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光の柱が消えた後、残ったものは何もない。

「あいかわらず規格外な力だ」
「最強の代表格にそういわれると自信がつくよ」
「自信・・・いや、まぁ、別にいいが」

なにか言いたげな声色が、気になるが、とりあえずは現状確認が最優先だ。
下を見下ろすと、さすがに高レベルの聖魔法。
穢木どころか周辺の瘴気や森まで消えている。

「この感じなら、ボスまで倒しちゃってるかな?」
「おそらくな」

ーあわれな。

小さく呟いたオーロラの言葉が引っ掛かる。

「どういう意味?もしかして、かわいそうだって思ったの?」

言葉は、すぐには返ってこなかった。
ぐるる。と喉をならす音が聞こえる。
機嫌が悪いのだろうか。それとも仮にも「ボス」と呼ばれた魔物が、あっさりと消されてしまったことに対して何らかの感情を抱いているようだ。最強の代表格であるドラゴンは、個人至上主義だ。他の魔物に興味を持つ個体は、少ない。少ないが、全くいないというわけではない。

「オーロラ?」
「一歩間違えれば、あれは私かもしれないと思った」

昔、オーロラと戦ったときのことを思い出しているのだろう。
あのときは、私も連日戦っていたから、魔力も精力も限界だった。
万全の態勢の上で、不意打ちという形で、オーロラを攻撃していたら、どうなっていたのだろうか。
もしかしたら、殺していたかもしれないし、そんなことはなかったのかもしれない。
あのときより私は、強くなったし、魔法の威力も上がった。

「まさしく神の気まぐれだな」
「そんなに責めないでよ。…黙祷するから」

姿も名前も分からない「ボス」に二人で黙祷を捧げた。
ボスも穢木もなくなったことで、瘴気が薄れていく。
オーロラの背に乗りながら、浄化の魔法をかけていく。
ある程度、浄化が終え、結界を張る。
これで、神降ろしの準備が整った。
あとは、種をまき、呪文を唱えるだけである。

私は、持っていた種を土に埋め、呪文を唱える。

「全能神に畏み畏み申す」

種に魔力を注ぎ込むと、すぐに種から芽が出てくる。
そのまま呪文を唱え、魔力を注ぎ続ける。
芽は、そのまますくすくと育ち始める。
やがて、巨大な木へと成長した。
これで、ここ一帯は聖女がいなくても浄化と結界が保たれた状態になった。

「意外とすぐに終わったわね。まったく。神降ろしが大変な儀式だなんて、先生は脅かしてきたけど、嘘じゃない」
「… … …」

他国の聖女や兵士たちと協力が必須。神降ろしは、命をかけて、やる儀式であり、過去に命を失った聖女も少なくない。だから、神降ろしをするときは、国が崩壊の危険にある時。

―命と引き換えにしてもよいとあなたが判断したら、儀式をなさい。それ以外は、してはいけないわよ。

「そんなこと言われたから、どうなることかと思ったけど、全然大丈夫じゃない」
「… … もしも、ボスが強かったら、どうするつもりだったんだ」
「そしたら、一時撤退すればいいかなって」
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