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兵士たちがじりじりと近づいてくる。
「オーロラ!」
私は、友達であるドラゴンの名前を呼んだ。
オーロラは、まだこの国の周辺にいたようで、すぐに飛んできてくれた。
「ひっ!」
兵士も王子もオーロラの姿を見て、慌てて逃げていく。
「ソニアッ!この国は、お前の力が必要なんだ!」
「もう遅いですよっ!それに聖女はほかにも5人もいますから。大丈夫です」
「ソニアがいなくては、魔石は誰が作るというのだっ!」
「一人欠けたくらいで破綻するような約束をドラゴンとしようとするのがおかしいんですっ!」
オーロラの背中から、叫ぶ。
まったく。この国もハズレか。
一つの国に定住しないで、各地を移動しながら、生活するしかないのかしら。
「ソニアッ!」
「オーロラ。もういい、早く行こう」
オーロラは、天高く上がっていく。
王子の叫び声は、やがて遠くなり、ついに聞こえなくなった。
「これからどこに行くんだ」
「聖女の力を必要としているところ」
「これ以上離れると、あの国の加護が外れるがいいのか?」
「あの国?」
オーロラのいうあの国が、どの国なのか分からず、首をかしげた。
「お前が元いた国だ」
「……あぁ」
そういえば、まだ加護あるんだっけ。
「まぁいいんじゃない。妹いるし。妹が頑張ってくれればいいでしょ」
「そういうものか?」
「別にいいよ。もう。私は、私を必要としてくれる人のところに行きたい」
「あの国も必要としていたじゃないか」
「あの国は、私の力というか、別に誰でもよかったよ。地竜の加護とか帝国に並ぶ力と豊かさが欲しかっただけっぽいし」
「ほかの国もそうなのではないか?」
「……う~ん」
確かにそうかもしれないな。
でも、もしかしたら、違うところもあるかもしれない。
「いや。それでもせめて、週4勤務の6時間労働がいい……」
「なにを言っているんだ」
あんな人間工場みたいな真似は、二度とやりたくない。
あの国に残された聖女5人は、私が抜けたら仲良く助け合って生きてほしい。
「気長に探すよ」
「また悠長な」
寿命の長いドラゴンにそういわれてしまえば、苦笑いしかできない。
「ずっと頑張ってきたんだから、今くらい、のんびりしてもいいでしょう」
「そういうものか」
「……あっ!」
「どうした」
「ストップ!ストップ!オーロラ、地竜に挨拶しに行きたい」
「地竜?…ああ」
オーロラは、くるりと空中で体の向きを変え、地上に向かった。
地竜は未だ、のんびりと魔石を食べている。
「誰かと思えば」
「別れのあいさつにきました」
「律儀だな」
あれだけ用意した石は、3分の1が減っていた。
「やっぱりドラゴンのお腹を満たすなんて無謀よね…」
「こいつは、大食漢だからな。こいつが異常なんだ」
「その分、働くんだからいいだろ」
「なんか色々とすみませんでした」
「別にいいさ。変に人間たちを殺すよりは後味はいい」
「はぁ……」
あのまま鉱山にいたら、王子たちの命令で殺しはしないものの、傷つきあう展開はあったかもしれない。そう思えば、確かに平和的に解決…はしてないが、一応はまとまっている。
「まぁ。人間の命は短いし、渡り鳥みたいな生活をする聖女が一人いても面白い。たまに話を聞かせにきてくれ」
「はぁ……」
「それで、この国の加護を伸ばしてやってもいい」
「それでいいなら」
「ドラゴンは、基本的に暇だからな。遊びに来られて喜んでいるんだ」
「喜びはしてないが、暇つぶしにはなる」
「はぁ……」
良く分からないが、それでこの国の加護が引き延ばされるんだったら、別にいいかな。
一応の宿代代わりとして、渡すにはちょうどいいだろう。
私は、地竜に別れを告げ、オーロラと一緒にまた天空を登っていく。
「帝国はどうだ?」
「帝国なんて、もっと面倒そう。もっと田舎がいいな。のんびりできるところがいい」
聖女を顔で判断するようなところじゃなければ、どこでもいいかな。
