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1章
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「お客さん。起きてください。宿代そろそろ払ってくれないと、憲兵を呼びますから」
「……」
重たい頭をなんとか覚醒させる。
寝直せば寝直すほど、倦怠感がすさまじい。
体を起こしても抜けない眠気に頭を振って、なんとかごまかすも、重たい頭がすっきりすることはない。
横に置いてある財布に手を伸ばし、お札を数えた。
とりあえず、こいつ本当に金払う気あるのかと疑っている宿屋の主人に、一足早く出て行ったあいつらの分も含めて多めに金を渡した。
「ほほっ♡…まぁ、出してくれるなら、こっちも文句はありませんがね。なんだったら延長でもいいですけど」
「……これから支度しますから」
「あら残念」
この世界は、客が女だろうが問答無用で客の部屋に入ってくるんだから、驚きだ。
日本では考えられない。
―こういうところが異世界なんだよな…。
もそもそと着替えながら、改めて実感する。
一応、客の財布に勝手に手を出さないだけマシなのかもしれないが。
オークが、冒険者の装備を身に着けていたから、その分の割り増しをあって、財布はまだまだ暖かい。
国の補助金がもらえると言っても、私はあまり国の援助を受けていなかった。
あの人たちは、文句をずっと言っていたけど、こちらにもこちらの事情というものがあるのだ。
あの人たちが勝手に申請して、お金をもらっていたらしいが。
それで、神官からグチグチと文句を言われていることもあの人たちは知らないんだろうけど。
着替えながら、思ったより自分が臭いことに気づく。
大衆浴場にも行かないと。
この世界に風呂という概念があるのは、助かった。ファンタジーっぽい世界は、なんとなく中世のヨーロッパみたいな不衛生な感じがしたけど、この世界では魔法が発達しているから、そのせいもあるのかもしれない。不衛生ゆえの疫病もあまり聞いたことがないから、そこは安心だ。
風呂に入れば、ある程度は頭もすっきりするだろう。
「あ。あの人たちにお金渡しておけばよかったな。どうせ国からの援助金は断れるだろうし、かわいそうなことしたかもなー」
まぁ。
オークは無理かもしれないけど、多少のザコを狩れば小金にはなるだろうけど。
彼らは、自分たちが「選ばれし勇者パーティー」だと思っているが、本当は違う。
国に適当に選ばれ、用意された、ただの冒険者だった。
自分たちは選ばれし者だという自信を壊すのはかわいそうだからという理由で、何にも言わなかったが。
これは、本当にかわいそうなことをしたかもしれない。
「……」
重たい頭をなんとか覚醒させる。
寝直せば寝直すほど、倦怠感がすさまじい。
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横に置いてある財布に手を伸ばし、お札を数えた。
とりあえず、こいつ本当に金払う気あるのかと疑っている宿屋の主人に、一足早く出て行ったあいつらの分も含めて多めに金を渡した。
「ほほっ♡…まぁ、出してくれるなら、こっちも文句はありませんがね。なんだったら延長でもいいですけど」
「……これから支度しますから」
「あら残念」
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一応、客の財布に勝手に手を出さないだけマシなのかもしれないが。
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それで、神官からグチグチと文句を言われていることもあの人たちは知らないんだろうけど。
着替えながら、思ったより自分が臭いことに気づく。
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まぁ。
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彼らは、自分たちが「選ばれし勇者パーティー」だと思っているが、本当は違う。
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