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両親の許可は、とれた。
問題は、どうやってあそこに行くか、だけど。そこも大丈夫だろう。
なにせ、あの国の神様にとって、私は歓迎すべき存在であり、愛されている自信がある。
私が、あの国に行きたいと望めば、きっと何らかの手段で、助けてくれるだろう。
それはいい。
それはいいのだが、問題は、この国の王子である。

「リラ」
「…殿下」

さすがにある程度の荷物はいるだろう、と思って部屋に帰ってみれば、大臣が告げ口したのだろう。この国の王子その人がいた。
王子とは、この国を良くしていこうと、様々な場所でともに戦ってきた戦友のような存在である。もちろん、それをあまりよく思わないほかの聖女様たちから、ありがたいお言葉をもらうこともあったし、貴族の令嬢からは、あまり良い目で見られることはなかったけど、しかたないじゃない。
私は、王子の命令に従っているだけなんだから。
血生臭い戦場に、ほかの聖女様は、誰も行きたがらなかったのもあるし、戦いの場に慣れている聖女がいないので、私以外に適任者がいなかったせいだ。
王子と仲良くなりたかったら、少しは兵士と一緒に稽古や訓練を受ければいいのに、と私は思うのだが、それはほかの聖女にとっては、すごく恥ずべきことで、イヤなことらしい。
そうはいっても、ここは帝国。
大きな国力を持っているが、その分、敵も多く、狙われることは多い。
いつ、どんな危険が訪れるか分からないのだから、ある程度は身を守る手段を持っていたほうが良いのでは、と思う。

そもそも、ほかの聖女は、どうしてああも態度が偉そうなのだろうか。
兵士たちを自分たちより、よほど格下だと思っているのか、とんでもない言葉を浴びせている聖女もいたので、来た当初は、ずいぶんと驚いたものだ。
あんなことを私が元居た国で、言ったならば、その瞬間、剣か槍で、ぶっ刺されるところだ。
元の国は、聖女のほうこそ、仕事も何もしない格下の存在と思われていたのだから。
そう思うと、この国に来れてよかったのかもしれないなぁ。
兵士たちに感謝されることも多いし、聖女の仕事をしていて、感謝されることがあるなんて、思ってもみなかったから、この国に来たはじめは、いつもうれしくて泣いてたなぁ…。

「どうした。そんなところに立っていないで、いつもみたいに話をしないか」
「い、いやぁ…殿下。いつもながら、お美しいですね…」
「座りなさい」
「かしこまりました」

大臣め…。じとりと大臣のほうを見ると、さっと顔が背かれた。
ちょっと、私の目を見なさいよ!

「それで、私がここに来たのは、どうしてかわかるかな?」
「……」

さて、どうしたものかな。
全然目が笑っていない殿下をうまく丸め込める言葉は見つかるかしらね。
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