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「あの人は」
「あいつは、うちが、抱えている術師だ。聖女だけではなく、帝国の卵たちに魔法の指導や教育にも力を入れていてな」
「ああ。それで…」

ずいぶんと教育熱心な人だな。
だから、こちらの話に食いついてきたのか。
でも、なおさら私の話なんて、聞いても楽しくなんてないのではないだろうか。
帝国のお抱え魔法使いなんて、とんでもない実力者だろうし。
…教育者にしては、やけに目がギラギラしているのが、気になるけど。
魔法使いというのは、研究者という側面があるから、勉強には熱心な人がいるから、そのタイプかもしれない。
こんな田舎の聖女の魔法事情まで、知りたがるなんて、勉強熱心だな…。

「話を戻そうか。魔力検知を取得したのは、いつごろだ?それとも血筋か?聖女殿の両親は、魔法に長けている一族なのだろうか」
「い、いえ…。うちは、そんな魔法使いを輩出したことは一度もなくて。だから、私と妹が、聖女としての才能が現れたことに、とても驚いて…」

妹は、かわいいから、聖女にピッタリね!なんて、笑っていた両親を思い出す。
私の時は、これで食い扶持に困らないわねなんて、笑っていたけど。この時、両親が笑っていたのは、私の将来の面倒を見なくて済むのと、自分たちが、将来安定しているからだということに気づいたのは、少し後だった。
聖女という職業は、国のために働く職業であることと、その希少性から、高いお給料と国からの支援がされるから、うちは、平民にも関わらず、ずいぶんと良い暮らしをしていた。
だからこそ、ほかの平民の子からは、あまり良い目で見られなかったのだけど。

―あそこは、いいわね。何もしなくてもいいんだもの。

何もしなくていいのは、両親だ。妹だ。
おかげで、私は…。

「聖女殿?」
「あ、すみません。少し、疲れが…」
「ああ。すまない。こちらこそ、色々と聞いてしまったからな。おい、お茶の用意を」

お茶なんか、飲まなくていいから、早く帰らせてくれないかな。
それと殿下も自分の国に帰ってくれないかな。

「妹も聖女だそうだな」
「はい。私なんかより、よほど優秀です」
「ほお」

殿下が、目を輝かして身を乗り出した。

「あなたより優秀なのか。それは、よほど力に優れているのだな。具体的に聞いても?」
「…妹は、ろくに修行をしていません。ですが、その身に秘めている才能は、私なんかより、よほどすごいと思います」
「…なぜわかる」
「だって、みんなそう言うから」

可愛くて、聖女としての才能もあって、みんなから愛されているんだもの。
それに、

「それに妹が、5歳のころ結界を張ることが出来たんです」
「それで?」
「私が、5歳の時は、結界なんて張ることできなかった。ずいぶんと苦労して、今の大きさまで、張れるようになれただけなんです」
「ふむ。…それでは、今の妹君は、もっと大きな結界が張れると?」
「はい。修行しなくても、張れたんです。きっと、今だって、張れるのでしょう」
「… … …」
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