「オーロラ!」
私は、友達であるドラゴンの名前を呼んだ。
オーロラは、まだこの国の周辺にいたようで、すぐに飛んできてくれた。
「ひっ!」
兵士も王子もオーロラの姿を見て、慌てて逃げていく。
「ソニアッ!この国は、お前の力が必要なんだ!」
「もう遅いですよっ!それに聖女はほかにも5人もいますから。大丈夫です」
「ソニアがいなくては、魔石は誰が作るというのだっ!」
「一人欠けたくらいで破綻するような約束をドラゴンとしようとするのがおかしいんですっ!」
オーロラの背中から、叫ぶ。
まったく。この国もハズレか。
一つの国に定住しないで、各地を移動しながら、生活するしかないのかしら。
「ソニアッ!」
「オーロラ。もういい、早く行こう」
オーロラは、天高く上がっていく。
王子の叫び声は、やがて遠くなり、ついに聞こえなくなった。
「これからどこに行くんだ」
「聖女の力を必要としているところ」
「これ以上離れると、あの国の加護が外れるがいいのか?」
「あの国?」
オーロラのいうあの国が、どの国なのか分からず、首をかしげた。
「お前が元いた国だ」
「……あぁ」
そういえば、まだ加護あるんだっけ。
「まぁいいんじゃない。妹いるし。妹が頑張ってくれればいいでしょ」
「そういうものか?」
「別にいいよ。もう。私は、私を必要としてくれる人のところに行きたい」
「あの国も必要としていたじゃないか」
「あの国は、私の力というか、別に誰でもよかったよ。地竜の加護とか帝国に並ぶ力と豊かさが欲しかっただけっぽいし」
「ほかの国もそうなのではないか?」
「……う~ん」
確かにそうかもしれないな。
でも、もしかしたら、違うところもあるかもしれない。
「いや。それでもせめて、週4勤務の6時間労働がいい……」
「なにを言っているんだ」
あんな人間工場みたいな真似は、二度とやりたくない。
あの国に残された聖女5人は、私が抜けたら仲良く助け合って生きてほしい。
「気長に探すよ」
「また悠長な」
寿命の長いドラゴンにそういわれてしまえば、苦笑いしかできない。
「ずっと頑張ってきたんだから、今くらい、のんびりしてもいいでしょう」
「そういうものか」
「……あっ!」
「どうした」
「ストップ!ストップ!オーロラ、地竜に挨拶しに行きたい」
「地竜?…ああ」
オーロラは、くるりと空中で体の向きを変え、地上に向かった。
地竜は未だ、のんびりと魔石を食べている。
「誰かと思えば」
「別れのあいさつにきました」
「律儀だな」
あれだけ用意した石は、3分の1が減っていた。
「やっぱりドラゴンのお腹を満たすなんて無謀よね…」
「こいつは、大食漢だからな。こいつが異常なんだ」
「その分、働くんだからいいだろ」
「なんか色々とすみませんでした」
「別にいいさ。変に人間たちを殺すよりは後味はいい」
「はぁ……」
あのまま鉱山にいたら、王子たちの命令で殺しはしないものの、傷つきあう展開はあったかもしれない。そう思えば、確かに平和的に解決…はしてないが、一応はまとまっている。
「まぁ。人間の命は短いし、渡り鳥みたいな生活をする聖女が一人いても面白い。たまに話を聞かせにきてくれ」
「はぁ……」
「それで、この国の加護を伸ばしてやってもいい」
「それでいいなら」
「ドラゴンは、基本的に暇だからな。遊びに来られて喜んでいるんだ」
「喜びはしてないが、暇つぶしにはなる」
「はぁ……」
良く分からないが、それでこの国の加護が引き延ばされるんだったら、別にいいかな。
一応の宿代代わりとして、渡すにはちょうどいいだろう。
私は、地竜に別れを告げ、オーロラと一緒にまた天空を登っていく。
「帝国はどうだ?」
「帝国なんて、もっと面倒そう。もっと田舎がいいな。のんびりできるところがいい」
聖女を顔で判断するようなところじゃなければ、どこでもいいかな。
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