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第1部

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「……」

馬に乗れたはいいけど、これからどうしよう。何も考えていなかった。
とにかく乗れば、なんとかなると思ったけど、どこかへ連れて行ってもらうにも、普通の馬にさえ、乗ったことがないのだから、この馬にどう指示をすれば、歩いてもらえるのか、わからない。

「困った…」
「ぶるる」
「ぅわ」

馬は、しかたない。とでもいうように歩き出す。急に動き出すものだから、馬の背中の上で、体が進行方向に揺れた。うわ。結構バランスとりづらい。それに、少し座りづらい…。当たり前か。人が乗るためにいるのではないのだから。でも、もう少し、椅子代わりになるようなものはないのかしら。
この子がつけてくれるとは、限らないけど。

「え、え、え?」

馬は、当然のようにバルコニーの端に歩いていく。それ以上は、落ちてしまうことがわからないのだろうか。

「と、止まって…」
「……」

馬は、私の言葉になんて耳を貸す様子もなく、私はどうしようもなくて、馬の背中に乗っていることしか出来なかった。
この子が、浮いているところを見ているのだから、飛べるのだろうけど、やはり少し怖い。
心の準備をさせてほしい。と思うが、そんな私の気持ちを無視して、馬は、とっとこ歩き続ける。

「え、うわ」

そして、ついにバルコニーの一番端まで来たかと思うと、当然のように空へと歩き出したので、驚いた。

「と、飛んでる?」
「ぶるる」

当たり前だろう。
みたいな顔で、ちらりと見られてしまった。
そうなんだけど。こうして、普通に予備動作なく、平然と飛ばれると、こちらも戸惑ってしまう。
それと、結構怖い。
私は、特別高いところが苦手というわけではなかったが、なにせ馬の背中は、不安定すぎた。
少しでもバランスを崩せば、真っ逆さまに落ちてしまうのではないだろうか。

「け、結構…怖い…」

足がプラプラと空中にあるのも、怖い。

「ど、どうにかできない?」
「……」

馬に相談しても、どうしようもないのはわかる。でも、これで隣の国まで行くのは、少しばかり距離があるし、時間もかかる。いくら空の散歩とはいえ、やはりそれなりの距離があるからだ。

「え、……わっ」

馬の背中が急に光ったかと思うと、いつのまにかお尻には、馬の背中に乗るための硬い座布団のようなものがあり、足を馬に固定するものがあり(乗馬を習うときにこれで、馬に指示をするのだと教わったが、この時はまだ知らない)、そして、なにより馬の頭につけられた金具からのびた紐を、私はつかんでいた。

「あ、ありがとう…私がいろいろと文句を言ったから?」
「…ぶるる」
「さっきと全然違う…すごい安心する。ありがとう。あなたもポッドと同じで魔法?が使えるのね…不思議な馬…」
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