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前世でギロチンにかけられたので、今世では教会に入ったのに、王子がついてきたんですけど。こんなの聞いてない
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◇主人公視点◇
ザクッ、ザクッ。
ハサミが私の髪を切っていく音だけが響く。
長く、美しかった私の髪は、ざんばらに切られていく。
バサバサと適当に切られた髪は、足元に散らばり、それがまるでこれからの私のいくすえを表しているようで、涙がこぼれた。
どうしてこんなことに。
「立て」
兵士に促され、私は立ち上がると冷たい石の床を歩いていく。
向かうは、処刑台。
王妃を殺そうとした罪で、私はこれからギロチンによって首を落とされる。
「罪人ルイーズ・ド・フィリップは、嫉妬を理由に皇妃殿下殺害を企てた」
なんで、私がこんな目に合わなくてはいけないのだろうか。
「したがって、フィリップ侯爵家の爵位、領地、財産の没収、および王族殺害未遂の罪により、ギロチンの刑に処する」
体を兵士たちに押さえつけられ、私は首を台の上に乗せた。
―殿下…。
殿下のうっすらとほころぶ口元。
隣には、忌まわしきあの女が、震えて殿下に身を預けている姿が見えた。
私の人生は、ただあなただけに捧げられたというのに、あなたは、そうじゃなかったのね。
「ふふっ」
「執行!」
もし、生まれ変わったら、自分の人生は自分のために使えますように。
◇
何の因果か。
私は記憶をもって、この世に生まれなおした。
私の家は、侯爵家だ。
王族に最も近しい爵位であり、身分である。
殿下と何度も会わされたのも、前世と同じく政略結婚のためだろう。
「ルイーズ。君は、僕が絶対に幸せにする。どうか、僕のお嫁さんになってください」
真っ赤な顔で思いを告げる殿下(9)は、とても愛らしかった。
しかし、私は前世で彼が簡単に私を捨てほかの女を選び、果てはギロチンの刑に処したことを知っている。今は可愛い天使でも、将来は私を殺す悪魔である。
「申し訳ございません。その思いは受け取れませんわ」
「え?」
「何を言っているんだ!ルイーズ!お前何を言っているのか分かっているのか!?」
「はい」
「殿下の告白を受けないなんて、どうなるかお前は、本当にわかっているのか?」
「分かります。なので、私は教会に入ります」
「は?」
「え?」
「このまま殿下の告白を受けないままで、家がどうなるか不安でしたら、私は教会に入ります」
「……ルイーズ。君、僕のことがそんなに嫌いなのかい?」
「……」
殿下が瞳をうるませて、私を見つめてきます。
「あなたより、神様のほうを愛していますので」
どんな理由で私を生き返らせた…とは違いますわね。
これはなんといえばいいのでしょうか。
やり直し?…そうです。神様がどうして私に、やり直しをさせたか分かりませんが、今回ばかりは、自分の身を優先させていただきます。
「僕が…負けた…?神様なんて…目に見えないものに…?」
殿下がぶつぶつとつぶやいていますが、私には関係がありません。
善は急げ。さっそくその次の週に私は、教会に入ることになりました。
それなのに。
「ど、どうして殿下がいるのですか?!」
「僕も神様を愛してみたくなったからだよ」
「嘘です!」
ああ。神様って意地悪です。
どうして、こうもこの男と私をくっつけようとするのですか。
一体、私が何をしたというのですか。
そのあと、廃嫡をしたという元殿下と私は、王都から遠く離れた田舎の地で、神に仕える人間として末永く暮らしました。
穏やかではありますが、納得いっていません。
前世の私の死は、いったいなんだったのでしょうか。
◇王子視点◇
「好きです」
そういったとき、彼女はとてもうれしそうだった。
