聖女の仕事なめんな~聖女の仕事に顔は関係ないんで~

猿喰 森繁

文字の大きさ
上 下
30 / 47

30

しおりを挟む
「つまり、やりすぎたのだ。お前は。そして、自分の力の自覚がなさすぎた」
「は?どういうこと?」
「お前の力のせいで、戦争が起きるかもしれないということだ」
「まってまって!どういうことよ!私は、ただ、普通にこの国を守っただけよ」

王子を寝かせてから、こっそりと国を出た。
誰にもばれていないはず。
問題は、王子が眠りから覚めた後と、王子が寝ているところが、見つかった場合である。
私は、オーロラにまずこの国に聖女がいない原因は、なんなのか聞きたかったのだ。

「オーロラ!」
「どうした。国を出るのか?」
「ううん。まだ考え中。でも、この国の王子様の様子がおかしくって」
「ほう…?」

私は、王子の様子を聞かせた。
私をなぜか崇拝していると言ったこと。
熱っぽい様子で、私に迫ってきたこと。
私の力を欲しがっていたこと。
それらを聞いたオーロラは、特別驚く様子もなく、納得していた。

「なるほどな。まぁ、当たり前なんじゃないか」
「な、なんで?」
「国全土の瘴気を一掃し、ほかの国の力を借りてまで、倒すほどの強敵であるお前たちが言う「ボス」とやらを単身で破壊。おまけに国全体にポーションの雨を降らせたなど、…それで、畏れられこそすれ、見下されるようなことにはならない」
「そうなの…?だって、私のいた国では普通だったよ?別にみんなも日常茶飯事だったから、何も言わなかったし。むしろ、今回は少ないって文句を言われるくらいだったし」

私の降らしたポーションで、勝手に生計を立てている人もいるらしい。
降らした量が少ないと、それだけでも文句が上がってくるのだ。

「それは、お前が昔からそうだったせいで、規格外の力に慣れてしまったせいだろう。あの国はこれから大変だろうな。失ってから、気づくものの多さに絶望しているところだろう。まぁ、私には関係のないことだが」
「でも…どうして、それが聖女様がいなくなってしまった原因になるの?」
「だから、言ったではないか。お前が近くいたからだ」
「え?」
「聖女というものは、きわめてプライドが高い。自尊心の塊だ」
「うん?そうかな?」
「だから、お前は例外だと言っている。ほかの国でも聖女が、ここまで見下されている国なぞ、見たことがない。皆、聖女を敬い、頭を下げる。聖女が、天下になっている国すらあるというのに。なぜ、あそこまでひどい仕打ちが出来たものか。よほど、他国の情勢に興味がないらしい。あとは、常識か?あのバカ王子も少しは、留学なりすればいいものの、引きこもってばかりだから、知恵遅れになるのだ」
「知恵遅れはやめなさいよ。差別用語だよ」
「ドラゴンに差別もなにもあるものか。あのバカ王子は、自らがなすべきことを怠ったのだ。ならば、その罰が、今なのだろう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。 王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

処理中です...