理もない。
「エミリアは、おかしくなんかない」
「だって、こんなの変じゃない。どうして記憶がないの? どうして私、こんな場所にいるの?」
「エミリア」
「やっぱり王子が私に何かしているの……? でも、どうして?」
「エミリアは、王子様に他に婚約者がいたことは知ってる?」
俺は、王子様の婚約者の話をエミリアにした。巻き込まれた以上、知る権利がある。
「……え? し、知らないわ……王子には私の他に婚約者がいたの?」
「うん。今はいないけどね」
「いない? 別れたってこと?」
「違う。全員……」
俺は、その先の言葉を言えずに黙った。
それは、エミリアがこの森にいる理由でもある。
「今ここに私がいることと関係がある?」
「……うん」
「そう」
エミリアは黙ってうつむいてしまった。
俺はそんなエミリアに優しく声をかける。
「帰ろう。エミリア」
「帰る? ……帰ってどうするの?」
「エミリア……」
「ああ……いえ、ごめんなさい……そうよね。帰らないと。他に行く場所もないし……」
俺は、エミリアを魔法で彼女の自室まで運んだ。その間、エミリアはずっとぼんやりしていた。
王子の魔法は解いたけれど、エミリアの心にずいぶんと侵食しているのかもしれない。特に、人の心を惑わす魔法は副作用がある。
最近のエミリアの様子がおかしかったのも、王子に何度も心を魔法で操られていたせいなのだろう。
「おやすみ。エミリア」
「……おやすみなさい。ポッド」
◇ ◇ ◇
私――エミリアは夢を見ていた。
王子とのデートは、いつも霧がかかったようにぼんやりとしか思い出せなかったのに、夢の中ではしっかりと思い出すことが出来た。
――思い返せば、今日の王子の様子は、最初から少しおかしかった。
「待たせたね。エミリア」
いつもは、王子の顔を見たら、王子のことしか考えられなくて、頭がふわふわして、楽しい気持ちになる。なのに、今日はずっと冷や水を浴びせられたような気持ちだった。
落ち着かなくて、少し王子が怖い。
「さぁ、行こうか。今日は遠出をしようかと思ってね」
王子はそう言って、私を、街中では目立つ豪華な馬車へ案内した。
「あ、えっと今日は、美術館に行く予定ではなかったのですか?」
「気分が変わってね。エミリアは街の外に出たことがないと聞いた。街の外の森に遊びに行くのも面白いと思ってね。行くだろう? エミリア」
「は、はい……」
元から私に拒否権はないので、素直に馬車に乗る。
王子が合図をすると、すぐに馬車は走り出した。
車内は無音だった。馬の蹄の音と、車輪の音だけが響いている。
いつもであれば王子の方から私に話しかけてくるのに、今日の王子は口を開かずに外の景色を眺めている。
そこで、私から話しかけたのだ。
「あの。最近よく私のことを誘ってくださるのは、どうしてでしょうか?」
「ん? エミリアに会いたいからだけど? エミリアは、私と一緒にいるのは嫌かい?」
私は慌てて否定する。
「そ、そんなことはありません! ただ、どうしてか気になってしまって……すみません」
「いいんだ。お前をずっと放っていたのに、突然どうしてこんなにも会う回数を増やしたのかと考えてしまうのも、仕方ないからね」
「ありがとうございます」
「それより、今日はずっと私といるのに、いつもと様子が違うね?」
王子は笑顔でそんな質問をしてきた。
私は、予想外のことを言われ、驚いて固まってしまう。
「え?」
「いつもより口数が多い」
「そ……うかもしれません」
そういえば、いつも王子と会う時は頭がぼんやりとするのに、今日はそれがない。王子と会うと夢心地で、ろくに話すことも出来ず、王子の言葉に相槌を打っていただけだった。
だけど、今日はやけに頭がすっきりしている。
……そういえば、熱に浮かされたような状態にもならない。
「エミリアは、私のことが好きか」
「え? ……はい……お慕いしております」
「私のためならどんなこともしてくれるか?」
「は、はい……」
王子の顔は笑っているのに、とても怖い。
気まずいと思っているのは私だけなのだろうか。
そわそわと落ち着かなく、視線を外に向けると、街からずいぶんと離れたようで見えるのは木ばかり。あまり街から離れると、魔物が出ると言われている森にまで行ってしまう。
しかし、さすがに王子も何か考えがあるのだろう。
私が行き先に関して口を出せるわけもない。
「私もお前に聞きたいことがある」
「はい。私に答えられることなら、何でも」
「私の魔法を解いているのは誰だ」
「……え?」
「答えてくれるのだろう?」
王子の魔法を解く? どういうことだろうか? そもそも魔法とは何のことだろうか?
