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2章

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「あの…」

私が声をかけると、神官たちは私のほうに一斉に振り返った。
その顔は、どこか不機嫌そうで、私が声をかけたことにより、水を差されたといったような顔をしている。

「なにか?」
「え?呼んだのはあなたたちですよね?」
「ええ。まぁそうですが」

その反応に私は驚く。
人を訳も分からない場所に呼んでおいて、この反応は何なんだろう。
まさか、彼らが声をかけるまで私に黙っていろとでも言いたいのだろうか。

「ここは、どこですか?なぜ、私はここにいるのですか?」
「ここはエレンダウム。古くから聖女と女神が守る神聖な王国です」

通りで、あちらこちらに女性の絵やら彫刻やらがあるわけだ。
それにしては、女性の扱いがどうにも雑だが。
国の名前は、まったく聞いたことがない。
国の名前は、英語っぽいが、話している言葉は日本語に聞こえる。

「それで、私はどうしてここに呼ばれたのですか?」
「……はぁ」

イラっとしたようにため息をつかれたが、イラっとするのはこちらのほうだ。
私は、さっきの彼らの発言から察するに聖女とやらの召喚儀式の関係で、この世界に連れてこられたらしい。
もう、ここは異世界だろう。
でなければ、色々と状況に説明がつかない。
魔法が存在したのか、だとか、私が聖女だなんて信じられない、だとかは置いておくことにする。

「それは、私たちが呼んだのです」
「困ります」
「はぁ?」

私が、はっきりというと、彼らは露骨に馬鹿にしたような見下したような顔をした。
何言ってんだ、この馬鹿女。とでも言いたそうだ。
呼んだくせに失礼だし、普通の相手の同意が必要だってことをこの人たちは、知らないんだろうか。この世界に常識はないのか。

「困るってなにが」
「聖女は、神聖で尊いものだというのに、この女は何を言ってるんだ?」
「異世界から来たんだ。物を知らなくて当然だ」
「それにしても、異世界の女はみなブスなのか。なんだ。あの髪の色に、目もまるで濁った泥水だ。気持ちが悪い」
「顔もどうしてあんなにものっぺりとしているのだ。あれでは畜生のほうが、まだ可愛げがある」

言いたい放題である。
確かに彼らの顔は欧米顔というか。
目鼻立ちがはっきりしているから、私の顔は見慣れないものなのかもしれない。
それにしても人の容姿を馬鹿にするなんて。
異世界でも当たり前のように容姿至上主義なんだな。差別は存在するらしい。

「不満があるなら、元の世界に返してくれませんか?」
「そんなことできるわけがないだろう」
「呼んだのに、返すすべはないと?」
「当たり前だ。聖女を嫌がる女なんて存在しない」
「ここにいます」

私が、あまりにも反抗的な態度をするものだから、彼らもだんだんと苛立ちを隠さなくなってきた。「ブスが」「お前なんて、元の世界にだって居場所はないくせに」だの、人権すら感じさせない。

本当にここは異世界なのだ。
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