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「聖女様。そんなにも長い旅なのですか」
「はい。もうここに帰ってくることはないのかもしれません」
「そんな…王子もどうしてそのようなことを…」
「安心してください。きちんと代わりの聖女はいるみたいなので。私より優秀らしいですよ」
「そうですか…。ですが、聖女様のことも心配です。魔物や盗賊に襲われたら、どうなさるのです」
「一応、戦えるから大丈夫です」
「野盗は、卑怯なやつらです。聖女様は、お国から出られたことがないから、分からないのでしょうが」
確かに箱入り聖女だから、その通りだけど、世間知らずと言われているようで、少々いらだつ。いや、世間知らずなのは、本当にその通りなんだけど。
「ですが、これは王子の命令なのです。どちらにしても、私は旅に出なくてはいけません。それにこれもよい機会です。外のことを勉強してまいります。武者修行です」
「ですが…。あぁ。この村にいてもらうというのは、どうでしょうか」
「それでは、この村が、国賊と呼ばれてしまうかもしれません。そんな危ない真似は出来ません」
「聖女様の後続の方は、本当に大丈夫なのですか?私たちの身の安全は確保されているのでしょうか」
「…王子のお墨付きですから、大丈夫でしょう」
「それが、心配なのです。まさか、一緒に遊んでいらっしゃると噂されている方ではないかと」
「… … …」
そのまさかです。
この村にも一応、王子と妹のことは知られているらしい。
まぁ、あれだけべたべたしていれば、見られているだろうし、人の口に戸は立てられぬともいう。
「とにかく次に戻ってくるのは、王の命令以外にありません。食料のおすそ分け感謝します。皆さんに幸あらんことを」
「待ってください。聖女様」
「まだなにか」
「せめて、結界だけでも張ってください。こう聖女様パワーで、聖女様がいなくても持つような便利な奴」
無茶言う。
「ご安心ください。一応、1ヵ月は持ちますから。もし、何かあってもほかの国が助けに来る時間はあるでしょう」
「そうでしたか!それでは、いってらっしゃいませ」
「…はい。いってきます」
現金なものねぇ。
まぁ、自分たちの命がかかっているのだから、仕方ないか。
それにしても、どうして妹は、今更になって聖女になりたいとか言い出したのかしら。それに私を追い出すなんて、なんだか妹らしくない。
まるで、私が邪魔者みたいな扱いじゃない。
今まで、やったこともない聖女の仕事をきちんと覚えているかもわからないのに。
国にいる聖女は、今や私と妹だけ。
これで、本当に妹に聖女が務まらなかったら、あの国は…。
…いえ。考えるのはよそう。
王子が、追い出したんだもの。
私に拒否権はないわ。…せめて、王に確認をすべきだったのかもしれない。
―ええい。もう知らん!
今まで、さんざんこき使われてきたんだ。こうなったら、好きに生きてやる!いいじゃない。妹は、聖女にふさわしいんでしょ!どうせ、私はブスで、デブな結界張ることしか能がないダメ女よ。
「はい。もうここに帰ってくることはないのかもしれません」
「そんな…王子もどうしてそのようなことを…」
「安心してください。きちんと代わりの聖女はいるみたいなので。私より優秀らしいですよ」
「そうですか…。ですが、聖女様のことも心配です。魔物や盗賊に襲われたら、どうなさるのです」
「一応、戦えるから大丈夫です」
「野盗は、卑怯なやつらです。聖女様は、お国から出られたことがないから、分からないのでしょうが」
確かに箱入り聖女だから、その通りだけど、世間知らずと言われているようで、少々いらだつ。いや、世間知らずなのは、本当にその通りなんだけど。
「ですが、これは王子の命令なのです。どちらにしても、私は旅に出なくてはいけません。それにこれもよい機会です。外のことを勉強してまいります。武者修行です」
「ですが…。あぁ。この村にいてもらうというのは、どうでしょうか」
「それでは、この村が、国賊と呼ばれてしまうかもしれません。そんな危ない真似は出来ません」
「聖女様の後続の方は、本当に大丈夫なのですか?私たちの身の安全は確保されているのでしょうか」
「…王子のお墨付きですから、大丈夫でしょう」
「それが、心配なのです。まさか、一緒に遊んでいらっしゃると噂されている方ではないかと」
「… … …」
そのまさかです。
この村にも一応、王子と妹のことは知られているらしい。
まぁ、あれだけべたべたしていれば、見られているだろうし、人の口に戸は立てられぬともいう。
「とにかく次に戻ってくるのは、王の命令以外にありません。食料のおすそ分け感謝します。皆さんに幸あらんことを」
「待ってください。聖女様」
「まだなにか」
「せめて、結界だけでも張ってください。こう聖女様パワーで、聖女様がいなくても持つような便利な奴」
無茶言う。
「ご安心ください。一応、1ヵ月は持ちますから。もし、何かあってもほかの国が助けに来る時間はあるでしょう」
「そうでしたか!それでは、いってらっしゃいませ」
「…はい。いってきます」
現金なものねぇ。
まぁ、自分たちの命がかかっているのだから、仕方ないか。
それにしても、どうして妹は、今更になって聖女になりたいとか言い出したのかしら。それに私を追い出すなんて、なんだか妹らしくない。
まるで、私が邪魔者みたいな扱いじゃない。
今まで、やったこともない聖女の仕事をきちんと覚えているかもわからないのに。
国にいる聖女は、今や私と妹だけ。
これで、本当に妹に聖女が務まらなかったら、あの国は…。
…いえ。考えるのはよそう。
王子が、追い出したんだもの。
私に拒否権はないわ。…せめて、王に確認をすべきだったのかもしれない。
―ええい。もう知らん!
今まで、さんざんこき使われてきたんだ。こうなったら、好きに生きてやる!いいじゃない。妹は、聖女にふさわしいんでしょ!どうせ、私はブスで、デブな結界張ることしか能がないダメ女よ。
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