聖女の仕事なめんな~聖女の仕事に顔は関係ないんで~

猿喰 森繁

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「ソニアッ!地竜と契約をしたとは本当かっ!?」
「お試しですけど」
「どんな契約だ」
「私たちが、人工の魔石を作って腹を満たしますと」
「そうかっ!よくやった!」
「え?」

王子が私の手を取った。

「これで地竜の問題は解決したどころか、地竜が気に入れば加護が増え、この国はもっと豊かになる」

鉱山の人たちと同じようなことを言っている。
そんな上手くいけばいいんだけど。

「でも、王子。人工魔石ってそんな簡単に作れるものではありません。それにドラゴンの腹を満たせるほどとなると、魔力だって持つかどうか」
「だが、こちらには5人の聖女がいるし、ソニアもいる。きっとなんとかなる」
「そうでしょうか……」

そんな簡単にいくなら、5人の聖女はこの国を出ていかなかったと思うけどな。



「~~~~ッ!!!もう無理ですっ!」

一人の聖女が魔石作りを投げ出した。
無理もない。
工場生産のように、いくつもいくつも、義務的に作るばかり。
それが毎日となれば、気も滅入ってしまうのかもしれない。
確かに私もそろそろ休憩が欲しかった。

週6日の12時間労働。
とんだブラック労働である。
石に魔力をこめるだけの簡単な仕事だが、簡単だからこそ、おかしくなってくる。

「あなたがいけないのよっ!簡単に地竜と約束なんてするからっ!」
「これが終わったら、無理だったといいますから」
「なんで私たちに前もって相談しなかったのよ」
「相談したところで、何か変わりましたか?」
「変わったかもしれないじゃない!」

もう聖女たちとの空気はギスギスしている。
疲れ果てて、ストレスがお互いにたまりまくっているせいだ。
あと、単純に相性が良くないというか、向こうが私のことを最初から毛嫌いしているせいで、空気が悪い。

「頑張りますっていった言葉は嘘だったんですね」
「大体!なんであんたみたいな他国の聖女にいろいろ指図されなきゃいけないのよっ!ここは私たちの国よ!」
「……これが終わったら出ていきますから」
「……ほんと?」

この国に住むなら、この聖女たちとずっと一緒にやっていくことになるだろう。
社会生活を送るにあたって人間関係が最悪だと、何もかも最悪になる。
私も、今は早くこの聖女たちから離れたくてしかたない。
一々、嫌味や見下しの言葉をかけられるのも限界である。
地竜にはお試しと伝えてあるし、今ある魔石を渡せば、一年は何も食べなくてもいけるだろう。だから、この仕事が一区切りしたら、さっさと出ていくつもりだ。

「それならよかった」


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