聖女の仕事なめんな~聖女の仕事に顔は関係ないんで~

猿喰 森繁

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「聖女様!ご無事でし…たか……あ」
「約束はしたからな」
「お試しですけどね」

地竜は、人工魔石を作るという約束をしたあと、あっさりと鉱山から出て行ってくれることになった。
のっそりと穴から出てきた巨大な地竜の姿に、皆が悲鳴を押し殺して固まっている。

「あ、安心してください。とりあえず鉱山からは出てくれるそうなので」
「この聖女の働きにかかっているがな」
「聖女様…!」

皆の視線が一斉に私に向かう。
なんて約束したんだって疑問と、私はほかの国の聖女だから約束を破って見捨てられるのではって思っている疑いの目だ。

「私だけではどうしようもないので、王子とほかの聖女たちと相談する案件なんですけど、一応私たちで人工の魔石を作って地竜の腹を満たすって約束です」
「そんな無茶な……」
「…出来るのか?そんなこと…」
「出来たら、それに越したことはないよな」
「地竜様の加護も補強されるということになるな」
「そしたら、もっとこの国は豊かになる……!」
「帝国に負けない大国になる可能性が出てきたな」

なんか、皆さん夢のある話をしていて申し訳ないのだけど、本当に私たちだけで、地竜の腹を満たすほどの人工魔石が作れるか分からない状態で、そんな話を進められても困る。
一応、私客人という扱いなんだけどな。
協力はしているけど。
この国に永住するか、考え中なんだけどな。

でも、竜の腹も満たす人工魔石が作れるようになれば、ほかの国に行ってもいい交渉に持ち込めるだろうし、いいんだけどさ。

「ではな。聖女。私の腹を満たすにふさわしい魔石が出来たら呼ぶと言い」

そういって、地竜はのしのしと歩いて行ってしまった。

「聖女様。本当に大丈夫でしょうか」
「まぁ。とりあえずは鉱山からこれ以上、魔石を食べられるわけにもいかないし、荒らされるわけにもいかなかったから、いいんじゃないんでしょうか」
「それはそうかもしれませんが。ドラゴンは神の使いともいいますし、約束事など、簡単にしてよいものでしょうか」
「そうはいっても、聖女様がああいわなきゃ、鉱山はずっと閉鎖したまま。貴重な魔石は、あのドラゴンの腹に全部入るところだったんだぞ。それでいいのか?俺たちがそれこそ食いっぱぐれちまう」
「それはそうだが」

納得してない人たちに気持ちもわかる。

「まぁまぁ。ここから先は、私たちの領分じゃねぇ。聖女様と王たちに任せよう。俺たちは、鉱山に行ってまた仕事を開始させるぞ」

鉱山で発掘が開始されたことは、良いことなのだけど、本当にどうしたものかな。

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