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「殿下!ようこそおいでくださいました。私を迎えに来てくださいましたのね」
「リリア!?」
また面倒なやつがやってきた。
「リリア様。陛下たちは大事な話をされているのです」
「ええ。わかっているわ。ソニアお姉さまのことでしょう」
「…ほう」
オスカーの目が、きらりと輝く。
ああっ!だめだめ!
誰か、そいつの口を防いでくれ!
「お姉さまなら、もうこの国には、おりません」
「は?」
ぽかんとしているオスカーの姿が、目に映らないのかべらべらと自身の自慢話を始めるリリア。あぁ…もうおしまいだ。
「聖女は、ついにこの国を見限ったのか」
「いえ。私たちが追い出しました」
「お…追い出した?」
そうだよね。そんな顔になるよね!
帝国が、のどから手を出すほどの逸材だったらしいソニアを追い出したなんて知ったら。それも自分たちが、手に入れようと、はるばるここまで来たのに、とっくに追い出されたって知ったら… …知ったら?
「はははははは!!!こいつは、好都合!そうか、そうか…それは、手間が省けた!使えないやつだと思ったが、そんなことはないらしい」
「そ、そうですか!?えへへ。それほどでもぉ」
「行くぞ!聖女殿を迎えに行かなくては!これで、彼女も快くこちらに来てくれるだろう」
「へ?」
善は急げ。くるりと、こちらのことなど忘れたようにとっとと去っていく王子御一行。
「ま、まてっ!ソニアは、うちの聖女だぞ!」
「追い出したのだろう?それならば、もうどこの国のものではない」
「ち、違う!それは、こいつらが、勝手にやったことだ。私の意志ではない」
「王のくせに、聖女を守ることも出来ず、そこでふんぞり返っていたツケだな。これに懲りて、自身の子どもの躾の方法を見直すがいい。将来は、そいつがこの国の王になるのだろう?」
「な、なんだと…?王が聖女を守るわけがなかろうが!私は王だ!この国の王だぞ!」
「ああ。そうだ。お前は、王だ。しかし、忘れたか?国なくして王はありえん。王とは、国を維持するためだけに存在している。そして、聖女は、その国を守る存在。王一人いなくとも国は立っていられる…が、聖女なくして国は存在することもできない。それを忘れたか」
「なにを言っている?」
「皮肉なことだ。ずっと守られてきたから、忘れたか?結界が、なくなった後に残るものなど何もないことを」
「… …結界はなくなったりはしない。まだあるではないか」
「そうだな。よほど優秀な聖女だったらしい。立ち去ってもなお、残る結界。素晴らしい。あぁ…早く迎えに行かなくては。どこの輩に唾をつけられても腹が煮えわたる…おい」
「は、はい!」
リリアは、未だ自身がオスカーとともに帝国に行くのだと、勘違いしているらしい。
行くぞと声をかけられたと勘違いしたのか、オスカーの腕に絡みつき、それを面倒そうに振り払われ、べしゃりと床に転がった。
「で、殿下…?」
「お前、この国に家族はいるか?」
「は、はい…ですが、殿下と一緒であれば、置いていけます」
「ふん。家族すら捨てるか。そんな女が、聖女とはな…。よく聞け女。お前は、帝国には連れて行かない」
「え?じゃ、じゃあ、私はどうすれば」
「この国で聖女をすればいい」
「え?で、でも…私…」
「姉より自信があるのだろう?ならば、大丈夫だ。それにお前が守らずして、誰がこの国を守る?外の瘴気を知らないのか?」
「え…あぅ…で、でもぉ」
「リリア様…」
「な、なに…」
じりじりと兵士たちが、リリアに詰め寄る。
当たり前だ。命がかかっているのだから。
ここで、リリアまでいなくなってしまえば、この国は、あっという間に瘴気に包まれて、全滅するだろう。
「な…なによ…そんなに怖い顔して…で、殿下!」
「まぁ、頑張れ聖女。姉と同じような力を得たのであれば、また会うこともあるだろう」
「リリア!?」
また面倒なやつがやってきた。
「リリア様。陛下たちは大事な話をされているのです」
「ええ。わかっているわ。ソニアお姉さまのことでしょう」
「…ほう」
オスカーの目が、きらりと輝く。
ああっ!だめだめ!
