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私が、店に戻ると、「詐欺師」「恥知らず」「死ね」「神を驕った悪魔」だの誹謗中傷の張り紙やらペンキやらで汚されていた。

「はぁ…」

せっかく代々守ってきたお店なのに、こんなことで、すぐに潰されることになるとは、思ってもみなかった。
先だった父と祖父に申し訳がない。

「本当にお守りの力、なくなっちゃったのかな…」

私は、手元のお守りを見つめる。
これ一つ作るのだって、時間がかかっている。
確かに流行りの店に売っているのような可愛らしさや煌びやかさは、ない。それでも外見より中身が大事だと思って、そう信じて、頑張ってきたけども、このざまである。

「はぁ… これから先、どうしたら…」

私は、手元のお守りを見つめる。
開運招来のお守り。
あの男が、私に叩きつけるように返したのだ。

「申し訳ございません。私の力不足で、こんな扱いをさせてしまい…」

お守りは、さぞかし乱暴な扱いを受けてきたのだろう。
中の護符が、折れている。
お守りの袋も汚れているし、ところどころほつれている。
先日、買ったばかりで、どうやってここまでひどい状態に出来るのだろうか。

―こんこん。

扉が叩かれる音に思わず私は、身を固くする。
もしかしたら、またお守りを偽物扱いして、八つ当たりしに来たのかもしれない。
そう思うと、警戒して扉を開けることは出来ない。

「ど、どなた…でしょうか」
「俺だよ、俺」
「ああ…ロナルド」

声を聞いて、安心した。ロナルドは、私の婚約者だ。
もしかしたら、なぐさめに来てくれたのかもしれない。そう思うと、私は嬉しさで胸がぽかぽかとしてくる。
元々、親同士の仲が良くて、幼いころから遊んでいた。その延長線で、恋人になり、この度、婚約をした。来月には、そろそろ式の準備もしようか、という話もしていたのだ。

「ロナルド…会いたかったわ」

扉を開けて、彼の顔を見たら安心したのか、涙があふれて止まらない。
私は、思わず彼に抱き着いた。普段はなんとも思わないが、こうやって、自分が誹謗中傷の的になるのは、すごいストレスだった。それに本当はずっと怖かった。
彼らに詐欺師扱いされているときは、自分の人生を真っ向から否定されている気持ちだった。ずっと気が張っていたから、こらえられた。でも、今はもうだめだ。
そんな私が弱りきっていることなど、何も知らないのだろう。
ロナルドは、抱きついている私をそっと剥がし、私の目を見つめて、言った。

「俺たち、別れよう」

弱りきった私にとどめを刺すには、十分な言葉だった。
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