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「いやぁ。隣国のばけも…ああいえ、聖女として名高いソニア・アシュリー様だとは知らず、大変失礼をいたしました」
「いえ。陛下におかれましても、大変でしたでしょうに。ご無事でなによりですわ」
「もうすぐ宝具の魔力が切れそうで、どうするべきか困り果てていたところ。まさに救世主。神の助けでした」
「あの瘴気では、逃げるに逃げられませんでしたもの。間に合ってよかったですわ」

少しは待たされたり、検査されたり、尋問されたりするかと思えば、真っ先に国王陛下に会わせてもらえるとは、思わなかった。
両陛下とこの国の王子であろう少年、それから兵士に大臣らしき人間が数人いるだけで、寂しい空間だ。うちの国だと、陛下の周りには、いつも大勢の貴族が呼ばれてもいないのにいて、うるさいものだった。

「あなたは、この国の英雄だ。すぐさま国を挙げての祭りを上げ、祝いたいところだが」
「いえ。そんなことをしてもらう必要はありません。そんな元気が、国民にあるか分かりませんもの」
「そ、その通りだ。…この国を救ってくれたそなたに重ねて、頼み事をするのは、申し訳がないのだが、どうかその力、我が国に貸してはくれないだろうか」
「構いません」
「本当かっ!」
「はい。どうせ、行くところもありませんし」
「行くところがない?」
「実は、国から追い出されまして」
「なんとっ!?」

私は、ここに来るに至った経緯を簡単に説明した。
自分には、才能がある妹がいること。
その妹が、国を守るため、私は用済みとなり、追い出されてしまったところ。
次に住む国を探しつつ、旅をしているところ。

「これは好機…」
「?」

陛下の様子が、おかしい。
私はその時、強い視線を感じて、その視線をたどると、王子さまらしき少年から、ニコッと笑いかけられた。よくわからないが、笑い返す。ぎこちない笑いに見えていなければいいけど。

「聖女様。どうかこの城の客室を使ってくれ。長旅に、先ほどの戦いで疲れていることだろう。あぁ、食事の用意もしなくてはな」
「大丈夫です。それより、この国に祝福をかけても?」
「なんと!?願ってもない!しかし、続けてで、体のほうは…」
「祝福をかけるだけの力は、残っていますから」
「噂に違えぬ化けものだな」
「… …」

ぼそっと言って、聞こえないだろうと思っているのだろうが…。
聞こえてるよ。

「ご迷惑でしたら、私は、国を出ていきますが」
「いや!まったくご迷惑ではない!我が国に今、一番必要とされているのは、聖女様にほかならない!いや、まったくほんとう!国を挙げて、みんなで歓迎いたしますとも!」
「あまり大げさにしなくて、大丈夫です」

それより、ほかの国から、化け物扱いされているなんて、知らなかった。
ほかの国の聖女は、どれだけの力があるのかしら。
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