上 下
4 / 18

3

しおりを挟む
私たちも部屋を出ていき、別室に案内されると、そこにはメイド姿の女性が数人立っていた。

「状況説明の前に服に着替えたほうがいいかと思いまして、こちらで用意させていただきました」
「ありがたいです」

美少年は、推定15…いや16?14か?…まぁとにかく中学上がりたての高校生のような、顔つきは幼い感じなのに、対応がめちゃくちゃ大人だ。見知らぬ人間に、まずは洋服を用意してくれるなんて…。さっき部屋には、大勢の大人がいたのに、誰も私に関心も興味も、心配もしてなかったからこそ、私の中で、この少年への好感度はうなぎのぼりだ。
ありがてぇ、ありがてぇ、と心の中で呟きながら、用意された服に着替える。
下着、肌着も用意されていた。
これは、現代と同じものだった。ブラジャーもホックが付いているから、もしかしたら、文化や技術は日本と変わらないのかもしれない。
よかった。布を巻くような感じじゃなくて。
洋服も、大きなワンピースといった感じだ。
白地に花柄の刺繍がされていて、可愛らしい。靴から、髪を結ぶリボンにまで、用意してもらって、申し訳ない気分になるが、そもそも連れてきたのは、向こうらしいので、仕方ないのだけど。

「すみません。お待たせしました」
「いえ。では、行きましょうか」

また部屋を出て、廊下を歩く。
今、気づいたけど、ここ結構広い建物なんだな。
石造りの壁は、日本ではあまり見かけない。天井もやたらに大きく、壁には、ところどころ絵画が飾られ、一定間隔に花瓶が置かれているところを見ると、普通の建物ではないのだろう。窓から外を見てみると、向かいにも大きな建物が見える。

「では、こちらの部屋にどうぞ」
「失礼します」

また大きな室内だ。
天井は、ドーム状の窓になっており、空が見える。シャンデリアがところどころ吊るされているし、壁は落ち着いた色合いの青と、金の文様が書かれている。そして、家具が全て金色だった。それなのに、なんだか目が眩しくない。いやらしさも感じない。品が良くまとまっていて、一言でいうなら綺麗な部屋。それにしても室内が大きい。落ち着かない。

「どうぞ。お座りください」
「失礼します……」

きょろきょろと部屋を見渡すのも失礼かな、と思って、私の向かいに座る少年の顔を見た。
メイドさんがお茶を用意してくれて、テーブルに置き終わると、そのまま部屋を出て行ってしまった。
部屋には、私と少年の二人きり。
緊張している私に気が付いて、「喉は乾いていませんか?お茶をどうぞ。お菓子もありますよ」と言って、少年が先にお茶を飲んだのを確認した後、私もありがたくお茶を飲む。

―おいしい。

紅茶は、めったに飲まないけど、フルーツの甘い匂いがして、味もまろやかだ。
緊張で、思ったより喉が渇いていたので、カップに入っていたお茶をすべて飲んでしまった。それに気づいた少年がまたカップにお茶を入れてくれた。

そうして、一息ついた私を見た少年は、にっこりと笑って口を開いた。

「それじゃあ、状況を説明いたしましょう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです

狼蝶
恋愛
 転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?  学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

ブラックな職場で働いていた聖女は超高待遇を提示してきた隣国に引き抜かれます

京月
恋愛
残業など当たり前のお祈り いつも高圧的でうざい前聖女 少ない給料 もう我慢が出来ない そう思ってた私の前に現れた隣国の使者 え!残業お祈りしなくていいの!? 嘘!上司がいないの!? マジ!そんなに給料もらえるの!? 私今からこの国捨ててそっちに引き抜かれます

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~

まいめろ
ファンタジー
錬金術師のウィンリー・トレートは宮廷錬金術師として仕えていたが、王子の婚約者が錬金術師として大成したので、必要ないとして解雇されてしまった。孤児出身であるウィンリーとしては悲しい結末である。 しかし、隣国の王太子殿下によりウィンリーは救済されることになる。以前からウィンリーの実力を知っていた 王太子殿下の計らいで隣国へと招かれ、彼女はその能力を存分に振るうのだった。 そして、その成果はやがて王太子殿下との婚約話にまで発展することに。 さて、ウィンリーを解雇した王国はどうなったかというと……彼女の抜けた穴はとても補填出来ていなかった。 だからといって、戻って来てくれと言われてももう遅い……覆水盆にかえらず。

処理中です...