4 / 47
4
しおりを挟む
なんといったこの王子。
「私がこの国から出ていって、次の聖女はどうされるのですか」
「適任者がすぐそばにいるじゃないか」
「ま、まさか…」
王子の隣で、にこにこと微笑んでいる妹を見た。
「まさか妹…ですか」
「彼女の方が、聖女にふさわしい」
「いや…いやいやいや…妹は、ろくに訓練をしていないんですよ!?いきなりは無理です」
「そんなことはない!」
「根拠は?」
「彼女は、癒してくれる」
「?」
「彼女の笑顔を見ると、皆が癒される」
「私は、妹が聖女にふさわしいという根拠を聞いているんですけど」
「彼女は美しい」
「それは認めます」
「だから、聖女にふさわしい」
頭わいてんのか?
聖女の仕事は、アイドルなんかじゃないんだぞ。
顔は、関係ない。あるのは、ただひたすら職務を全うすることに対する義務感か、自己献身だ。
甘やかされた彼女に出来るはずがない。
「そもそも貴方は聖女になることをあれだけ嫌がっていたではありませんか」
「昔の話です」
「聖女の仕事は、苦しいですよ」
「承知の上です」
何が目的なのかしら。
お金?…それは、ないか。私が使い切れない分のお金を渡しているし、そもそも王子やら貴族の子息やらから多額の貢物をされていると聞く。
だから、お金には、困っていないはず。
にこやかな笑顔を浮かべている妹の顔を凝視してみるも、なにも読み取れない。それもそうか。彼女とは、ろくに話をしてこなかったのだから。聖女の修行で、家族ともろくに顔をあわせていない。
そういえば、娘が倒れたというのに、結局誰も見舞いに来なかったな。
「今度の土曜日、聖女の就任式を行う。それまでには、荷物をまとめておくように」
「いくらなんでも急すぎませんか。仕事の引継ぎもろくに出来ないじゃありませんか」
「必要ない」
「ひ、必要ない!?」
聖女の仕事をろくにしたことがない妹のことだ。きっと仕事のことで、支障が出るに決まってる。聖女の仕事は、国の命がかかっている。だから、適当なことは許されない。
「必要です!聖女の仕事は、楽じゃありません!」
「だが、君は公園で寝ていた」
「あれは疲れていたんです」
「いや。君は昼寝が出来るほど、暇を持て余していたんだ」
「私の生活リズム知らないから、そう言えるんです!聖女の仕事は、過酷です」
「倒れるくらいにはか?」
「そうです」
倒れた理由が、疲労困憊なのは知っているだろう。
寝る間も惜しんでこの国を守ってきたのだ。
だというのに、心底軽蔑してますという顔で見てくる王子は、どういうつもりだ。
「な、なんですか」
「君は、嘘をついている」
「は、はい?」
「君は、夜遅くまで起きているそうじゃないか」
「そうです」
そもそも仕事が終わるのが遅い。
残業?なにそれ。って感じ。
「君は、遅くまで遊んでいるんだろう」
さっきから、断言してくるけど、この人、私のこと何も知らないんだな。
「私がこの国から出ていって、次の聖女はどうされるのですか」
「適任者がすぐそばにいるじゃないか」
「ま、まさか…」
王子の隣で、にこにこと微笑んでいる妹を見た。
「まさか妹…ですか」
「彼女の方が、聖女にふさわしい」
「いや…いやいやいや…妹は、ろくに訓練をしていないんですよ!?いきなりは無理です」
「そんなことはない!」
「根拠は?」
「彼女は、癒してくれる」
「?」
「彼女の笑顔を見ると、皆が癒される」
「私は、妹が聖女にふさわしいという根拠を聞いているんですけど」
「彼女は美しい」
「それは認めます」
「だから、聖女にふさわしい」
頭わいてんのか?
聖女の仕事は、アイドルなんかじゃないんだぞ。
顔は、関係ない。あるのは、ただひたすら職務を全うすることに対する義務感か、自己献身だ。
甘やかされた彼女に出来るはずがない。
「そもそも貴方は聖女になることをあれだけ嫌がっていたではありませんか」
「昔の話です」
「聖女の仕事は、苦しいですよ」
「承知の上です」
何が目的なのかしら。
お金?…それは、ないか。私が使い切れない分のお金を渡しているし、そもそも王子やら貴族の子息やらから多額の貢物をされていると聞く。
だから、お金には、困っていないはず。
にこやかな笑顔を浮かべている妹の顔を凝視してみるも、なにも読み取れない。それもそうか。彼女とは、ろくに話をしてこなかったのだから。聖女の修行で、家族ともろくに顔をあわせていない。
そういえば、娘が倒れたというのに、結局誰も見舞いに来なかったな。
「今度の土曜日、聖女の就任式を行う。それまでには、荷物をまとめておくように」
「いくらなんでも急すぎませんか。仕事の引継ぎもろくに出来ないじゃありませんか」
「必要ない」
「ひ、必要ない!?」
聖女の仕事をろくにしたことがない妹のことだ。きっと仕事のことで、支障が出るに決まってる。聖女の仕事は、国の命がかかっている。だから、適当なことは許されない。
「必要です!聖女の仕事は、楽じゃありません!」
「だが、君は公園で寝ていた」
「あれは疲れていたんです」
「いや。君は昼寝が出来るほど、暇を持て余していたんだ」
「私の生活リズム知らないから、そう言えるんです!聖女の仕事は、過酷です」
「倒れるくらいにはか?」
「そうです」
倒れた理由が、疲労困憊なのは知っているだろう。
寝る間も惜しんでこの国を守ってきたのだ。
だというのに、心底軽蔑してますという顔で見てくる王子は、どういうつもりだ。
「な、なんですか」
「君は、嘘をついている」
「は、はい?」
「君は、夜遅くまで起きているそうじゃないか」
「そうです」
そもそも仕事が終わるのが遅い。
残業?なにそれ。って感じ。
「君は、遅くまで遊んでいるんだろう」
さっきから、断言してくるけど、この人、私のこと何も知らないんだな。
75
お気に入りに追加
2,173
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される
沙寺絃
恋愛
女子高生のエリカは異世界に召喚された。聖女と呼ばれるエリカだが、王子の本命は一緒に召喚されたもう一人の女の子だった。「 聖女は二人もいらない」と城を追放され、魔族に命を狙われたエリカを助けたのは、銀髪のイケメン騎士フレイ。 圧倒的な強さで魔王の手下を倒したフレイは言う。
「あなたこそが聖女です」
「あなたは俺の領地で保護します」
「身柄を預かるにあたり、俺の婚約者ということにしましょう」
こうしてエリカの偽装結婚異世界ライフが始まった。
やがてエリカはイケメン騎士に溺愛されながら、秘められていた聖女の力を開花させていく。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる