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第1部

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「よ。久しぶりだな」
「本当に、お久しぶりです。ジェイフさん、ですよね」
「お。名前、覚えててくれたのか。うれしいぜ。あれから少し心配してたんだが、意外と大丈夫そうだ」
「はい。…それにしても、どうしてあなたが?」

ポッドとともに国を渡るときに案内してくれたポッドの友人。
彼がいるということは、もしかしたら、ポッドも近くにいるのかもしれない!
予期せぬ久しぶりの再会に、私は驚きと興奮が湧き上がってくる。
しゃがみ込み、妖精を手に掬い取るようにして、持ち上げた。

「あーそれは、長くなるんだが……くしゅん!」
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ…だが、まだ冷えるな。悪いがお嬢さん。俺をお前さんの宿に一緒に泊めてくれないか?さっきの地震で、俺の家が壊れちまってな…」
「そんな…大丈夫ですか?家の中の人たちは無事ですか?」
「ん?あぁ。違う違う。家って言っても、廃屋だ。誰も住んじゃいねーよ。近いうちに壊すっていうのは、聞いてたんだが、まさか地震でやられるとはな…」
「お怪我はありませんか?」

見たところ、体が大丈夫そうだが、家が壊れ、その中から出てきたのだとしたら、どこかしら傷がついてもおかしくはない。

「ん。妖精ってのは、人間から見たら、小さくてか弱い存在に見えるかもしれないけどな。こう見えて、実は、人間よりも強いんだぜ?」
「そう、でしたね」

魔法の力があるからだろう。
そういえば、人間であれば軽くぺしゃんこにされる重さのものでも妖精は、大丈夫なんだと聞いたことがある。

「積もる話もあるからな。まずは、宿に案内してくれや」
「は、はい…」

村は、まだ先ほどの地震のせいで、ピリピリしている。
ここは、川も海も遠いし、山もないから、土砂崩れの心配もない。
それでも、パニックになった動物や魔物を心配しているんだろう。
旅人も減ったと聞いたし、何かあっても自分たちの身を守れるのは、自分たちしかいないから。



「お嬢さん。ミルクはあるかい?」
「え…と、もらってきますね」

妖精は、ミルクが好きなのかしら。
ポッドもよく飲んでいたけど。
宿の主人にミルクを分けてもらったものの、コップに並々と注がれたそれは、どうやっても小さなジェイフの体には、入らなそうだ。

「あー。大丈夫。そのまま、そのまま」
「で、でも、わけなくて大丈夫ですか?」
「これくらい、全然飲み干せる」

コップを机に置いてくれと言われたので、その指示のまま机にコップを置くと、ジェイフは、何事かをつぶやくと、コップが淡く光り始める。
だんだんと、湯気が立ち上り、室内にミルクの甘い匂いが、ただよい始めた。

「よ」

ジェイフは、自分の体の2倍もある大きさのコップをわけなく、持ち上げ、そのままミルクを飲み始めた。
見かけによらず、力持ちだ。
私は、そのまま黙って、その様子を見守った。

「ふぃ~。生き返るぜ」

―本当に飲み干してしまった…。
ジェイフは、おなかをポンポンにして、寝転がってしまった。
その姿は、小動物のようで、大層かわいらしい。
思わず、ぷにぷにと、おなかをつついてしまう。
こんな小さな体のどこに、あの量のミルクが入ったんだろう。
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