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1章
8.5
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私たちは、聖女が抜けた穴埋めとして回復、補助魔法専門の白魔術師を雇うことにした。
「私はニーナ。こっちは弟のフェル。よろしくね」
「…どうも」
陰気な男だ。本当に姉弟なんだろうか。と疑ってしまうくらい似ていない。
姉のニーナは、清純な美しさを持っていた。綺麗に整えられた金髪が、彼女の華奢な体を優しく包んでいる。透き通るような肌と、健康的な赤みを帯びた唇が、彼女の顔に色を添えている。そして、彼女の胸は、ふくらみがありながらも優しく柔らかなラインを描いていた。彼女が立っていると、周囲の空気まで清らかに感じられるような、清純で美しい雰囲気を醸し出していた。
ニーナが、着ている真っ白なローブもよく似合っていた。ローブは、軽くて柔らかな素材で、彼女の体にフィットしていて、顔に似合わない豊満な肉体が服越しでも、よくわかった。ローブは襟元から広がっており、ウエストで絞られている。そこからフレアになったスカートが広がっており、足元まで優雅に落ちていた。
ベールは、彼女の髪の毛を覆うようにかぶせられ、白い輝きを放っている。ベールは、透け感のある素材で作られており、彼女の顔を覆っていた。しかし、彼女の美しさはベールを通しても明らかで、彼女の魅力をさらに引き立てている。
ニーナの服装は、まるで花嫁のように可憐であり、清楚な美しさを演出している。そして、彼女が持つ癒しの力と合わせて、周りの人々をやさしく包み込むような存在感を放っていた。
どっかの酒狂いの聖女に比べて、よほどニーナのほうが聖女らしい。
ニーナに、私は聖女なの、と言われたら、簡単に信じてしまうだろう。それくらい私にとってニーナは魅力的だった。
おそらく、ガレスもそう思っているに違いない。
ニーナの顔を見て、だらしなく鼻を伸ばしているのだから。
……それに比べて弟のほうは。
陰気で、不気味に口角を上げ、軽薄そうに笑っているその顔を見るたびに、苦々しい気持ちになる。弟の前髪はだらりと伸びていて、顔を完全に覆っているため、表情が分からないため、弟への不快感は募るばかりだ。
こんな男が彼女の弟であることには、どうしても納得がいかなかった。この男の前髪が目元を覆っているのも、きっと素顔がぶさいくであることを隠すためなのだろう。そんな陰鬱な男と、これから旅を続けるのは私自身も自信が持てなかった。
美少女のニーナは、いつも輝いているように見えた。しかし、弟の陰気で醜悪な容姿は、美少女の姉の優雅な姿と対照的で、つまらなくて目障りだった。弟の浮浪者のような服装は、美少女のニーナと比べると、まるでゴミのように見えた。彼女に近づくことができるのは、あくまで彼女の弟というだけで、その存在自体が無価値なものに感じられるのだ。
―まぁ、いざとなったら酒狂いの聖女と同じように、パーティーから追い出せばいいさ。
きっとニーナだって、旅をしていたら、私の魅力に気づいて、気持ち悪い弟を切ってくれるだろう。
私は、そう信じて疑わなかった。
なんて言っても、私たちは「選ばれし勇者パーティー」であり、私は「選ばれし勇者」なのだから。
「私はニーナ。こっちは弟のフェル。よろしくね」
「…どうも」
陰気な男だ。本当に姉弟なんだろうか。と疑ってしまうくらい似ていない。
姉のニーナは、清純な美しさを持っていた。綺麗に整えられた金髪が、彼女の華奢な体を優しく包んでいる。透き通るような肌と、健康的な赤みを帯びた唇が、彼女の顔に色を添えている。そして、彼女の胸は、ふくらみがありながらも優しく柔らかなラインを描いていた。彼女が立っていると、周囲の空気まで清らかに感じられるような、清純で美しい雰囲気を醸し出していた。
ニーナが、着ている真っ白なローブもよく似合っていた。ローブは、軽くて柔らかな素材で、彼女の体にフィットしていて、顔に似合わない豊満な肉体が服越しでも、よくわかった。ローブは襟元から広がっており、ウエストで絞られている。そこからフレアになったスカートが広がっており、足元まで優雅に落ちていた。
ベールは、彼女の髪の毛を覆うようにかぶせられ、白い輝きを放っている。ベールは、透け感のある素材で作られており、彼女の顔を覆っていた。しかし、彼女の美しさはベールを通しても明らかで、彼女の魅力をさらに引き立てている。
ニーナの服装は、まるで花嫁のように可憐であり、清楚な美しさを演出している。そして、彼女が持つ癒しの力と合わせて、周りの人々をやさしく包み込むような存在感を放っていた。
どっかの酒狂いの聖女に比べて、よほどニーナのほうが聖女らしい。
ニーナに、私は聖女なの、と言われたら、簡単に信じてしまうだろう。それくらい私にとってニーナは魅力的だった。
おそらく、ガレスもそう思っているに違いない。
ニーナの顔を見て、だらしなく鼻を伸ばしているのだから。
……それに比べて弟のほうは。
陰気で、不気味に口角を上げ、軽薄そうに笑っているその顔を見るたびに、苦々しい気持ちになる。弟の前髪はだらりと伸びていて、顔を完全に覆っているため、表情が分からないため、弟への不快感は募るばかりだ。
こんな男が彼女の弟であることには、どうしても納得がいかなかった。この男の前髪が目元を覆っているのも、きっと素顔がぶさいくであることを隠すためなのだろう。そんな陰鬱な男と、これから旅を続けるのは私自身も自信が持てなかった。
美少女のニーナは、いつも輝いているように見えた。しかし、弟の陰気で醜悪な容姿は、美少女の姉の優雅な姿と対照的で、つまらなくて目障りだった。弟の浮浪者のような服装は、美少女のニーナと比べると、まるでゴミのように見えた。彼女に近づくことができるのは、あくまで彼女の弟というだけで、その存在自体が無価値なものに感じられるのだ。
―まぁ、いざとなったら酒狂いの聖女と同じように、パーティーから追い出せばいいさ。
きっとニーナだって、旅をしていたら、私の魅力に気づいて、気持ち悪い弟を切ってくれるだろう。
私は、そう信じて疑わなかった。
なんて言っても、私たちは「選ばれし勇者パーティー」であり、私は「選ばれし勇者」なのだから。
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