34 / 74
第1部
73
しおりを挟む
「よ。久しぶりだな」
「本当に、お久しぶりです。ジェイフさん、ですよね」
「お。名前、覚えててくれたのか。うれしいぜ。あれから少し心配してたんだが、意外と大丈夫そうだ」
「はい。…それにしても、どうしてあなたが?」
ポッドとともに国を渡るときに案内してくれたポッドの友人。
彼がいるということは、もしかしたら、ポッドも近くにいるのかもしれない!
予期せぬ久しぶりの再会に、私は驚きと興奮が湧き上がってくる。
しゃがみ込み、妖精を手に掬い取るようにして、持ち上げた。
「あーそれは、長くなるんだが……くしゅん!」
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ…だが、まだ冷えるな。悪いがお嬢さん。俺をお前さんの宿に一緒に泊めてくれないか?さっきの地震で、俺の家が壊れちまってな…」
「そんな…大丈夫ですか?家の中の人たちは無事ですか?」
「ん?あぁ。違う違う。家って言っても、廃屋だ。誰も住んじゃいねーよ。近いうちに壊すっていうのは、聞いてたんだが、まさか地震でやられるとはな…」
「お怪我はありませんか?」
見たところ、体が大丈夫そうだが、家が壊れ、その中から出てきたのだとしたら、どこかしら傷がついてもおかしくはない。
「ん。妖精ってのは、人間から見たら、小さくてか弱い存在に見えるかもしれないけどな。こう見えて、実は、人間よりも強いんだぜ?」
「そう、でしたね」
魔法の力があるからだろう。
そういえば、人間であれば軽くぺしゃんこにされる重さのものでも妖精は、大丈夫なんだと聞いたことがある。
「積もる話もあるからな。まずは、宿に案内してくれや」
「は、はい…」
村は、まだ先ほどの地震のせいで、ピリピリしている。
ここは、川も海も遠いし、山もないから、土砂崩れの心配もない。
それでも、パニックになった動物や魔物を心配しているんだろう。
旅人も減ったと聞いたし、何かあっても自分たちの身を守れるのは、自分たちしかいないから。
◇
「お嬢さん。ミルクはあるかい?」
「え…と、もらってきますね」
妖精は、ミルクが好きなのかしら。
ポッドもよく飲んでいたけど。
宿の主人にミルクを分けてもらったものの、コップに並々と注がれたそれは、どうやっても小さなジェイフの体には、入らなそうだ。
「あー。大丈夫。そのまま、そのまま」
「で、でも、わけなくて大丈夫ですか?」
「これくらい、全然飲み干せる」
コップを机に置いてくれと言われたので、その指示のまま机にコップを置くと、ジェイフは、何事かをつぶやくと、コップが淡く光り始める。
だんだんと、湯気が立ち上り、室内にミルクの甘い匂いが、ただよい始めた。
「よ」
ジェイフは、自分の体の2倍もある大きさのコップをわけなく、持ち上げ、そのままミルクを飲み始めた。
見かけによらず、力持ちだ。
私は、そのまま黙って、その様子を見守った。
「ふぃ~。生き返るぜ」
―本当に飲み干してしまった…。
ジェイフは、おなかをポンポンにして、寝転がってしまった。
その姿は、小動物のようで、大層かわいらしい。
思わず、ぷにぷにと、おなかをつついてしまう。
こんな小さな体のどこに、あの量のミルクが入ったんだろう。
「本当に、お久しぶりです。ジェイフさん、ですよね」
「お。名前、覚えててくれたのか。うれしいぜ。あれから少し心配してたんだが、意外と大丈夫そうだ」
「はい。…それにしても、どうしてあなたが?」
ポッドとともに国を渡るときに案内してくれたポッドの友人。
彼がいるということは、もしかしたら、ポッドも近くにいるのかもしれない!
予期せぬ久しぶりの再会に、私は驚きと興奮が湧き上がってくる。
しゃがみ込み、妖精を手に掬い取るようにして、持ち上げた。
「あーそれは、長くなるんだが……くしゅん!」
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ…だが、まだ冷えるな。悪いがお嬢さん。俺をお前さんの宿に一緒に泊めてくれないか?さっきの地震で、俺の家が壊れちまってな…」
「そんな…大丈夫ですか?家の中の人たちは無事ですか?」
「ん?あぁ。違う違う。家って言っても、廃屋だ。誰も住んじゃいねーよ。近いうちに壊すっていうのは、聞いてたんだが、まさか地震でやられるとはな…」
「お怪我はありませんか?」
見たところ、体が大丈夫そうだが、家が壊れ、その中から出てきたのだとしたら、どこかしら傷がついてもおかしくはない。
「ん。妖精ってのは、人間から見たら、小さくてか弱い存在に見えるかもしれないけどな。こう見えて、実は、人間よりも強いんだぜ?」
「そう、でしたね」
魔法の力があるからだろう。
そういえば、人間であれば軽くぺしゃんこにされる重さのものでも妖精は、大丈夫なんだと聞いたことがある。
「積もる話もあるからな。まずは、宿に案内してくれや」
「は、はい…」
村は、まだ先ほどの地震のせいで、ピリピリしている。
ここは、川も海も遠いし、山もないから、土砂崩れの心配もない。
それでも、パニックになった動物や魔物を心配しているんだろう。
旅人も減ったと聞いたし、何かあっても自分たちの身を守れるのは、自分たちしかいないから。
◇
「お嬢さん。ミルクはあるかい?」
「え…と、もらってきますね」
妖精は、ミルクが好きなのかしら。
ポッドもよく飲んでいたけど。
宿の主人にミルクを分けてもらったものの、コップに並々と注がれたそれは、どうやっても小さなジェイフの体には、入らなそうだ。
「あー。大丈夫。そのまま、そのまま」
「で、でも、わけなくて大丈夫ですか?」
「これくらい、全然飲み干せる」
コップを机に置いてくれと言われたので、その指示のまま机にコップを置くと、ジェイフは、何事かをつぶやくと、コップが淡く光り始める。
だんだんと、湯気が立ち上り、室内にミルクの甘い匂いが、ただよい始めた。
「よ」
ジェイフは、自分の体の2倍もある大きさのコップをわけなく、持ち上げ、そのままミルクを飲み始めた。
見かけによらず、力持ちだ。
私は、そのまま黙って、その様子を見守った。
「ふぃ~。生き返るぜ」
―本当に飲み干してしまった…。
ジェイフは、おなかをポンポンにして、寝転がってしまった。
その姿は、小動物のようで、大層かわいらしい。
思わず、ぷにぷにと、おなかをつついてしまう。
こんな小さな体のどこに、あの量のミルクが入ったんだろう。
265
お気に入りに追加
9,397
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。