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1章
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鬱蒼とした木々が生い茂る森は、先が見えないほどの闇に包まれていた。聖女である私は、加護効果で魔物が近づいてくれば、気配を察知できるのに対して、加護を持っていない仲間たちは、いつ木の影から魔物が飛び出してくるか分からない緊張があるらしい。魔物の鮮血をまき散らしながら戦っていた。
「女神の加護を宿した我が身に、敵の邪悪なる行いを止める魔法を授けたまえ。この地に聖なる力を注ぎ、敵を麻痺させん。不動の刻印よ、現れよ! ホーリーパラライズ!」
私は、敵を麻痺させ、一時的に動けない状態にする範囲魔法をかけた。
これで、一番厄介なオークも周囲にたくさんいるスライムを邪魔されることなく倒すことが出来る。
前衛では、剣士のソレイユと戦士のガレスが戦っている。彼らは縦横無尽に動き回りながら、次々と襲いかかる魔物を撃退していく。
攻撃魔法使いのミアが、いち早く麻痺魔法がとけたスライムが忍び寄っていることに気付き、魔法を放つためにガレスに声をかけた。
「ファイヤーボールを打つから、横に避けて!」
その言葉に反応して、ガレスは素早く横に飛んだ。その直後、ミアが放った火球が飛んできた。スライムは火球を避ける余裕もなく、一瞬で蒸発して消えてしまった。
「いい感じだな!このままいけば、あの魔物を倒せる!」
ガレスは、前方に立ちはだかるオークを睨んだ。オークは、中ボスとしてその巨躯を誇示している。オークは私の麻痺魔法がようやくとけたらしい。そうとう怒っているようで、私たちに向かって咆哮した。その声は、力強く森の中に響いた。
―早くオークを倒し、この森を抜けなくては…。
オークの咆哮は、ほかのオークやゴブリンを呼び寄せるのだ。
一体でも、面倒なのに他のオークやゴブリンを呼ばれては困る。
「なにより、早くお酒が飲みたいのよね…」
「これだからアル中は」
私のつぶやきをミアが聞き取り、悪態をついた。
オークの顔には無数の傷があり、歴戦の魔物であることが分かる。鎧や装備は、オークが倒した冒険者から奪ったものだ。いっちょ前に装備した者の攻撃力や敏捷性を高める魔法具まで身に着けている。斧は、かつては、鋭い刃を持っていただろうが、戦いの激しさによって刃こぼれしていた。斧の柄も血にまみれ、どす黒くなっている。
オークの体は、たくましく筋骨隆々であり、筋肉の盛り上がりから、人間よりも凄まじいパワーを持っていることがうかがえる。瞳は、凶暴さが滲み出ており、それがオークの力を象徴しているようにも見える。オークは戦うことを愛し、自分が最強であることを示すことが何よりも大切だと思っているからだ。
「女神の加護を宿した我が身に、敵の邪悪なる行いを止める魔法を授けたまえ。この地に聖なる力を注ぎ、敵を麻痺させん。不動の刻印よ、現れよ! ホーリーパラライズ!」
私は、敵を麻痺させ、一時的に動けない状態にする範囲魔法をかけた。
これで、一番厄介なオークも周囲にたくさんいるスライムを邪魔されることなく倒すことが出来る。
前衛では、剣士のソレイユと戦士のガレスが戦っている。彼らは縦横無尽に動き回りながら、次々と襲いかかる魔物を撃退していく。
攻撃魔法使いのミアが、いち早く麻痺魔法がとけたスライムが忍び寄っていることに気付き、魔法を放つためにガレスに声をかけた。
「ファイヤーボールを打つから、横に避けて!」
その言葉に反応して、ガレスは素早く横に飛んだ。その直後、ミアが放った火球が飛んできた。スライムは火球を避ける余裕もなく、一瞬で蒸発して消えてしまった。
「いい感じだな!このままいけば、あの魔物を倒せる!」
ガレスは、前方に立ちはだかるオークを睨んだ。オークは、中ボスとしてその巨躯を誇示している。オークは私の麻痺魔法がようやくとけたらしい。そうとう怒っているようで、私たちに向かって咆哮した。その声は、力強く森の中に響いた。
―早くオークを倒し、この森を抜けなくては…。
オークの咆哮は、ほかのオークやゴブリンを呼び寄せるのだ。
一体でも、面倒なのに他のオークやゴブリンを呼ばれては困る。
「なにより、早くお酒が飲みたいのよね…」
「これだからアル中は」
私のつぶやきをミアが聞き取り、悪態をついた。
オークの顔には無数の傷があり、歴戦の魔物であることが分かる。鎧や装備は、オークが倒した冒険者から奪ったものだ。いっちょ前に装備した者の攻撃力や敏捷性を高める魔法具まで身に着けている。斧は、かつては、鋭い刃を持っていただろうが、戦いの激しさによって刃こぼれしていた。斧の柄も血にまみれ、どす黒くなっている。
オークの体は、たくましく筋骨隆々であり、筋肉の盛り上がりから、人間よりも凄まじいパワーを持っていることがうかがえる。瞳は、凶暴さが滲み出ており、それがオークの力を象徴しているようにも見える。オークは戦うことを愛し、自分が最強であることを示すことが何よりも大切だと思っているからだ。
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