それから僕は、彼女の笑顔をたくさん見ることが出来た。
ルイーズはよく笑う女の子だった。
悲しい顔や怒った顔など、見たことがない。
僕は、彼女の表情をもっと見たくなって、いろいろなことをした。
ルイーズの前で、ほかの女の子と喋っていると、少しだけ悲しそうな顔をする。
ルイーズの前で、ほかの女の子にキスをすると、愕然とした顔をする。
ルイーズの前で、ほかの女の子を庇ったりすると、怒った顔をする。
ルイーズの前で、ほかの女の子と寝ると、表情が抜け落ちる。
ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、……僕は、いろいろなことをした。
「ルイーズ。僕は、君との婚約を破棄する」
僕の言葉にルイーズは、見たこともない表情を見せてくれた。
今まで見たことのない表情。
悔しそうな顔。悲しそうな顔。少しだけ怒った顔。最後に諦めたような顔。
くるくると回る彼女の顔に僕は夢中だった。
問題集の答えを埋めていくような…。
パズルをつぎつぎに埋めていくような、そんな達成感、喜び、楽しみがあった。
だから、こんなことになるとは思わなかった。
ルイーズが僕の妻を殺そうとしたらしい。
「陛下。○○は怖かったです~」
抱きつく妻の名前は、なんていったか。もう覚えていない。どうでもいい女と結婚したから、妻の顔も名前も何も覚えていない。
僕は、いつのまにか殿下から、陛下になった。
立場なんてどうでもよかったけど、ルイーズを好きに出来る権限があるのは、素晴らしいことだった。
ルイーズが、ほかの男と結婚すると聞いて、僕は生まれて初めて怒り狂った。
ルイーズが、僕に見せたものと同じ顔を見せるかもしれない。もしかしたら、僕が見たこともない顔を見も知らない男に見せるかもしれないと考えただけで、僕は吐いてしまった。
僕は、急いで対処した。
ルイーズを僕付きの召使いにしたのだ。
「なぜ、ルイーズをそこまで苦しめるのです。陛下は、ルイーズが嫌いなのは承知ですが、あの子は陛下になにをしたというのですか」
ルイーズの父親がそう叫んだ。
ルイーズは、自分の父親は権力と金にしか興味がないと言っていたが、娘の安否を気遣う男の顔は立派な父親のように見えた。
「僕のいうことが聞けないというならば、お前の爵位を奪ってもいいのだぞ」
「何を…陛下…あなたは何を言っているか、分かっておられるのですか?」
「ああ。わかっている。ルイーズの顔が見たいだけだ」
「は?」
「ルイーズのすべては僕のものだ。邪魔をするなら、僕の権限のすべてを使って解決する」
僕は、ルイーズだけを見ていた。
それなのに、どうしてこんなことになってしまったのか。
処刑台につくルイーズは、ぼろぼろだった。
牢屋に入れられ、彼女の姿は昔に比べて見る影もない。
しかし、それでもルイーズは美しかった。
「ルイーズ…」
ルイーズが笑った。
一体、何を考えたんだろう。
ルイーズの顔はいろいろとみてきたが、そういえば何を考えていたかは知らなかったな。
彼女の新しい顔を見るのは、これで最後。
その事実に僕は耐えられなくなって、
「陛下っ!?」
観覧席から、僕は飛び降り、そのまま死んだらしい。
「申し訳ございません。その思いは受け取れませんわ」
「え?」
目の前にあるのは、ずいぶんと小さくなったルイーズの顔。
この顔は、9歳くらいだろうか。
愛らしい頬は、ぷっくりと膨れて……初めて見る顔だ。
ルイーズの父親が何か言っているか、僕の耳には届かなかった。
あぁ。神様。今ならあなたを信じます。
僕の手にもう一度ルイーズを渡してくださるなんて。
「私、教会に入ります」
ルイーズが教会に行くなら、僕も行こう。
「……あの、殿下…」
「もう殿下じゃないよ」
「どうして私を追ってきたのですか?わざわざ廃嫡までして…」
「それは君…」
