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第1部

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「おい。やめてくれ。腹いっぱいミルクを飲んだところを、そんなポンポン揺すられちゃあ、たまんねぇぜ」
「ご、ごめんなさい…つい、かわいくて」
「まぁいい。んで、お嬢さんは、どうしてこんな辺境地に?」
「あの国に行く途中だったんだけど、もう夜だし、寒いし、お腹もすいたから、この村で一休みしていたの」
「…なんだって?あの国に帰る?」
「え、ええ…」

ジェイフは、私の言葉に驚いていた。
そんなに驚くようなことは、…ポッドから、あの国で私がどういう待遇を受けていたのか、聞いていたのだとしたら、驚くのも無理はないか。
ポッドの力を借りて、あの国から逃げてきたのに、また帰るなんて、酔狂だと思われているのかもしれない。

「あ、あのね。私、ポッドを探しているの」
「ほぅ」

言葉裏にポッドがいなくなったと言っているのに、そのことに驚いた様子は、ない。
むしろ、「やっぱりな」みたいな顔をして頷いているから、ポッドがいなくなるのは、ジェイフも予想していたのかもしれない。

「それでね。ポッドがいるとしたら、あの国なんじゃないのかなって」
「うん」
「…」

私の言葉にジェイフは、頷きを返すだけだった。
ポッドについて、知っているはずなのに、どうして教えてくれないんだろう。

「ポッドは、あの国にいるのよね?」
「…ん」

言いたくなさそうだ。
もしくは、言いづらそうだ。
もぐもぐと口を動かし、身をもじもじさせている。
隠し事に向いていないのだ。

「…わかった。明日には、ここを出発する予定ですもの。自分の目で確かめにいきます」
「あの国には、行かないほうがいい」
「どうして?」
「明日には、わかるだろうよ」

それ以上は、言いたくないらしい。
ジェイフは、もぞもぞと枕の下に隠れてしまった。
どうやら、ここで寝る気らしい。
家がなくなってしまったのだから、そうするしかないのかもしれない。

「ジェイフは、黙っていなくなったりしない?」
「……」

その言葉にジェイフは、なにも返してくれなかった。

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