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第2部

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修繕作業を続けていると、遠くのほうから男性が一人近づいてきていた。
最近は、めったにないお客さんに、私もポッドも少しだけ警戒する。前は、文句を言いに来る人がいたけど、あの人もそうなんだろうか。

文句は、たいていどうでもいいことで、もう少し楽しそうに作業できないのか、とか、今日の昼食はまずかった。夕食は肉にしてくれ、とかその程度のものなのだけど、一々作業の手を止めないと怒られるので、気持ちは滅入るし、時間ももったいないと感じるので、城に引きこもってくれるので、こちらもラクだったのだけど。

「エミリアちゃんだっけ?俺も手伝うよ」
「あ、ありがとうございます」

見知らぬ男性に、ポッドは不審者でも見るような目つきをしているが、人手はたくさんあったほうがありがたい。
まさか、手伝いに来てくれる人がいるなんて。
頑張っていたかいがあったな…。
なんて、感動していたのもつかの間。

「それでは、こちらの石をどかしてください」
「……」

男性は、私の言葉に返事をするわけでもなく、ニッコリと笑った。
私は、わけが分からずに首を傾げた。
何かおかしいことを言っただろうか。

「実は俺、貴族なんだ」
「そうでしたか。元貴族ですのに、お手伝いありがとうございます」

私の元貴族という言葉に、むっとしたのか男性は顔をしかめた。
この国は、もう崩れて、王もいないのに、貴族も立場もないだろうに。

「俺の名前は、レミーというんだ。アルバンス家って聞いたことないかな。この国でも有数の貴族の名前なんだけど」
「い、いえ…。その、存じ上げません。すみません。私、名前には少し疎くて」
「そうか。しかたないな。君は、出来損ないだったものな。常識を知らないのも無理はないか」
「……」

何も言えずに黙り込んでしまった私に、レミーさんは、聞いてもいないことを、ずっと喋っていた。手伝いに来たというのは口だけで、彼は何も手伝ってはくれなかった。
喋り続ける彼を無視して、私は作業を続けているにも関わらず、レミーさんは、ずっと喋っている。

手伝ってくれる気なんて最初からなかったのだ。
レミーさんは、ただ作業をする私を見ながら、喋るだけだった。
お城に居場所がないのか知らないけれど、正直なところ邪魔というのが、一番の本音だった。

これなら、ポッドと喋りながら作業をしていた方が、よほど楽しかった。
しかし、これからもこの国で暮らすとなれば、この人とも長い付き合いになるのかもしれない。そう思えば、無下にも出来ない。
ポッドは、さきほどから、かなりイラついているのが目に見えて分かる。

「ところで、エミリアちゃんは、この国の王様は誰か決めているのかな?」
「王様…ですか」
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