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私のせいで、両親を困らせていたとは…。

「別に気に病むことは、ないわよ。昔から、あの人たち贔屓がすごかったもの。それに同調圧力も。ねぇ、あなた」
「そうそう。父さんも母さんも、お前が生まれなくても嫌な思いをずっとしていたから、今更どうってことないさ。それどころか、お前が生まれたことで張り合いができるようになったのさ」
「張り合い?」
「父さんか、母さんが死んだら、それこそあいつらの好きにされると思ってな。病気もケガもしてたまるか!って、ずっと気を張れることができたからな。特にお前があいつらに、いいようにされるのかと考えただけで、腹のほうから力がみなぎってくるんだ…」
「それは、力でいいのかしら?」

どちらかというと、怒りとかじゃないのかしら。
怒りを力に変えていたってこと?
お父さんは、こう言ってくれているけど、あの親戚たちのせいで、ここまで私たちが苦労する羽目になっていたのは、少しだけ腹が立つ。
お父さんもお母さんも、朝から晩まで働いてばかりで、このままでは体を壊すのではないかと、心配してしまうほど、よく働いていた。
それなのに、あの親戚たちは、金をよこせと叫んでばかりいたから、実の子どもが心配にならないのかと思ったものだ。

「とにかく、お父さんもお母さんも、あなたが生まれて後悔も嫌な思いもしてなかったってことは、覚えておいてね」
「うん…」

不覚にも泣いてしまった。
聖女なんて、嫌なことしかなかったし、気苦労もあったし、できればやりたくもないし、なりたいと思ったことなんて、一度もなかったけど、こうして私が聖女だったから、あの国から逃げ出すことができたと思えば、なんだか救われた気持ちになってしまった。
私、この二人の子どもでよかったな。
もし、あの親戚の誰かの子どもだったら、きっと死ぬまであの国で聖女として働かされていただろうから。
あんな国だったけど、一応お給料も待遇もよかったから。
この帝国のほうが、もっとすごいけど。それは、この帝国が、世界でも有数の大国だからだ。
そう思うと、あの規模の大きさの国にしては、頑張っていたのかもしれない。

「…って、しんみりしちゃったけど、私、あの国を救わないって考えにはならないからね」
「どうして、そこまであの国にこだわるんだ。別にあんな国滅んでもいいだろ」
「あんな国も、あんな国住んでいる人たちもろくな奴がいなかったのは、あなただって知ってるでしょう?」
「それは、そうなんだけど…でも、一応、私はあの土地の神様に恩と縁があるから。それに、あそこにダンジョンが出来たら、ほかの国にも被害が及ぶ。だから、あの国のために行くんじゃない。あの国の被害者をこれ以上出したくないから行くのよ」
「なんていい子なの~~~~」
「こんなにいい子なんだから、聖女に選ばれたんだね。あんな国を救わないといけないなんて、虫唾が走るけど、仕方ないか」
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