上 下
41 / 47

41

しおりを挟む
妹が、私がいなくなったことで、大変な目にあっているなんて、知りもしない私は、鉱山に来ていた。

「聖女様。助かります」
「いえ、これくらいはさせてください」

私が、この国に来たもう一つの目的は鉱山に来たかったからだ。
この鉱山に住んでいるドラゴンに会ってみたかった。
とはいっても、一応私も聖女であるので、鉱山で働く人たちに向けて、疲労回復効果のある魔法の雨を降らしたり、怪我や骨折、体を痛めた人たちの回復をしていた。
この国は、宝石の原石が採掘できることで、有名な国だった。
そこに最近、地竜が現れたという噂を聞いていた。
地竜は、宝石を食べるのが大好きだ。だから、この国に来るのも納得できる。
…が、そうされては困る人たちもいる。悲しいが、地竜には、ほかの土地に移動してもらう。

「それで、この奥に地竜がいるんですね?」
「はい…。いや、本当に聖女様お一人で大丈夫ですか?誰か、護衛とかつけたほうがいいんじゃないんですか」
「いえ。大丈夫です。それに討伐隊が派遣されたものの、皆大けがをして帰ってきたと聞いていますよ?」
「…え?はい、その通りですが、?え?」

だから、この国で地竜より強い人はいないということだろう。
ならば、誰が来ても足手まといにしかならない。
私は、誰かを守りながら戦うのは、とても苦手なので。

「え?おれ、おかしいの?」
「いや、お前はおかしくねぇよ。あの人がおかしいんだよ」
「怪我している人出たのに、なんで一人で行こうとしてるの?」
「頭おかしいんじゃね」
「なるほど」

……。
聞こえてますよ。皆さん。
私は、決して頭がおかしいわけではありません。

「ここにポイントを設置しましたので、何かあればすぐに戻ってこれますから、安心してください」
「は、はあ…」

私は、聖女なので何かあれば竜を眠らせてでもなんでもして、逃げてこられるし、大人数を瞬間移動させるのは、とても魔力と体力を使うので、やりたくない。
私一人であれば、全然問題ない魔力消費量なので、そういった細かい理由がある。

「ご安心ください。地竜の方には、怪我一つさせませんとも」
「いや。そういう心配は、誰もしてませんが」

地竜は、土地神の一面を持っている。
加護の力によって、農作物の被害を最低限抑えることが出来る上に、豊作のご利益まである、とてもありがたいドラゴンなのである。
だが、この地竜を間違って殺してでもしてみろ。
その血が、大地に流れると、たちまち農作物に大ダメージ。
おまけに土地は穢れ、瘴気が大発生してしまうという、とても難しい生き物なのである。
討伐隊の話を聞いたときは、地竜に怪我でもさせて、万が一殺しでもしたら、どうするんだと、思っていたが、やはりドラゴンはドラゴン。
人より、圧倒的に強い生き物だったから、安心した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】召喚されて聖力がないと追い出された私のスキルは家具職人でした。

ファンタジー
結城依子は、この度異世界のとある国に召喚されました。 呼ばれた先で鑑定を受けると、聖女として呼ばれたのに聖力がありませんでした。 そうと知ったその国の王子は、依子を城から追い出します。 異世界で街に放り出された依子は、優しい人たちと出会い、そこで生活することになります。 パン屋で働き、家具職人スキルを使って恩返し計画! 異世界でも頑張って前向きに過ごす依子だったが、ひょんなことから実は聖力があるのではないかということになり……。 ※他サイトにも掲載中。 ※基本は異世界ファンタジーです。 ※恋愛要素もガッツリ入ります。 ※シリアスとは無縁です。 ※第二章構想中!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

聖女として全力を尽くしてまいりました。しかし、好色王子に婚約破棄された挙句に国を追放されました。国がどうなるか分かっていますか?

宮城 晟峰
ファンタジー
代々、受け継がれてきた聖女の力。 それは、神との誓約のもと、決して誰にも漏らしてはいけない秘密だった。 そんな事とは知らないバカな王子に、聖女アティアは追放されてしまう。 アティアは葛藤の中、国を去り、不毛の地と言われた隣国を豊穣な地へと変えていく。 その話を聞きつけ、王子、もといい王となっていた青年は、彼女のもとを訪れるのだが……。 ※完結いたしました。お読みいただきありがとうございました。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。 しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。 そして、リーリエルは戻って来た。 政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

必要なくなったと婚約破棄された聖女は、召喚されて元婚約者たちに仕返ししました

珠宮さくら
ファンタジー
派遣聖女として、ぞんざいに扱われてきたネリネだが、新しい聖女が見つかったとして、婚約者だったスカリ王子から必要ないと追い出されて喜んで帰国しようとした。 だが、ネリネは別の世界に聖女として召喚されてしまう。そこでは今までのぞんざいさの真逆な対応をされて、心が荒んでいた彼女は感激して滅びさせまいと奮闘する。 亀裂の先が、あの国と繋がっていることがわかり、元婚約者たちとぞんざいに扱ってきた国に仕返しをしつつ、ネリネは聖女として力を振るって世界を救うことになる。 ※全5話。予約投稿済。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

処理中です...