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「それで?世界樹を生やせるというのは、本当なのか?」
「はい」
私が生やせるわけではないけど。
アスランを見ると、「くさい~」と言いながら、鼻をつまんでいる。どうも緊張感に欠けている。ふいに自分の足元にぐいぐいと、なにかが押し付けられる感触を感じ、足元を見ると、ポン助が自分の鼻先を私の足にくっつけていた。
こちらもずいぶんと男所帯の匂いに辟易している様子だ。
「しかし、そんな人間聞いたことがない」
人間じゃありませんからね。(神様だから)
「本当に存在するとしたら、世界中から引く手あまただ。戦争になるかもしれない」
「そうですね。だから、このことはご内密にしてください」
「当たり前だ。まぁ、そんなことが本当にできるのだとしたら、だが」
「もし、出来たらどうします?ここでの暮らしを保証してくれますか?」
「ああ。もちろん。そんなことになったら、それこそ神様だからな。お前の願いは、どんなことでもかなえよう」
「本当ですね?」
「俺に二言はない。ここに契約書も用意した。…だが、もし世界樹を生やすことが出来なかったら、そのときは覚悟しておけよ?ここに法律はない。普通の国とは、違う。厳しい罰が待っている」
「……」
そうか。世界樹を生やせなかったら、詐欺罪ということで罰せられるのか。
だとしたら、参ったな。
いや、アスランのことだから、本当に生やせるんだろうけど。
それでも、世界樹を生やしてから、ギルド長に会ったほうが、よかったのかもしれない。
…でも、それはそれで、世界樹を生やしたという証拠が分からなくなるから、それもそれで、問題か…。
「(安心しろ。本当に生やせるから)」
「(信用しているよ)」
「(おう。ここは、偉い顔して、色々言っとけ)」
「じゃあ、さっそく見せて…」
「まぁ、待て。お嬢さん。なんでも裏の森から出てきたんだってな?疲れてるだろ?おまけに子どもと犬…?犬だよな。魔獣なんかじゃねーよな?」
「ぐるる…」
「このくそ犬っ!主に牙をむくなど、なんたる無礼か」
「魔獣なんて言うからですよ。ポン助は、歴とした…」
神様の使いと言おうとして、そんなこと言えば、白い目で見られるということに気づき、口を閉じた。
「歴としたなんだ」
「い、犬ですから」
「くぅん」
ポン助が、自分は犬ですか?みたいな目をして、こちらを見上げてくる。
心なしか、うるうると目が潤んでいるような気がする。
―そんな目で見ないでよ。
なんて説明したらいいのか、分からないんだもん。
「そうそう。俺達、疲れたし、お腹もペコペコなんだ。なに、逃げようなんてことはしないさ。もともと、国から出てきた身なんでな」
「国から出てきた身?なんだ。お嬢さん。普通の女です。みたいな顔してるが、犯罪者か何かなのか?」
「んなわけありませんよ!そしたら、このメンツで旅なんてするわけないでしょう!」
「ははは!そうだよな。子どもに犬なんて、珍しい組み合わせに俺達も面白いと思っていたんだよ」
「はい」
私が生やせるわけではないけど。
アスランを見ると、「くさい~」と言いながら、鼻をつまんでいる。どうも緊張感に欠けている。ふいに自分の足元にぐいぐいと、なにかが押し付けられる感触を感じ、足元を見ると、ポン助が自分の鼻先を私の足にくっつけていた。
こちらもずいぶんと男所帯の匂いに辟易している様子だ。
「しかし、そんな人間聞いたことがない」
人間じゃありませんからね。(神様だから)
「本当に存在するとしたら、世界中から引く手あまただ。戦争になるかもしれない」
「そうですね。だから、このことはご内密にしてください」
「当たり前だ。まぁ、そんなことが本当にできるのだとしたら、だが」
「もし、出来たらどうします?ここでの暮らしを保証してくれますか?」
「ああ。もちろん。そんなことになったら、それこそ神様だからな。お前の願いは、どんなことでもかなえよう」
「本当ですね?」
「俺に二言はない。ここに契約書も用意した。…だが、もし世界樹を生やすことが出来なかったら、そのときは覚悟しておけよ?ここに法律はない。普通の国とは、違う。厳しい罰が待っている」
「……」
そうか。世界樹を生やせなかったら、詐欺罪ということで罰せられるのか。
だとしたら、参ったな。
いや、アスランのことだから、本当に生やせるんだろうけど。
それでも、世界樹を生やしてから、ギルド長に会ったほうが、よかったのかもしれない。
…でも、それはそれで、世界樹を生やしたという証拠が分からなくなるから、それもそれで、問題か…。
「(安心しろ。本当に生やせるから)」
「(信用しているよ)」
「(おう。ここは、偉い顔して、色々言っとけ)」
「じゃあ、さっそく見せて…」
「まぁ、待て。お嬢さん。なんでも裏の森から出てきたんだってな?疲れてるだろ?おまけに子どもと犬…?犬だよな。魔獣なんかじゃねーよな?」
「ぐるる…」
「このくそ犬っ!主に牙をむくなど、なんたる無礼か」
「魔獣なんて言うからですよ。ポン助は、歴とした…」
神様の使いと言おうとして、そんなこと言えば、白い目で見られるということに気づき、口を閉じた。
「歴としたなんだ」
「い、犬ですから」
「くぅん」
ポン助が、自分は犬ですか?みたいな目をして、こちらを見上げてくる。
心なしか、うるうると目が潤んでいるような気がする。
―そんな目で見ないでよ。
なんて説明したらいいのか、分からないんだもん。
「そうそう。俺達、疲れたし、お腹もペコペコなんだ。なに、逃げようなんてことはしないさ。もともと、国から出てきた身なんでな」
「国から出てきた身?なんだ。お嬢さん。普通の女です。みたいな顔してるが、犯罪者か何かなのか?」
「んなわけありませんよ!そしたら、このメンツで旅なんてするわけないでしょう!」
「ははは!そうだよな。子どもに犬なんて、珍しい組み合わせに俺達も面白いと思っていたんだよ」
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