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第2部

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国が崩壊して、少し時間が経ったころ。
私とポッド、そしてこの国に元々住んでいた妖精たちで、壊れてしまった建物や、人々の亡骸の埋葬、それから怪我をした人たちの手当をしていた。
この国の人たちは、あの混乱の中でも生き残っている人たちが、ある程度いた。

「あの、怪我をしていますね。治しますよ」
「お前、魔力なしの」
「はい。エミリアです」
「復讐か?この国に対して。何もしてこなかった俺たちに対しての」
「……いえ。そんなことできません」

私は、聖女様や、ほかの妖精たちに教わった回復魔法を見様見真似でかけていく。
傷が癒えていっているからか、私が治療している男の人は、どんどん興奮した様子で、私につかみかかってくる。
まだ現状を受け止めきれないのだろう。
私だってそうだ。
誰もが、今、どうしたらいいのか分からない。
この国の未来を、これからどうしていけばいいのか分からず、困っていたのだ。

どんどん男の人が、怒りで顔を真っ赤にして、声の大きさが上がっていく。
それが、父を思い出して、体が震えだす。これは、もう条件反射のようなもので、自分にはどうしようもできない。
私は、年齢にかかわらず、男の人が苦手だ。特に、成人した大きな男の人は、今でも怖くて仕方ない。
逃げ出したいけど、タイミングを見逃してしまった。

「じゃあ、このありさまは何だってんだっ!俺の家族も他のやつらの家族も、みんな死んでいった!これで満足だろうさっ!お前は、ずっと、この国から無視されてきたんだからなっ!なのに、なんで帰ってきたんだっ!お前が帰ってこなきゃ俺たちは…」
「死んでたさ」
「ひっ……よ、ようせい?」

ポッドがひょい、と私の肩に乗っかった。

「エミリアは、この国を救おうとして、ここに来たんだ」
「……救わなくてよかったさ」

他の人が、ぼそっと言った言葉に、「どうしよう」と思ってしまった。
私が来たから、ここの人たちは、困っているのだ。

「じゃあ、他の国に行かせてやるよ」
「この国を離れろっていうのか」
「ああ。魔法も使えないのに、この国でお前たちがいても何の役にも立たないからな。それに、俺たちは、お前たちと暮らすのは、もう無理だ」
「妖精様の方が、俺たちよりも立場が上って言いたいのか」
「俺たちの国だぞ」

ポッドの言葉に、他の人たちも次々に、集まってくる。
この国を出たことがない人たちだから、きっと他の国でやっていけるか分からなくて不安なのだろう。私もそうだった。

「さっきの戦いで分かっただろう。もう、お前たちに加護が戻ることはないだろうさ」
「だが、俺たちにこの国を出ていけというのは、暴論だろうっ!俺たちは、ここで生まれた。ここで生き、ここで死んでいくと決めている。それなのに、いきなり出てきたお前たちに、なんで指図されなきゃいけないんだ」
「自分で餌もとってこれない。巣穴も直せない。何かあるとすぐに文句だ。しかも、この中で一番弱くて、なにも言えないエミリアにばかり攻撃する。そんなお前たちに、どうして俺たちが指図されなきゃいけないんだ」
「ポッド。もうやめて」

いたたまれなくなって、ポッドに声をかけた。
他の人たちの顔は、怖くて見えないから、俯いている。

「これからどうしたらいいのか、皆さん、不安だと思います。私も、そうですから。でも、私はこの国を建て直したいと思っています」
「建て直すって、どうやって」
「それは、これから考えます」
「これから考えるったって」
「時間は、たっぷりあるんだ。アンタたちだって、他にやることもないなら、片付けでもしていたらいいさ」

文句を言ってくる人たちから離れて、私たちは、特に崩壊が激しいところの片付けをしている間、ポッドはずっと文句を言っていた。

「あいつら、ちゃっかり城に住んでるくせして、文句ばっかり言う。誰か一人くらい手伝いに来るやつがいるかと思ったら、誰一人来ない。魔法が使えなくても、人手がいらないわけじゃねぇのに。そもそも自分たちの国だっていうのに、俺たちにばかり働かせて、高見の見物…文句だけはいっちょ前に……(ぶつぶつ)」

こんな感じだ。
私もポッドと、大体同じ考えではあった。でも、国の人たちは、妖精が怖いから近寄ってこないのではないか。とも思っていた。自分たちの国を、そもそもこんな形にしてしまったのは、妖精なのだから、そう考えることは普通だろう。
壊したのに、また直すのも意味が分からないと考えているんだろう。

お互いの関係が修復してもいないのに、無理をさせても、気まずくなるだけだと思うので、大人しくお城に引きこもってくれるなら、それに越したことはないと思う。

「だが、いつまでも城に引きこもっている奴らには、見えないぜ」
「あの人たちに加護を戻して、魔法の力をもう一度戻すことは、本当に出来ないの?」
「奴らが、心を改めてるなら分からないが、ま。今のままじゃ、無理だな」
「難しいね」

この先も、彼らと一緒に暮らしていくことは出来るのだろうか。
前とは、立場が全く正反対のこの状況で。
彼らは、自分たちに魔法の力があることが誇りだったし、自信だ。
それは、この国がそう教えてきたから。自分たちには、特別な力があると。だから、使えない人たちは、どう扱ってもいいと教えてきたし、年齢を重ねた彼らにその考えを改めさせる のは、相当難しいことだと思う。

「この国じゃなくて、別の国で暮らしたほうが、簡単だと思うけどな」
「でも、この国をこのままにしておくわけにはいかないよ」
「まぁ、エミリアがいいなら、俺はいいけどさ」
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