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素直に頼んでも聞いてくれる気配は、なさそうだ。
ということは、
「強行突破しかないわね」
「なんですと!?」
「ね、大臣。私が無理やり行って、監督不届きで罰せられても嫌でしょう?お願い。今こそ、大臣の権力を使うときがやってきたの」
「ぜっっっっったい嫌です」
ふん、と顔をそむける大臣に聞こえるように大きくため息をつく。それでも大臣は、こちらのいうことを聞いてくれそうな気配はない。
しかたないので、両親にも相談してみることにした。
あの二人は、私よりもあの国に愛着があるはず。
あんな親族とはいえ、自分たちの家族が死んでしまうかもしれないと知ったら、ショックを受けるだろう。
きっと私が助けに行くことに賛成してくれるはずだと、そう思っていたのに…。
「お父さんとお母さんもそう思うよね?」
「「絶対反対」」
「ええええ…」
「あんな国、滅んでよろしい」
「右に同じ」
「んな殺生な…冷たすぎない?いくらなんでも…一応、故郷だよ?」
「誰があんなところ…いい?世の中には、助けなくてもいい人間だっているの」
「聖女の両親とは、思えないセリフ…」
「あいつらにどれだけ金をせびられたか、お前は知らないんだ。あいつらは、欲の塊。自分たちさえよければいいという人間なんだ」
「まさか、お父さんとお母さんがお金に困ってたのって…」
「あいつらに盗まれたりしていたんだ」
「ひ、ひどい…」
両親は、二人ともよく働いていた。
借金もないし、私からの仕送りで、もう働かなくてもいいよと言っても聞かなかったのは、実家がお金を持って行っていたかららしい。
「でも、おじいちゃんにもおばあちゃんにも、お金を渡していたけど、なにに使っていたのかしら?」
両親が、働いたお金も持っていき、私からももらっていたとすると、そうとうお金に不自由しない暮らしをしていたに違いない。
そういえば、いつも高そうな服を着ていたことを思い出す。
おばあちゃんなんか、若くて美しい男性の使用人を何人も侍らしていたし、動きづらそうな、ドレスをいつも着ていた。デザインがとても凝っていたから、高いものだと分かるものだったが、私の仕送り、もしかしてあれに使われていたのかしら。
「聖女の親族とは思えない強欲っぷりね…」
「じつは、あなたが聖女に選ばれたことが気に食わなかったらしいの」
「え?」
「父さんたちは、お前が傷つくだろうから隠していたんだけどな」
「いや、まぁ、親族からいい目では見られていないのかなと思ったこともあったけど」
イベントで、親族から集まるときは、いつも「なんであの子が」「神様も見る目がないわよねぇ」「あんなブス、どうせ王子だってすぐに飽きて、捨てるわよ」なんて、いろいろな人間から、言われたもんだから、やっかみかなと思っていたけど本当にそうらしい。
両親も親族と仲がいい人はいなかったから、かなり肩身が狭かったそうだ。
それでも、私がこの国の聖女だから、私一人を置いて国を出るわけにもいかず、ずっと我慢していたらしい。
それで、私が国を出るという判断をして、一番喜んでいたのは、両親だったそうだ。
ということは、
「強行突破しかないわね」
「なんですと!?」
「ね、大臣。私が無理やり行って、監督不届きで罰せられても嫌でしょう?お願い。今こそ、大臣の権力を使うときがやってきたの」
「ぜっっっっったい嫌です」
ふん、と顔をそむける大臣に聞こえるように大きくため息をつく。それでも大臣は、こちらのいうことを聞いてくれそうな気配はない。
しかたないので、両親にも相談してみることにした。
あの二人は、私よりもあの国に愛着があるはず。
あんな親族とはいえ、自分たちの家族が死んでしまうかもしれないと知ったら、ショックを受けるだろう。
きっと私が助けに行くことに賛成してくれるはずだと、そう思っていたのに…。
「お父さんとお母さんもそう思うよね?」
「「絶対反対」」
「ええええ…」
「あんな国、滅んでよろしい」
「右に同じ」
「んな殺生な…冷たすぎない?いくらなんでも…一応、故郷だよ?」
「誰があんなところ…いい?世の中には、助けなくてもいい人間だっているの」
「聖女の両親とは、思えないセリフ…」
「あいつらにどれだけ金をせびられたか、お前は知らないんだ。あいつらは、欲の塊。自分たちさえよければいいという人間なんだ」
「まさか、お父さんとお母さんがお金に困ってたのって…」
「あいつらに盗まれたりしていたんだ」
「ひ、ひどい…」
両親は、二人ともよく働いていた。
借金もないし、私からの仕送りで、もう働かなくてもいいよと言っても聞かなかったのは、実家がお金を持って行っていたかららしい。
「でも、おじいちゃんにもおばあちゃんにも、お金を渡していたけど、なにに使っていたのかしら?」
両親が、働いたお金も持っていき、私からももらっていたとすると、そうとうお金に不自由しない暮らしをしていたに違いない。
そういえば、いつも高そうな服を着ていたことを思い出す。
おばあちゃんなんか、若くて美しい男性の使用人を何人も侍らしていたし、動きづらそうな、ドレスをいつも着ていた。デザインがとても凝っていたから、高いものだと分かるものだったが、私の仕送り、もしかしてあれに使われていたのかしら。
「聖女の親族とは思えない強欲っぷりね…」
「じつは、あなたが聖女に選ばれたことが気に食わなかったらしいの」
「え?」
「父さんたちは、お前が傷つくだろうから隠していたんだけどな」
「いや、まぁ、親族からいい目では見られていないのかなと思ったこともあったけど」
イベントで、親族から集まるときは、いつも「なんであの子が」「神様も見る目がないわよねぇ」「あんなブス、どうせ王子だってすぐに飽きて、捨てるわよ」なんて、いろいろな人間から、言われたもんだから、やっかみかなと思っていたけど本当にそうらしい。
両親も親族と仲がいい人はいなかったから、かなり肩身が狭かったそうだ。
それでも、私がこの国の聖女だから、私一人を置いて国を出るわけにもいかず、ずっと我慢していたらしい。
それで、私が国を出るという判断をして、一番喜んでいたのは、両親だったそうだ。
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