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第1部

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鱗粉が舞っている。
妖精の羽が、光に照らされ、虹色に輝いている。
生きた宝石が、空中で踊る姿。
その恐ろしいほど、幻想的で美しい光景は、旅人はおろか、長年住んでいる国民だって、見たことがない。
誰もが、呆然とし、次第に理解していく。
妖精が存在している。
そして、その妖精の祝福を、この国は受けていたと。

―わああぁっぁぁぁああ!!!

「あれって妖精!?」
「本当に存在したんだ!?」
「絵本だけの存在じゃないの?」
「この国は、妖精の祝福がある!」
「ママ!もっとよく見たい!」
「聖女様ー!我らが、国の誇り高き人よ!どうか、祝福を!」
「「「祝福を!!!」」」



「す、すごいですね…」
「ふふ。驚くのは、無理もないわ。私も驚いているもの。いつもよりすごい熱気。それもそうよね。みんな、妖精が現れるなんて、思ってもみなかったもの。ほら、笑顔。手を振って」
「は、はい…」

頭がくらくらする。
まるで、現実感がない。
私は、ひきつった笑顔で、手を振る。
その私の周りをポッドがクルクルと回っている。

「あ、妖精だ!」
「…あの子は、誰だ?」
「聖女候補だよ!私のお店で働いてる!エミリア!!!」
「お、おばさま…」

ブンブンと手を振っているおばさまに手を振り返す。

「ほら、見たかい?私は、あの子の知り合いなんだよ」
「おばさんが、祝福を受けたわけじゃないだろ…」

パレードは、まだ続いている。
ゴールのお城まで、もう少しかかりそうだ。

「あ」
「どうした?」
「ううん」

ちょっと、さっきの子、妹に似ていたな。
今頃、なにしてるんだろう。
王子と婚約したらしいし、今頃、未来の王妃としての勉強や教育を受けているのだろうか。
あの子は、勉強が得意ではないし、我慢強くもないから、教育係の人を困らせてないといいけど。ましてや、攻撃魔法なんて、使ってないことを祈る。
…要領がいい子だから、うまくやっているかもしれないけど。

「今頃、どうしてるかなって」
「誰がだ?」
「家族」
「…エミリア。あいつらのことは、忘れろと言っただろう」
「うん。…そうなんだけど、ね。どうしても思い出しちゃうの」
「会いたいのか?」
「……」

どうなんだろう。
会いたい…のかな。
何をしているのかは、少し気になる。
国を出てから、だいぶ経っているから、私が家出をしたことなんて、とっくにばれているだろう。

「今のエミリアは、あの国の王子だって、すぐに手を出すことは出来ない存在だ。だから、あいつらがエミリアに何かするとは思えない。エミリアが、関わろうとしなければ、何も出来ないやつらだ」
「私が、関わろうとしていたら?」
「今更、会ってどうする。復讐したいのか?それなら、手助けするが」
「……どうなんだろう。わかんない。ただ、少し、気になっただけ」
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