34 / 59
第1部
73
しおりを挟む
「よ。久しぶりだな」
「本当に、お久しぶりです。ジェイフさん、ですよね」
「お。名前、覚えててくれたのか。うれしいぜ。あれから少し心配してたんだが、意外と大丈夫そうだ」
「はい。…それにしても、どうしてあなたが?」
ポッドとともに国を渡るときに案内してくれたポッドの友人。
彼がいるということは、もしかしたら、ポッドも近くにいるのかもしれない!
予期せぬ久しぶりの再会に、私は驚きと興奮が湧き上がってくる。
しゃがみ込み、妖精を手に掬い取るようにして、持ち上げた。
「あーそれは、長くなるんだが……くしゅん!」
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ…だが、まだ冷えるな。悪いがお嬢さん。俺をお前さんの宿に一緒に泊めてくれないか?さっきの地震で、俺の家が壊れちまってな…」
「そんな…大丈夫ですか?家の中の人たちは無事ですか?」
「ん?あぁ。違う違う。家って言っても、廃屋だ。誰も住んじゃいねーよ。近いうちに壊すっていうのは、聞いてたんだが、まさか地震でやられるとはな…」
「お怪我はありませんか?」
見たところ、体が大丈夫そうだが、家が壊れ、その中から出てきたのだとしたら、どこかしら傷がついてもおかしくはない。
「ん。妖精ってのは、人間から見たら、小さくてか弱い存在に見えるかもしれないけどな。こう見えて、実は、人間よりも強いんだぜ?」
「そう、でしたね」
魔法の力があるからだろう。
そういえば、人間であれば軽くぺしゃんこにされる重さのものでも妖精は、大丈夫なんだと聞いたことがある。
「積もる話もあるからな。まずは、宿に案内してくれや」
「は、はい…」
村は、まだ先ほどの地震のせいで、ピリピリしている。
ここは、川も海も遠いし、山もないから、土砂崩れの心配もない。
それでも、パニックになった動物や魔物を心配しているんだろう。
旅人も減ったと聞いたし、何かあっても自分たちの身を守れるのは、自分たちしかいないから。
◇
「お嬢さん。ミルクはあるかい?」
「え…と、もらってきますね」
妖精は、ミルクが好きなのかしら。
ポッドもよく飲んでいたけど。
宿の主人にミルクを分けてもらったものの、コップに並々と注がれたそれは、どうやっても小さなジェイフの体には、入らなそうだ。
「あー。大丈夫。そのまま、そのまま」
「で、でも、わけなくて大丈夫ですか?」
「これくらい、全然飲み干せる」
コップを机に置いてくれと言われたので、その指示のまま机にコップを置くと、ジェイフは、何事かをつぶやくと、コップが淡く光り始める。
だんだんと、湯気が立ち上り、室内にミルクの甘い匂いが、ただよい始めた。
「よ」
ジェイフは、自分の体の2倍もある大きさのコップをわけなく、持ち上げ、そのままミルクを飲み始めた。
見かけによらず、力持ちだ。
私は、そのまま黙って、その様子を見守った。
「ふぃ~。生き返るぜ」
―本当に飲み干してしまった…。
ジェイフは、おなかをポンポンにして、寝転がってしまった。
その姿は、小動物のようで、大層かわいらしい。
思わず、ぷにぷにと、おなかをつついてしまう。
こんな小さな体のどこに、あの量のミルクが入ったんだろう。
「本当に、お久しぶりです。ジェイフさん、ですよね」
「お。名前、覚えててくれたのか。うれしいぜ。あれから少し心配してたんだが、意外と大丈夫そうだ」
「はい。…それにしても、どうしてあなたが?」
ポッドとともに国を渡るときに案内してくれたポッドの友人。
彼がいるということは、もしかしたら、ポッドも近くにいるのかもしれない!
予期せぬ久しぶりの再会に、私は驚きと興奮が湧き上がってくる。
しゃがみ込み、妖精を手に掬い取るようにして、持ち上げた。
「あーそれは、長くなるんだが……くしゅん!」
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ…だが、まだ冷えるな。悪いがお嬢さん。俺をお前さんの宿に一緒に泊めてくれないか?さっきの地震で、俺の家が壊れちまってな…」
「そんな…大丈夫ですか?家の中の人たちは無事ですか?」
「ん?あぁ。違う違う。家って言っても、廃屋だ。誰も住んじゃいねーよ。近いうちに壊すっていうのは、聞いてたんだが、まさか地震でやられるとはな…」
「お怪我はありませんか?」
見たところ、体が大丈夫そうだが、家が壊れ、その中から出てきたのだとしたら、どこかしら傷がついてもおかしくはない。
「ん。妖精ってのは、人間から見たら、小さくてか弱い存在に見えるかもしれないけどな。こう見えて、実は、人間よりも強いんだぜ?」
「そう、でしたね」
魔法の力があるからだろう。
そういえば、人間であれば軽くぺしゃんこにされる重さのものでも妖精は、大丈夫なんだと聞いたことがある。
「積もる話もあるからな。まずは、宿に案内してくれや」
「は、はい…」
村は、まだ先ほどの地震のせいで、ピリピリしている。
ここは、川も海も遠いし、山もないから、土砂崩れの心配もない。
それでも、パニックになった動物や魔物を心配しているんだろう。
旅人も減ったと聞いたし、何かあっても自分たちの身を守れるのは、自分たちしかいないから。
◇
「お嬢さん。ミルクはあるかい?」
「え…と、もらってきますね」
妖精は、ミルクが好きなのかしら。
ポッドもよく飲んでいたけど。
宿の主人にミルクを分けてもらったものの、コップに並々と注がれたそれは、どうやっても小さなジェイフの体には、入らなそうだ。
「あー。大丈夫。そのまま、そのまま」
「で、でも、わけなくて大丈夫ですか?」
「これくらい、全然飲み干せる」
コップを机に置いてくれと言われたので、その指示のまま机にコップを置くと、ジェイフは、何事かをつぶやくと、コップが淡く光り始める。
だんだんと、湯気が立ち上り、室内にミルクの甘い匂いが、ただよい始めた。
「よ」
ジェイフは、自分の体の2倍もある大きさのコップをわけなく、持ち上げ、そのままミルクを飲み始めた。
見かけによらず、力持ちだ。
私は、そのまま黙って、その様子を見守った。
「ふぃ~。生き返るぜ」
―本当に飲み干してしまった…。
ジェイフは、おなかをポンポンにして、寝転がってしまった。
その姿は、小動物のようで、大層かわいらしい。
思わず、ぷにぷにと、おなかをつついてしまう。
こんな小さな体のどこに、あの量のミルクが入ったんだろう。
131
お気に入りに追加
9,149
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
貴方に側室を決める権利はございません
章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。
思い付きによるショートショート。
国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。