僕は、にっこりと笑った。
「ルイーズの新しい顔がもっと見たかったからさ」
あぁ。
また新しいルイーズの顔が見れた。
ザクッ、ザクッ。
ハサミが私の髪を切っていく音だけが響く。
長く、美しかった私の髪は、ざんばらに切られていく。
バサバサと適当に切られた髪は、足元に散らばり、それがまるでこれからの私のいくすえを表しているようで、涙がこぼれた。
どうしてこんなことに。
「立て」
兵士に促され、私は立ち上がると冷たい石の床を歩いていく。
向かうは、処刑台。
王妃を殺そうとした罪で、私はこれからギロチンによって首を落とされる。
「罪人ルイーズ・ド・フィリップは、嫉妬を理由に皇妃殿下殺害を企てた」
なんで、私がこんな目に合わなくてはいけないのだろうか。
「したがって、フィリップ侯爵家の爵位、領地、財産の没収、および王族殺害未遂の罪により、ギロチンの刑に処する」
体を兵士たちに押さえつけられ、私は首を台の上に乗せた。
―殿下…。
殿下のうっすらとほころぶ口元。
隣には、忌まわしきあの女が、震えて殿下に身を預けている姿が見えた。
私の人生は、ただあなただけに捧げられたというのに、あなたは、そうじゃなかったのね。
「ふふっ」
「執行!」
もし、生まれ変わったら、自分の人生は自分のために使えますように。
◇
何の因果か。
私は記憶をもって、この世に生まれなおした。
私の家は、侯爵家だ。
王族に最も近しい爵位であり、身分である。
殿下と何度も会わされたのも、前世と同じく政略結婚のためだろう。
「ルイーズ。君は、僕が絶対に幸せにする。どうか、僕のお嫁さんになってください」
真っ赤な顔で思いを告げる殿下(9)は、とても愛らしかった。
しかし、私は前世で彼が簡単に私を捨てほかの女を選び、果てはギロチンの刑に処したことを知っている。今は可愛い天使でも、将来は私を殺す悪魔である。
「申し訳ございません。その思いは受け取れませんわ」
「え?」
「何を言っているんだ!ルイーズ!お前何を言っているのか分かっているのか!?」
「はい」
「殿下の告白を受けないなんて、どうなるかお前は、本当にわかっているのか?」
「分かります。なので、私は教会に入ります」
「は?」
「え?」
「このまま殿下の告白を受けないままで、家がどうなるか不安でしたら、私は教会に入ります」
「……ルイーズ。君、僕のことがそんなに嫌いなのかい?」
「……」
殿下が瞳をうるませて、私を見つめてきます。
「あなたより、神様のほうを愛していますので」
どんな理由で私を生き返らせた…とは違いますわね。
これはなんといえばいいのでしょうか。
やり直し?…そうです。神様がどうして私に、やり直しをさせたか分かりませんが、今回ばかりは、自分の身を優先させていただきます。
「僕が…負けた…?神様なんて…目に見えないものに…?」
殿下がぶつぶつとつぶやいていますが、私には関係がありません。
善は急げ。さっそくその次の週に私は、教会に入ることになりました。
それなのに。
「ど、どうして殿下がいるのですか?!」
「僕も神様を愛してみたくなったからだよ」
「嘘です!」
ああ。神様って意地悪です。
どうして、こうもこの男と私をくっつけようとするのですか。
一体、私が何をしたというのですか。
そのあと、廃嫡をしたという元殿下と私は、王都から遠く離れた田舎の地で、神に仕える人間として末永く暮らしました。
穏やかではありますが、納得いっていません。
前世の私の死は、いったいなんだったのでしょうか。
◇王子視点◇
「好きです」
そういったとき、彼女はとてもうれしそうだった。
それから僕は、彼女の笑顔をたくさん見ることが出来た。
ルイーズはよく笑う女の子だった。
悲しい顔や怒った顔など、見たことがない。
僕は、彼女の表情をもっと見たくなって、いろいろなことをした。
