52 / 58
第2部
プロローグ
しおりを挟む
私たちは、上空から国を見下ろしていた。
にぎやかだった、私の知る国は、今はとても静かだ。
今日から、この国は深い眠りにつくことになった。
いつか、この国の王と国民が帰ってくるまで、封印されることになったのだ。
崩れた家や道、城が、とても寂しい。
死んでいった人々の存在は、妖精たちと協力してお墓を作ってもらい、弔ってある。
この国を建て直すと決めたはいいものの、やることもやらないといけないこともたくさんある。建物自体は、妖精たちが直してくれるからいいのだけど、問題は、王と国民だった。
この国の悪評は、ずいぶんと広まってしまい、おまけに先日の魔物の襲来もあり、すぐに誰かが来てくれるような状況ではないというのが、皆の考えだった。
だったら、この国を必要としている人たちを探す旅に出るのは、どうだろうか。
というのが、ポッドやほかの皆が出した提案だった。
広い世界を見るのは、いいことだし、きっと困っている人もいるだろう。
もし、エミリアがこの国以外で生きたいと思ったら、そこで生きてもいいし。
聖女様の国のように、最初は難しいかもしれないが、受け入れてくれる国は、多いだろう。
妖精も世界中にいるからな、とポッドが言うので、それなら最初は、私の叔母様のいる国に行きたいと言ったのだ。
「おばさま?エミリアにその宝石をくれた人か」
「そう。私、叔母様のこと、何も知らなかったから。家族は、他の親類がいるなんてこと一度も話さなかったから」
私のいないところで、話していたのかもしれないけど。
でも、お父様もお母様も、他の家族のことは嫌いなのかな、と思ったことは何度かある。
妹に「おじい様とおばあ様に会いたい!」と、しつこく言われたときは、嫌そうにしていたから。
妹には、いつも優しくて、甘い二人だったけど、自分たちの両親に会わせることは、一度もなかった。妹が話題に出すことも許さなかったくらいだったのだから、相当苦手だったんだろう。
「そういえば、私にもおじい様とおばあ様がいるのよね…。どんな人かしら」
「叔母のところに行けば何か分かるだろうさ」
「そうよね……。私にも他に家族がいるなんて、信じられないけど」
叔母様のところに行った後は、祖父や祖母の場所を聞いてみよう。
自分の問題だって、あまり解決できていない状態で、本当に国の問題なんて解決できるのか、少し不安だけど、私にはポッドがいるし、他の妖精も手伝ってくれると言っているから、心強い。
「妖精が手伝ってくれるなんて、私は幸運よね」
「今までが不運だったんだよ」
そういって、私たちは、自分たちが住んでいた国を後にして、叔母様のいる国へと向かったのだった。
にぎやかだった、私の知る国は、今はとても静かだ。
今日から、この国は深い眠りにつくことになった。
いつか、この国の王と国民が帰ってくるまで、封印されることになったのだ。
崩れた家や道、城が、とても寂しい。
死んでいった人々の存在は、妖精たちと協力してお墓を作ってもらい、弔ってある。
この国を建て直すと決めたはいいものの、やることもやらないといけないこともたくさんある。建物自体は、妖精たちが直してくれるからいいのだけど、問題は、王と国民だった。
この国の悪評は、ずいぶんと広まってしまい、おまけに先日の魔物の襲来もあり、すぐに誰かが来てくれるような状況ではないというのが、皆の考えだった。
だったら、この国を必要としている人たちを探す旅に出るのは、どうだろうか。
というのが、ポッドやほかの皆が出した提案だった。
広い世界を見るのは、いいことだし、きっと困っている人もいるだろう。
もし、エミリアがこの国以外で生きたいと思ったら、そこで生きてもいいし。
聖女様の国のように、最初は難しいかもしれないが、受け入れてくれる国は、多いだろう。
妖精も世界中にいるからな、とポッドが言うので、それなら最初は、私の叔母様のいる国に行きたいと言ったのだ。
「おばさま?エミリアにその宝石をくれた人か」
「そう。私、叔母様のこと、何も知らなかったから。家族は、他の親類がいるなんてこと一度も話さなかったから」
私のいないところで、話していたのかもしれないけど。
でも、お父様もお母様も、他の家族のことは嫌いなのかな、と思ったことは何度かある。
妹に「おじい様とおばあ様に会いたい!」と、しつこく言われたときは、嫌そうにしていたから。
妹には、いつも優しくて、甘い二人だったけど、自分たちの両親に会わせることは、一度もなかった。妹が話題に出すことも許さなかったくらいだったのだから、相当苦手だったんだろう。
「そういえば、私にもおじい様とおばあ様がいるのよね…。どんな人かしら」
「叔母のところに行けば何か分かるだろうさ」
「そうよね……。私にも他に家族がいるなんて、信じられないけど」
叔母様のところに行った後は、祖父や祖母の場所を聞いてみよう。
自分の問題だって、あまり解決できていない状態で、本当に国の問題なんて解決できるのか、少し不安だけど、私にはポッドがいるし、他の妖精も手伝ってくれると言っているから、心強い。
「妖精が手伝ってくれるなんて、私は幸運よね」
「今までが不運だったんだよ」
そういって、私たちは、自分たちが住んでいた国を後にして、叔母様のいる国へと向かったのだった。
304
お気に入りに追加
8,853
あなたにおすすめの小説
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
異世界で捨て子を育てたら王女だった話
せいめ
ファンタジー
数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。
元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。
毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。
そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。
「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」
こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが…
「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?
若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」
孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…
はあ?ムカつくー!
だったら私が育ててやるわ!
しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。
誤字脱字、いつも申し訳ありません。
ご都合主義です。
第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。
ありがとうございました。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。