全裸で異世界に呼び出しておいて、国外追放って、そりゃあんまりじゃないの!?

猿喰 森繁

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ノックの音に、反射的に体が跳ねた。
思っていたより集中していたらしい。
先ほどまで、明るかった空がもう暗くなっている。

「サクラ。僕だけど、今いいかな?」
「どうぞ」

入ってきたウィルの顔は、少しだけ固い。

「どうしたの?」
「うん。サクラが聖女として認められた」
「うん」
「それで明日の朝、僕たちと一緒に魔物の討伐に向かうことになったんだ」
「ま、魔物の討伐!?」

いきなりすぎないか。
魔物って、平気で人を殺すらしい……ってそれは元の世界の野生動物でも同じか。サバンナのライオンとかキリンとかゾウとかカバとかワニとか、危険な動物はいくらでもいる。それが姿かたちが変わっただけで、危険なのは変わりない。
違うのは、それが国の壁を隔てたすぐそばに生きているということだろうけど。すぐそばに平気で人を殺す生き物が存在しているんだから、怖いよなぁ。

「実は、先代の聖女様が儚くなってから、結構な時間が経っているんだ」
「だから、世界樹の浄化の力が弱くなって魔物が狂暴化、増加してる?」
「うん。……よく知ってるね」
「本に書いてありました」
「勉強したんだ」

感心したような顔で頷いているウィルに、私はふふん、と笑う。ウィルから見た私は、得意げな顔をしていると思う。社会人ですからね。ちゃんと予習しますよ。

「そうなんだ。魔物の数が増えていてね。その数を減らしたいんだ」
「魔物は、無限にわくんだけど、数を減らすことによって瘴気を薄くすることが出来るんだっけ」
「そう。間接的に世界樹の結界の負担を減らすことも出来るから、一定の間隔で魔物の討伐は必須なんだ」
「でも、なんで私?あ。もしかして合同でいくの?姫花ちゃんは来るの?」
「兄上たちは参加されない」
「なんで?」
「危険だからだそうだ」
「なんで!!???私たちは行くのに!?……って、ウィルも来るの?」
「うん。サクラが行くのに僕が行かないわけないじゃない」
「戦えるの?」
「失礼な。僕はこう見えて強いよ。魔法も使えるし」
「魔法も使えるの?すごい!見たい!」
「明日いくらでも見せてあげるよ」
「やった!」

って、こんな軽い感じで大丈夫なんだろうか。

「なんか予行練習とかないの?初めてでいきなり魔物と対峙するのは、怖いんだけど」
「ごめん。あんまり時間がないみたいなんだ」
「明日の朝、出発だもんねぇ……」

まだ一週間も経っていないのに、もう戦闘なんてハードすぎる。これが異世界だからなんだろうか。それにしても、会社の研修だって3か月はあるのに、いきなり実践、本番なんて余裕がなさすぎる。

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