誰か、そいつの口を防いでくれ!
「お姉さまなら、もうこの国には、おりません」
「は?」
ぽかんとしているオスカーの姿が、目に映らないのかべらべらと自身の自慢話を始めるリリア。あぁ…もうおしまいだ。
「聖女は、ついにこの国を見限ったのか」
「いえ。私たちが追い出しました」
「お…追い出した?」
そうだよね。そんな顔になるよね!
帝国が、のどから手を出すほどの逸材だったらしいソニアを追い出したなんて知ったら。それも自分たちが、手に入れようと、はるばるここまで来たのに、とっくに追い出されたって知ったら… …知ったら?
「はははははは!!!こいつは、好都合!そうか、そうか…それは、手間が省けた!使えないやつだと思ったが、そんなことはないらしい」
「そ、そうですか!?えへへ。それほどでもぉ」
「行くぞ!聖女殿を迎えに行かなくては!これで、彼女も快くこちらに来てくれるだろう」
「へ?」
善は急げ。くるりと、こちらのことなど忘れたようにとっとと去っていく王子御一行。
「ま、まてっ!ソニアは、うちの聖女だぞ!」
「追い出したのだろう?それならば、もうどこの国のものではない」
「ち、違う!それは、こいつらが、勝手にやったことだ。私の意志ではない」
「王のくせに、聖女を守ることも出来ず、そこでふんぞり返っていたツケだな。これに懲りて、自身の子どもの躾の方法を見直すがいい。将来は、そいつがこの国の王になるのだろう?」
「な、なんだと…?王が聖女を守るわけがなかろうが!私は王だ!この国の王だぞ!」
「ああ。そうだ。お前は、王だ。しかし、忘れたか?国なくして王はありえん。王とは、国を維持するためだけに存在している。そして、聖女は、その国を守る存在。王一人いなくとも国は立っていられる…が、聖女なくして国は存在することもできない。それを忘れたか」
「なにを言っている?」
「皮肉なことだ。ずっと守られてきたから、忘れたか?結界が、なくなった後に残るものなど何もないことを」
「… …結界はなくなったりはしない。まだあるではないか」
「そうだな。よほど優秀な聖女だったらしい。立ち去ってもなお、残る結界。素晴らしい。あぁ…早く迎えに行かなくては。どこの輩に唾をつけられても腹が煮えわたる…おい」
「は、はい!」
リリアは、未だ自身がオスカーとともに帝国に行くのだと、勘違いしているらしい。
行くぞと声をかけられたと勘違いしたのか、オスカーの腕に絡みつき、それを面倒そうに振り払われ、べしゃりと床に転がった。
「で、殿下…?」
「お前、この国に家族はいるか?」
「は、はい…ですが、殿下と一緒であれば、置いていけます」
「ふん。家族すら捨てるか。そんな女が、聖女とはな…。よく聞け女。お前は、帝国には連れて行かない」
「え?じゃ、じゃあ、私はどうすれば」
「この国で聖女をすればいい」
「え?で、でも…私…」
「姉より自信があるのだろう?ならば、大丈夫だ。それにお前が守らずして、誰がこの国を守る?外の瘴気を知らないのか?」
「え…あぅ…で、でもぉ」
「リリア様…」
「な、なに…」
じりじりと兵士たちが、リリアに詰め寄る。
当たり前だ。命がかかっているのだから。
ここで、リリアまでいなくなってしまえば、この国は、あっという間に瘴気に包まれて、全滅するだろう。
「な…なによ…そんなに怖い顔して…で、殿下!」
「まぁ、頑張れ聖女。姉と同じような力を得たのであれば、また会うこともあるだろう」
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