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視界が真っ白な光に包まれる。
眩しくて、思わず目をぎゅっとつむった、その瞬間に奇妙な浮遊感に襲われた。
ジェットコースターに乗って、落ちていくような、内臓がふわっと浮く、あの感じに似ていた。
「ひっ」
思わず、恐怖で座り込み、目を見開くと、見知らぬ大きな空間に、大勢の人がいた。
「わあああああああ!!!」という歓声があがり、私は呆然としていたが、ハッと全裸であることを思い出して、自分の体を見下ろした。
……全裸だった。
こんな大勢の人間がいる前で、全裸である事実が受け入れられない。
一応、腕で胸や下の部分を隠すものの、私は、頭が真っ白なままだった。信じられない。何が起きているのだろうか。
私の焦りや不安なんか、ちっとも気にならないのか、この部屋にいる人たちは、気にならないらしい。ファンタジー漫画に出てくるような中世の鎧っぽいものを着ている男性に、白や黒、青など、色は違うものの、手首、足首まであるローブを着ている人、年齢層、性別まで様々な人がいた。
とりあえず、誰でもいいから服をくれないだろうか。
そんなことを考えていると、慌てた様子で美少年がこちらにやってきて、毛布のようなものを持ってきてくれた。
「あ、あの。こちらを……」
顔が赤い。全裸の私を直視できないのか、顔を背けながら、私にその毛布のようなもの……よく見てみると、それはローブだった。ずいぶんと手触りがいい。白地に青の模様。金の糸で装飾されていて、見るからに高級品のように思えたが、ありがたく受け取ることにする。
「あ、ありがとうございます」
「い、いえ……」
私は、それを身に着け、ようやく一息つけた。
全裸にローブなんて、まさに変態。変質者の服装だが、私だってしたくてしてるわけではないので、許して欲しい。
肌着も下着も身に着けていないので、まだ恥ずかしい気持ちが残っていたが、全裸よりマシである。私は、ようやく周りを見渡すことが出来た。
この部屋の人たちは、なにやら嬉しいことが起きたようで、嬉しそうに笑いあい、近くの人間の肩を叩いたり、飛んだり跳ねたりして喜んでいる。中には、床に座り込んで呆然としているように見える人間もいるが、表情は嬉しそうで、笑っている。
ワールドカップでも優勝したんだろうか。
私が座りこんでいる床は、白い光がほのかに輝いていたが、しばらくすると消えてしまった。光の後を見てみると、私の自室に現れたあの魔法陣らしきもののように思えた。
魔法陣が光って、自室からこの変な部屋に呼ばれた…。
信じられないが、まさか、ファンタジー小説のように悪魔召喚のようにここに呼び出されたということなんだろうか。
どんな状況なんだ……。
「あの、ここはどこなんですか?」
そのか細い声の方を向いてみると、私と同じように全裸……ではなく、学生服を着た美少女がいた。よかった。この変な状況に巻き込まれたのは、私だけじゃなかったんだ。
同じ日本人のようだし、安心する。
「ここは……」
私にローブをくれた美少年が答えようとすると、それを遮るように、バンッと扉が大きく開かれた。その音に、室内全員の顔がそちらに向く。
ドアが開かれ、現れたのは真っ赤な髪の青年だった。
両隣には、青い髪の青年と黄色の髪の青年がその後ろに付き従うように並び入ってきた。
カラーリング、信号機かよ。
と、思わず突っ込んで、笑いそうになり、下唇を噛んで抑えた。
少なくとも今、笑える状況ではないのは確かだからだ。
私が一人絶対に笑ってはいけない謎の室内をやっていると、青年は私の顔なんて目もくれず、美少女のほうに向かった。
「お前を待っていた『聖女』よ」
「え?」
「さぁ。行こう」
「きゃ」
そのまま赤い髪の青年は、美少女を横抱きにして誘拐したあと、颯爽と部屋を出て行ってしまった。
青年が出ていった後の部屋は、静まり返り、まるで夢から覚めたような感じで、先ほどまで、ワールドカップが優勝したか如く、喜びはしゃいでいた大人たちが、ぞろぞろと部屋から出ていくのを見届けながら、私は、隣にしゃがんでいる美少年を見た。
「……とりあえず、状況説明してくれませんか?」
「はい」
美少年が、とても申し訳なさそうに頷いた。
