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第1部

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「聖女様。どうして、みんな…その」
「しかたないことなんです。聖女というのは、敬われ、恐れられる存在なのですから、民と仲良く話すということ自体、無理なんです」
「…どうして聖女様が、恐れられるんですか。何もしてないのに」
「私は、一番神に近い存在ですから」

聖女様の顔は、ほほ笑んでいるのに、なにを考えているのか分からない不気味さがあった。仮面をつけているみたいだ。

「神に近い存在を害したら、どうなるのか。それは、様々な伝承や歴史でよく知られています。学校の歴史の授業で習うことでもありますから。ですから、皆さん、私に何か粗相をして、神の怒りに触れることを恐れているのでしょうね」
「でも、聖女候補のみんなは、そんな素振りは見せていませんでした。それどころか…」
「聖女候補は、少し立ち位置が違いますから。それにエミリアも知っての通り、私は至って、普通の人間です。神に頼み事なんて、したこともないし、出来ません。当たり前ですけどね。もちろん、誰かが、私に何かしたとして、神が怒ることなんて、ありません。そんな神に干渉できる存在なんて、いませんから」
「そうなんですね。じゃ、じゃあ、みんなの誤解を解かなくてはいけませんね!聖女様は、とっても優しくて」
「気軽に話せる存在だって?」
「そ、そうです…いけませんか?」
「エミリア。よく聞いてください。あなたもまた聖女候補のうちの一人。いずれ、聖女になる可能性を秘めている人間の一人。だから、あなたに忠告します。私たちは、上に立つものなのです」
「上に立つ…?」
「聖女とは、人より神に近いもの。人を守り、国を守り、世界の一部を守るもの。しかし、それは神の意志だからです。私たちは、神の手先。神と人の中間点。だから、人と仲良くし過ぎてはいけないのです」
「……」
「エミリア。あなたが将来、どの道を行くか、私にはわかりません。ですが、あなたはもう選ばれているのです」
「選ばれている?」

誰に選ばれているというのだろう。

「あなたは、本当は、わたしよりも神に近い存在なのです。なぜなら、あなたのそばには、妖精がいます」
「ポッドのことですか?」

ポッドが、どうして神に近い存在の理由になるんだろう。

「あなたの妖精は、もしかしたら神の側近なのかもしれません」
「側近…?そんなこと、…ないと思います。だって、ポッドは、ずっと私のそばにいます。私が呼びかければ、いつだって来てくれる。だから、そんな…すごい妖精じゃ…いえ、ポッドはすごいんですけど。でも、神様の側近なんて話、聞いたことがありません」

ポッドが、もし神様の側近だとしたら、私はポッドのそばになんていられない。
だって、そんなすごい妖精だなんて、知ったら、私、どうしたらいいか分からない。
今までと同じように接する?接していいの?
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