上 下
39 / 59
第1部

78

しおりを挟む
「私、やっぱりあの国に行かなくちゃ」
「は?お前が言って、なんになる。死に行くだけだぞ。戦えるのか?戦えないだろ?無駄死にだ。ポッドは、お前にそんな死に方は望んでない」
「だったら、あなたが私を助けて」
「は?」

ジェイフが、ぽかんと私を見た。
何言ってんだ、こいつって顔に書いてある。もちろん、私は本気だ。私は、絶対にあの国に行かなくちゃいけない。私だって、あの国の人間だったのだ。それに私たちがきっかけであの国が滅ぶのだとしたら、私には見届ける義務がある。
それに私は聖女候補なのだ。
もし、あの国にまだ私のような人間が残されていたのであれば、救わなくてはいけない。私がしてもらったように。不条理に殺されようとしている人を救わなくてはいけない。
何もしていないのに、魔力がないという理由だけで、生きていてはいけない理由にはならないはずだから。
私は、いっぱいもらったから、だから私も返したい。
それに、

「それに私ポッドにまだ願いごと叶えてもらってないの」
「え、は?願い事?」
「私の願い、なんでもかなえてくれるんですって。本当は、殺してほしいって言ったんだけど、その願いはかなえてくれなかったから」
「…そんなことをあいつに頼んだのか。…そりゃあ怒るはずだな…」
「だから、私はポッドに会いにいく。私と同じように理不尽に殺されようとしている人たちを助けに行く。妹にも会いたいし」
「最後のはわかんねぇ。妹って、お前を虐めてたやつなんだろ。それなのに会いに行きたいのか?」
「お礼参りってやつ」
「なるほど。お前も性格悪くなったんだな」
「そりゃあ、聖女候補の修行中いろいろありましたから。それに神様もきっと私に来てほしいと思ってるんじゃないかな」
「なんで、そうわかるんだ?」
「だって、強く星が輝いていたもの。あの星の下は、きっとあの国だわ。なんで私をあの国に来させたがっているのかわからないけど、やっぱり逃げるべきじゃないのよ。私」
「…はぁあああ。それ、早く言えよ。なんだ上の奴に呼ばれてんのかよ。まぁ、そりゃユニコーンなんて連れてんだから、考えてみりゃわかったことだな」
「ユニコーン?あの馬の名前?」
「種族名だ。天馬とも呼ばれてるけどな。戦場を駆ける馬だから、戦事は得意だ。…俺も行くことになるとはな…ほかのやつらと一緒にもっと遠くに逃げてりゃよかったな」
「あなたのほかの妖精は、逃げたの?あの国には、もうポッド以外に妖精はいない?」
「いや。上のやつと仲がいいのはいる。それどころか世界中の妖精が選ばれて呼ばれて行ってると思う。妖精にも人間に恨みを持ってるやつがいるからな。そういう意味じゃ、怖いんだよな…」
「人間に恨みを持つ妖精…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~

紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの? その答えは私の10歳の誕生日に判明した。 誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。 『魅了の力』 無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。 お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。 魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。 新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。 ―――妹のことを忘れて。 私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。 魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。 しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。 なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。 それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。 どうかあの子が救われますようにと。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。