眩しくて、思わず目をぎゅっとつむった、その瞬間に奇妙な浮遊感に襲われた。
ジェットコースターに乗って、落ちていくような、内臓がふわっと浮く、あの感じに似ていた。
「ひっ」
思わず、恐怖で座り込み、目を見開くと、見知らぬ大きな空間に、大勢の人がいた。
「わあああああああ!!!」という歓声があがり、私は呆然としていたが、ハッと全裸であることを思い出して、自分の体を見下ろした。
……全裸だった。
こんな大勢の人間がいる前で、全裸である事実が受け入れられない。
一応、腕で胸や下の部分を隠すものの、私は、頭が真っ白なままだった。信じられない。何が起きているのだろうか。
私の焦りや不安なんか、ちっとも気にならないのか、この部屋にいる人たちは、気にならないらしい。ファンタジー漫画に出てくるような中世の鎧っぽいものを着ている男性に、白や黒、青など、色は違うものの、手首、足首まであるローブを着ている人、年齢層、性別まで様々な人がいた。
とりあえず、誰でもいいから服をくれないだろうか。
そんなことを考えていると、慌てた様子で美少年がこちらにやってきて、毛布のようなものを持ってきてくれた。
「あ、あの。こちらを……」
顔が赤い。全裸の私を直視できないのか、顔を背けながら、私にその毛布のようなもの……よく見てみると、それはローブだった。ずいぶんと手触りがいい。白地に青の模様。金の糸で装飾されていて、見るからに高級品のように思えたが、ありがたく受け取ることにする。
「あ、ありがとうございます」
「い、いえ……」
私は、それを身に着け、ようやく一息つけた。
全裸にローブなんて、まさに変態。変質者の服装だが、私だってしたくてしてるわけではないので、許して欲しい。
肌着も下着も身に着けていないので、まだ恥ずかしい気持ちが残っていたが、全裸よりマシである。私は、ようやく周りを見渡すことが出来た。
この部屋の人たちは、なにやら嬉しいことが起きたようで、嬉しそうに笑いあい、近くの人間の肩を叩いたり、飛んだり跳ねたりして喜んでいる。中には、床に座り込んで呆然としているように見える人間もいるが、表情は嬉しそうで、笑っている。
ワールドカップでも優勝したんだろうか。
私が座りこんでいる床は、白い光がほのかに輝いていたが、しばらくすると消えてしまった。光の後を見てみると、私の自室に現れたあの魔法陣らしきもののように思えた。
魔法陣が光って、自室からこの変な部屋に呼ばれた…。
信じられないが、まさか、ファンタジー小説のように悪魔召喚のようにここに呼び出されたということなんだろうか。
どんな状況なんだ……。
「あの、ここはどこなんですか?」
そのか細い声の方を向いてみると、私と同じように全裸……ではなく、学生服を着た美少女がいた。よかった。この変な状況に巻き込まれたのは、私だけじゃなかったんだ。
同じ日本人のようだし、安心する。
「ここは……」
私にローブをくれた美少年が答えようとすると、それを遮るように、バンッと扉が大きく開かれた。その音に、室内全員の顔がそちらに向く。
ドアが開かれ、現れたのは真っ赤な髪の青年だった。
両隣には、青い髪の青年と黄色の髪の青年がその後ろに付き従うように並び入ってきた。
カラーリング、信号機かよ。
と、思わず突っ込んで、笑いそうになり、下唇を噛んで抑えた。
少なくとも今、笑える状況ではないのは確かだからだ。
私が一人絶対に笑ってはいけない謎の室内をやっていると、青年は私の顔なんて目もくれず、美少女のほうに向かった。
「お前を待っていた『聖女』よ」
「え?」
「さぁ。行こう」
「きゃ」
そのまま赤い髪の青年は、美少女を横抱きにして誘拐したあと、颯爽と部屋を出て行ってしまった。
青年が出ていった後の部屋は、静まり返り、まるで夢から覚めたような感じで、先ほどまで、ワールドカップが優勝したか如く、喜びはしゃいでいた大人たちが、ぞろぞろと部屋から出ていくのを見届けながら、私は、隣にしゃがんでいる美少年を見た。
「……とりあえず、状況説明してくれませんか?」
「はい」
美少年が、とても申し訳なさそうに頷いた。
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