4 / 41
4
しおりを挟む
「もしも、間違ってたら申し訳ないのですが、まさか貴方の理想の男性が、ある日、貴方の家にやってきたってことですか?」
「さっきから、そういってんじゃねーか!」
「その男性の方と、過去に会っていたとか」
「ないない。だから、お守りの力って言ってんじゃん。さっきからさ、アンタが馬鹿すぎて、こっちはめんどくさいの。分かる?あんたのせいで、私は貴重な時間がどんどんなくなっていってんの。時給1万円ね」
理想の男性が、ある日、自分の家に押しかけてくる?それが、本物のお守りの力?
いくらなんでもそれは… … …。と思いつつも、少しだけ、不安になる。
私は、小さい頃から、お守り作りについて、勉強してきた。17時間、ずっと作っていたこともある。それでも、もしかしたら、私の力不足で、お守りの力がなくなっていたとしたら?
目に見えない力だから、それが失われていたとしても、私には分からない。
祖父だったら…、祖父が生きていたら、どうしていたんだろう。
「はい。では、もう一人、貴方のお守りが偽物だと証言してくださるかたがいらっしゃいます」
やたらに馬鹿を連呼する女性がいなくなって、少しほっとする。
私は、そこで無意識に震えていたのに気づき、大きく深呼吸する。
予想外の客の対応に追われている時、どうしても震えてしまう。パニックになってしまう。
これだけは、どうしようもなかった。
おそらく私に接客業は、向いていないのだろう。
臨機応変。柔軟な対応。それらは、私の中から著しく欠けているから。
それでも、私にはお守り作りしかなかったから、やっていくしかなかった。
勉強もこれだけは、苦痛なく出来た。休みの日なんてものは、ない。私は一日中、勉強して、作って、それを毎日繰り返す。これからもきっとそう。
昔は、私が間違えてたり、頑張っていたりしたら、厳しい言葉や優しい言葉をかけてくれた父も祖父も、もういない。もう誰も私に教えてくれる人は、いない。
だから、私がきちんとしていなくては。先祖が、祖父が、父がずっと作り続け、多くの人たちに渡してきたお守りをここで、途絶えさせるわけにはいかない。
大丈夫。
私は、ずっと頑張ってきた。
それこそ、神様に恥じない生き方を、自分自身ではしてきたつもり。だから、大丈夫。
次に出てきた顔も先日、見たことがある。
店に来た時から、独り言なのか、こちらに話しかけているのかよく分からない声量で、話すものだから、困惑した覚えがある。
「貴方も先日、うちに買いに来られていましたね。確か開運招福のお守りでしたか」
「そうだよ…そこで買ったお守りがまったく効果がなくて、こっちはお金がなくなってしまった。お金返してくれよ」
開運招福は、無病息災と同じように人気があるお守りだ。
ただ、いきなり素晴らしく良いことが雪崩のように押し寄せてくる…ということはない。
ただ、その人が進もうとしている道を少しだけこじ開けてくれる、背中を押してくれる、そんなお守りだ。
「なぁ200万返せよ」
「に、にひゃくまん!?」
今度の人もおかしいのか… …。
「さっきから、そういってんじゃねーか!」
「その男性の方と、過去に会っていたとか」
「ないない。だから、お守りの力って言ってんじゃん。さっきからさ、アンタが馬鹿すぎて、こっちはめんどくさいの。分かる?あんたのせいで、私は貴重な時間がどんどんなくなっていってんの。時給1万円ね」
理想の男性が、ある日、自分の家に押しかけてくる?それが、本物のお守りの力?
いくらなんでもそれは… … …。と思いつつも、少しだけ、不安になる。
私は、小さい頃から、お守り作りについて、勉強してきた。17時間、ずっと作っていたこともある。それでも、もしかしたら、私の力不足で、お守りの力がなくなっていたとしたら?
目に見えない力だから、それが失われていたとしても、私には分からない。
祖父だったら…、祖父が生きていたら、どうしていたんだろう。
「はい。では、もう一人、貴方のお守りが偽物だと証言してくださるかたがいらっしゃいます」
やたらに馬鹿を連呼する女性がいなくなって、少しほっとする。
私は、そこで無意識に震えていたのに気づき、大きく深呼吸する。
予想外の客の対応に追われている時、どうしても震えてしまう。パニックになってしまう。
これだけは、どうしようもなかった。
おそらく私に接客業は、向いていないのだろう。
臨機応変。柔軟な対応。それらは、私の中から著しく欠けているから。
それでも、私にはお守り作りしかなかったから、やっていくしかなかった。
勉強もこれだけは、苦痛なく出来た。休みの日なんてものは、ない。私は一日中、勉強して、作って、それを毎日繰り返す。これからもきっとそう。
昔は、私が間違えてたり、頑張っていたりしたら、厳しい言葉や優しい言葉をかけてくれた父も祖父も、もういない。もう誰も私に教えてくれる人は、いない。
だから、私がきちんとしていなくては。先祖が、祖父が、父がずっと作り続け、多くの人たちに渡してきたお守りをここで、途絶えさせるわけにはいかない。
大丈夫。
私は、ずっと頑張ってきた。
それこそ、神様に恥じない生き方を、自分自身ではしてきたつもり。だから、大丈夫。
次に出てきた顔も先日、見たことがある。
店に来た時から、独り言なのか、こちらに話しかけているのかよく分からない声量で、話すものだから、困惑した覚えがある。
「貴方も先日、うちに買いに来られていましたね。確か開運招福のお守りでしたか」
「そうだよ…そこで買ったお守りがまったく効果がなくて、こっちはお金がなくなってしまった。お金返してくれよ」
開運招福は、無病息災と同じように人気があるお守りだ。
ただ、いきなり素晴らしく良いことが雪崩のように押し寄せてくる…ということはない。
ただ、その人が進もうとしている道を少しだけこじ開けてくれる、背中を押してくれる、そんなお守りだ。
「なぁ200万返せよ」
「に、にひゃくまん!?」
今度の人もおかしいのか… …。
56
お気に入りに追加
1,971
あなたにおすすめの小説
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??
シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。
何とかお姉様を救わなくては!
日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする!
小説家になろうで日間総合1位を取れました~
転載防止のためにこちらでも投稿します。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる