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聖女の賃金は、決して低いものではない。
それを5人も受け入れなくてはいけないとなると、大国出ない限り、難しいだろう。
周辺で大きい国は、元居た国とここくらいで、あとは小さな国か村くらいしかない。

「わ、私はソニア様と一緒でも、別に構いませんわよ」
「え?」
「は?あんた、なに抜け駆けするつもり?!」
「もともとアンジュ様に言われて、私は国を出ましたの。私一人では悲しいけれど、国のお役には立てません。ですから、しかたなく…」
「わ、私もです」
「私もよ」
「ちょ、ちょっと!」

おお…。
なんか守りに入って来た。
自分さえ、よければいいということだろうけど…。確かに私も補佐がいてくれたほうが助かるし、私的には別に構わないけど…。
ただ、一度国から逃げ出したのだから、相当の覚悟を持って、この国を守っていかないと、冷たい目で見られることは確かだろう。

「お前たちを受け入れると思うか?」
「殿下!お願いします!私たち、これからは心を入れ替えますから」
「ここ以外に行くところなんて、ほかにないんです」
「だろうな。周辺の国には、お前たちがこの国を捨てたことが知れ渡っている。国を守らない聖女など存在不要。おまけにお前たちは、仕事もろくにできないくせに力を合わせないと、一人前の力を出せないというのもある。ソニア一人とでさえ、同じくらいの力が出るか微妙なところ…」

ちょっと!比べないでよ!
ほら、聖女たちが、すごい目で見てるじゃん。
人間、比べられるのが、一番いやなんだって。
私も、元の国でさんざん妹と比べられてきたから、それはよくわかる。
自分ではどうしようもないものを、他人と比べられることこそ、一番いやなものもない。
容姿とか、聖女の力なんて、自分たちの努力で、多少はマシになるものの、どうしようもないことだって、あるんだから、仕方ない。

「しかも、お前たち保身に走るあまり、ほかの国に助けを求める伝文をもみ消しただろう」
「……」
「ソニアが、たまたま来てくれたから、よかったものの…我が国はもう少しで瘴気に飲まれていただろう。我が国は貿易も盛んということは、知っての通り。ここが崩れて困る国は、たくさんいるだろう。共倒れになるところだってあった。それなのに、お前たちは、ただただ、自分たちの保身のために動いた。ほかの人間を犠牲にしてもなお、な。これが、聖女とは頭が痛い」
「殿下…でも…」
「お前たちは、この国を二度とまたぐな。我が領土から、永遠に追放する。良かったな。これで、お前たちは晴れて自由の身だ」
「そ、そんな…。でも、私たちここ以外に行くところなんてありません!」
「そうです。ほかの国は、どこも私たちを拒むんです!だから、…」
「だから、戻って来たと?言い訳にもならんな」
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