ルイーズの前で、ほかの女の子と喋っていると、少しだけ悲しそうな顔をする。
ルイーズの前で、ほかの女の子にキスをすると、愕然とした顔をする。
ルイーズの前で、ほかの女の子を庇ったりすると、怒った顔をする。
ルイーズの前で、ほかの女の子と寝ると、表情が抜け落ちる。
ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、ルイーズの前で、……僕は、いろいろなことをした。
「ルイーズ。僕は、君との婚約を破棄する」
僕の言葉にルイーズは、見たこともない表情を見せてくれた。
今まで見たことのない表情。
悔しそうな顔。悲しそうな顔。少しだけ怒った顔。最後に諦めたような顔。
くるくると回る彼女の顔に僕は夢中だった。
問題集の答えを埋めていくような…。
パズルをつぎつぎに埋めていくような、そんな達成感、喜び、楽しみがあった。
だから、こんなことになるとは思わなかった。
ルイーズが僕の妻を殺そうとしたらしい。
「陛下。○○は怖かったです~」
抱きつく妻の名前は、なんていったか。もう覚えていない。どうでもいい女と結婚したから、妻の顔も名前も何も覚えていない。
僕は、いつのまにか殿下から、陛下になった。
立場なんてどうでもよかったけど、ルイーズを好きに出来る権限があるのは、素晴らしいことだった。
ルイーズが、ほかの男と結婚すると聞いて、僕は生まれて初めて怒り狂った。
ルイーズが、僕に見せたものと同じ顔を見せるかもしれない。もしかしたら、僕が見たこともない顔を見も知らない男に見せるかもしれないと考えただけで、僕は吐いてしまった。
僕は、急いで対処した。
ルイーズを僕付きの召使いにしたのだ。
「なぜ、ルイーズをそこまで苦しめるのです。陛下は、ルイーズが嫌いなのは承知ですが、あの子は陛下になにをしたというのですか」
ルイーズの父親がそう叫んだ。
ルイーズは、自分の父親は権力と金にしか興味がないと言っていたが、娘の安否を気遣う男の顔は立派な父親のように見えた。
「僕のいうことが聞けないというならば、お前の爵位を奪ってもいいのだぞ」
「何を…陛下…あなたは何を言っているか、分かっておられるのですか?」
「ああ。わかっている。ルイーズの顔が見たいだけだ」
「は?」
「ルイーズのすべては僕のものだ。邪魔をするなら、僕の権限のすべてを使って解決する」
僕は、ルイーズだけを見ていた。
それなのに、どうしてこんなことになってしまったのか。
処刑台につくルイーズは、ぼろぼろだった。
牢屋に入れられ、彼女の姿は昔に比べて見る影もない。
しかし、それでもルイーズは美しかった。
「ルイーズ…」
ルイーズが笑った。
一体、何を考えたんだろう。
ルイーズの顔はいろいろとみてきたが、そういえば何を考えていたかは知らなかったな。
彼女の新しい顔を見るのは、これで最後。
その事実に僕は耐えられなくなって、
「陛下っ!?」
観覧席から、僕は飛び降り、そのまま死んだらしい。
「申し訳ございません。その思いは受け取れませんわ」
「え?」
目の前にあるのは、ずいぶんと小さくなったルイーズの顔。
この顔は、9歳くらいだろうか。
愛らしい頬は、ぷっくりと膨れて……初めて見る顔だ。
ルイーズの父親が何か言っているか、僕の耳には届かなかった。
あぁ。神様。今ならあなたを信じます。
僕の手にもう一度ルイーズを渡してくださるなんて。
「私、教会に入ります」
ルイーズが教会に行くなら、僕も行こう。
「……あの、殿下…」
「もう殿下じゃないよ」
「どうして私を追ってきたのですか?わざわざ廃嫡までして…」
「それは君…」
僕は、にっこりと笑った。
「ルイーズの新しい顔がもっと見たかったからさ」
あぁ。
また新しいルイーズの顔が見れた。
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