「な、何のことだか、私には……」
「とぼけるな」
冷たい王子の言葉を受けて、私は王子の顔が見られなくなってしまった。
「ほ、本当です。ま、魔法なんて分かりません……わた、私は魔法には疎いですから。それに解くって一体どういうことでしょうか」
「私には言えない人物か」
「も、申し訳ございません。私にはお話の意味が分かりません……」
本当に……私は何も知らないのだ。
「まさかお前を手助けするような人間が現れるなんてな。まぁ、潮時か。ちょうどいい。やはり今日にして正解だったな」
「王子……?」
「ここで降りろ」
馬車が止まった場所は、深い森の中。
こんなところで降ろされる理由が分からなかった。
街はずいぶんと遠くにあるし、道も分からない。歩いて帰れるとして、家に着くのはどれくらいになるのだろうか。
馬車の車輪の跡を追っていけば、なんとか帰れるかもしれないが。しかし、なぜ。
「どうしてですか。王子……どうして……」
そう言って、王子の顔を見ていると、またあの多幸感に包まれた。
何もかもどうでもよくなって、どうしてここに立っているのかも分からなくなっていく。
「幸せな気持ちで死ねるのだ。本望と思え」
「……はい」
そして、私は森に置き去りにされたのだ。
あのまま、ポッドが来てくれなかったら、きっと私は魔物に食べられて死んでいただろう。
それこそ、王子の言った通り、幸せな気持ちで。
◇ ◇ ◇
夢から覚めると、涙が溢れていた。
いつも通りの朝のはずだった。昨日の出来事がなければ……
あぁ。これが絶望なのか。今日から、この胸にあいた空虚を抱けというのか。
何もない。何もなくなってしまった。
…………ポッド。
私は、どうして生まれてきてしまったのかしら。
どうして、ここに存在しているのかしら。
こんなことなら、私は……私なんか、生まれてこなければ良かったのよ。
こんなに苦しくなるくらいなら、もっと昔に死んでいれば良かった。
ポッド。私の願い事が決まったわ。私を殺して。あなたの手で、私は殺されたい。
「おはよう。エミリア」
いつもならポッドの笑顔を見て安心するはずなのに、今は虚しいだけだった。
「エミリア? 顔色が悪いね。どうしたの? もしかして、体調を崩してしまったのかい? 早くそこの椅子に腰かけて。僕が……」
「ポッド。私の願いが決まったわ」
私の言葉を聞いて、ポッドは嬉しそうな顔をする。
「え! 本当!? どんな願い? 僕に叶えられる?」
「その前に一つ教えてほしいのだけど。ポッド、妖精が人間を殺すのって重罪になるの?」
「……ずいぶんと物騒な質問だね。いいや、妖精に法律という概念はないよ。誰かを罰するなんてことは、妖精の間にはない」
「そう。良かった」
その答えを聞いて、私は安心した。
私を殺しても、ポッドは罪に問われないのだから。
「誰かを殺してほしいの?」
「ええ。私を殺してほしいのよ」
「…………え?」
「私を殺してほしいって言ったの」
「今、なんて言った? 殺して……? それが……願い?」
「そう」
ポッドは、急な私の言葉にずいぶんと困惑しているようだった。
うろうろと視線がさまよっている。
普段、テキパキしている彼にしては珍しい。
「どうしたの。どうして、急にそんなことを…………」
ポッドが、呆然と私を見つめた。
そのなんとも間が抜けた顔がなんだかおかしくて、私は久しぶりに笑った。
「あはは」
「エミリア?」
「ふふ……あはは……」
ポッドが私を見つめる瞳に確かな怯えを見つけて、笑いが止まらなくなった。
ああ。なんておかしい。
…………ああ。なんて、苦しいの。
目から涙が溢れて、止まらない。
感情が嵐のように体中を駆け巡っていた。
自分だけの力では止められない。自然災害のようなものなんだなと、頭の片隅で考える。
感情なんて、なければ良かったのに。ただの能無しであれば良かった。
何も考えず、何も感じない、そんなものになりたかったのに。私は、結局なれなかった。
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