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本編

【花姫視点】この気持ちの、名前。

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 司と『でぃーぷきす』を交わすようになって、数日が経った。

「さ、花姫様……」
 差しだされた手を、少し緊張しながらもとる。

 これはやはり、とんでもなくいけないことをしているのではないか――だって、おかしな気持ちになるのじゃ。

 でも、なぜだか拒むことはできなかった。

 いつもの余裕は薄らぎ、わらわを抱きすくめ、まるで中を貪るように舌をうごめかす司。

 この麗しいひとが、飽き足りるまで。――もう要らない、と泣きわめいたって。
 満たして満たして、満たしつくしたい。

 そこまでで、はっ、と我に返る。
 ――わらわは今、なにを考えた……? これは、もしかして……。
 いや、まさか。わらわの知っている『あの感情』は、ここまで。
 にがくて、くるしいものではないはず――。

「んう、ぅ!」
 そのとき、司にわらわの舌を強く吸われた。なんだか痺れるみたいにが止まらない。
 息を乱した司が、射抜くような瞳でわらわをていた。
「……、余所事よそごと、考えてたでしょ? ダメだよ。今はこれだけ。僕とのことだけでいい――」
 そしてまた、始まる行為。
 よくわからないけれど、涙が出る。
 こわいくらい、きもちいい――。

 彼の熱に、溺れていった。
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