聖女の仕事なめんな~聖女の仕事に顔は関係ないんで~

猿喰 森繁

文字の大きさ
上 下
15 / 47

15

しおりを挟む
「そうだな。何か食べるか?お腹がすいているのではないか?聖女殿は、連日働きづめと聞く」
「… … …」

胃が、ストレスで痛い。
こんな状態で、ご飯なんて食べれたものじゃない。

「どうした。俺と一緒に食事はできないか」
「い、いえ。滅相もありません。ありがたく頂戴します」
「そうか。…おい」
「はっ」

そばに控えていた男性が、俊敏に部屋から、出ていく。
ああ…、あんまり豪勢なものじゃなければいいな。こう胃に優しいスープとかでいい。なんなら、水でいい。

「ところで、聖女殿。聞きたいことがあるのだが」
「あ、はい。なんでもどうぞ」
「魔力紋の検知についてだが、」

笑顔だ。それなのに怖い。眼光が鋭く光っている。
周りの人間も、どこか緊張感を漂わせている。
なんだろう。この圧は。
魔力紋の検知なんて、それほど大したものではないだろうに。

「持続時間。再度、発動するときに必要な期間。範囲。そのほか諸々、教えてほしい」
「わかりました」

「持続時間については、正直限界まで使ったことがないのでわかりません。最大24時間使用したことはあります」

一瞬、部屋がざわついた。
私は、ざわついたわけが分からずに、ぼそぼそと話している人たちを見た。

「騒ぐな」

殿下の一声に部屋が、一瞬で静まり返る。
なんなの。こっちとしては、そっちも話してもらっていたほうが、緊張しないで済むんだけど。

「すまんな、聖女殿。騒がしくして」
「いえ」
「それで、限界まで使うとしたら、どれくらい行ける?」
「… … …」

魔法が発動している間は、眠れない。
だから、言いかえれば、眠らずに魔法をいつまで使えるか、という質問になる。
回復魔法を使えば、一応、魔力が尽きるまで起きていることが出来る。
だけど、最近は、魔力が尽きるまで、魔法を使ったことがないから、わからない。
うーん…。正直に答えてもいいんだけど…。

「3日です」
「…では、次に再度発動するときに必要な期間は?」
「期間?」
「ああ。準備がいるだろう」
「準備?魔力が回復すれば、すぐにいけますよ」
「…ほう」
「ま、魔力回復に必要な日数は?完全回復まで、どれくらいかかりますか?」

知らないおじさんが、詰め寄ってくる。
思わず、私は体を引いてしまった。
え、誰?この人。

「どれくらいですか」
「…えーっと…6時間もあれば?」

まぁ、最近は完全回復なんて、待った試しがないけど。


「6時間!」
「…帝国の聖女より、遅いのでしょうか」
「3日、魔法を発動し続けて、6時間で回復するなら、早いほうだろう。それより、いつ俺が、前に出ることを許した?」
「も、申し訳ございません…。ですが、聖女殿にどうしても」
「俺は、いつお前に口を出していいと許した?」
「… … …」

えぇ。
雰囲気悪っ…。
なんなの。
一応、後ろにおじさん下がったけど。顔が、怖い。ずっと私を見てるんだけど、え?なにかした?
ってか、殿下にあんなこと言われても、反省した顔を見せないおじさん、すごいな。心なしか、ギラギラとした目で、私のことずっと見てるし。
怖っ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

王女、豹妃を狩る

遠野エン
ファンタジー
ベルハイム王国の王子マルセスは身分の差を超えて農家の娘ガルナと結婚を決意。王家からは驚きと反対の声が上がるが、マルセスはガルナの自由闊達な魅力に惹かれ押し切る。彼女は結婚式で大胆不敵な豹柄のドレスをまとい、周囲をあ然とさせる。 ガルナは王子の妻としての地位を得ると、侍女や家臣たちを手の平で転がすかのように振る舞い始める。王宮に新しい風を吹かせると豪語し、次第に無茶な要求をし出すようになる。 マルセスの妹・フュリア王女はガルナの存在に潜む危険を察知し、独自に調査を開始する。ガルナは常に豹柄の服を身にまとい人々の視線を引きつけ、畏怖の念を込めて“豹妃”というあだ名で囁かれるのだった。

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。 しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。 そして、リーリエルは戻って来た。 政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

処理中です...