家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました

猿喰 森繁

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第1部

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「…ポッド。おかしくない?」
「うん?なにがだ?」
「だから、この格好だよ…」
「全然、おかしくなんかないぞ?」
「…でも、不相応じゃない?」
「そんなことないさ。立派だ」
「でも…」
「安心しろって。誰もエミリアのことを知るやつは、いないんだから。知らないやつは、服装しか見ない」
「呪われた子が、聖女候補だなんて…しかも、聖女様の付き人だなんて知られたら、きっと色々言われるわ。聖女様が」
「大丈夫だって!そのための俺たちなんだからさ」

ポッドは、そう言ってクルクルと回った。
今回は、王族も参加している国を挙げてのお祭りだ。
神を崇め奉る神聖な祭り。

「ほ、本当に私が参加していいのかしら…」

こんな神聖な祭りに私ごときが、参加して怒られないかしら。
その証拠に、今日は朝から曇り空で、天気は良くない。
ぽつぽつ、と静かに雨のしずくが、窓を伝っている。

―ゴロゴロ!

「か、雷っ!?」
「おっ。幸先いいな」
「雷が鳴ってる!か、神様が怒っているのではないの?」
「喜んでるのさ!ほら、景気よくドンドコやってる」
「ひぇ」

確かにどんどん、ピカピカと雷が落ちているが、まるで天変地異のようで、恐ろしい。

「見てみろ。みんな、笑ってるだろ」
「ほ、本当ね…みなさん、怖くないのかしら」

雷が鳴って、外は土砂降りだ。
これでは、お祭りどころではないのに、なぜだかみんな笑っている。

「雷は、神の喜びの声と言われているのですよ」
「せ、聖女様…」

にこりと、笑っている聖女様。
聖女様は今回の主役だ。美しく仕立て上げられた特別な衣装をまとっている聖女様は、いつもよりとても輝いている。

「エミリアもよく似合っておいでです」
「あ、ありがとうございます…」
「えらく言葉遣いが変わったじゃないか」
「?」

聖女様にポッドの声は、聞こえない。
どうしてだろう。
それとなく聞いてもポッドは、何も答えてくれない。

「聖女様の言葉遣いが変わったと、言ってます」
「あぁ。聖女として、変わりますと宣言したのはいいんですけど、そう簡単に規則や何やらを変えるのって難しいでしょう?ですから、まずは、聖女としての立ち振る舞いや、言葉遣いを変えようと思いまして…おかしいですか?」
「い、いえ…とても優雅で…お姫様みたいです」

聖女様は、今までだって、優雅ではあった。
気位が強そうなお嬢様といった感じだったが、今は、なんというか優しそうなのに近寄りがたい。
身なりに気を付けるようになった。
化粧も自身の美貌を引き立てるようになった。
髪型も細かく結われている。

「聖女様。お綺麗になられましたね…」
「そうでしょう?これも努力するようにしましたの。聖女も形からですね。おかげで、貴族の令嬢からも一目見られるようになりましたの」
「そうなんですね…」
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