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「つまり、やりすぎたのだ。お前は。そして、自分の力の自覚がなさすぎた」
「は?どういうこと?」
「お前の力のせいで、戦争が起きるかもしれないということだ」
「まってまって!どういうことよ!私は、ただ、普通にこの国を守っただけよ」

王子を寝かせてから、こっそりと国を出た。
誰にもばれていないはず。
問題は、王子が眠りから覚めた後と、王子が寝ているところが、見つかった場合である。
私は、オーロラにまずこの国に聖女がいない原因は、なんなのか聞きたかったのだ。

「オーロラ!」
「どうした。国を出るのか?」
「ううん。まだ考え中。でも、この国の王子様の様子がおかしくって」
「ほう…?」

私は、王子の様子を聞かせた。
私をなぜか崇拝していると言ったこと。
熱っぽい様子で、私に迫ってきたこと。
私の力を欲しがっていたこと。
それらを聞いたオーロラは、特別驚く様子もなく、納得していた。

「なるほどな。まぁ、当たり前なんじゃないか」
「な、なんで?」
「国全土の瘴気を一掃し、ほかの国の力を借りてまで、倒すほどの強敵であるお前たちが言う「ボス」とやらを単身で破壊。おまけに国全体にポーションの雨を降らせたなど、…それで、畏れられこそすれ、見下されるようなことにはならない」
「そうなの…?だって、私のいた国では普通だったよ?別にみんなも日常茶飯事だったから、何も言わなかったし。むしろ、今回は少ないって文句を言われるくらいだったし」

私の降らしたポーションで、勝手に生計を立てている人もいるらしい。
降らした量が少ないと、それだけでも文句が上がってくるのだ。

「それは、お前が昔からそうだったせいで、規格外の力に慣れてしまったせいだろう。あの国はこれから大変だろうな。失ってから、気づくものの多さに絶望しているところだろう。まぁ、私には関係のないことだが」
「でも…どうして、それが聖女様がいなくなってしまった原因になるの?」
「だから、言ったではないか。お前が近くいたからだ」
「え?」
「聖女というものは、きわめてプライドが高い。自尊心の塊だ」
「うん?そうかな?」
「だから、お前は例外だと言っている。ほかの国でも聖女が、ここまで見下されている国なぞ、見たことがない。皆、聖女を敬い、頭を下げる。聖女が、天下になっている国すらあるというのに。なぜ、あそこまでひどい仕打ちが出来たものか。よほど、他国の情勢に興味がないらしい。あとは、常識か?あのバカ王子も少しは、留学なりすればいいものの、引きこもってばかりだから、知恵遅れになるのだ」
「知恵遅れはやめなさいよ。差別用語だよ」
「ドラゴンに差別もなにもあるものか。あのバカ王子は、自らがなすべきことを怠ったのだ。ならば、その罰が、今なのだろう」
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