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第二章 新たなる出会い

14 相棒が頼もしい、4階層ダンジョンあっという間に攻略

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家の子ライオンたちの成長が早い。もうミルクを卒業して離乳食を食べている。
離乳食と言っても猫缶だ。大量に食べる。
もともと成猫ライオンになれば、ダンジョン内の力をエネルギー変換できるため食事を必要としないらしいが、子供のうちは食べ物からエネルギーを取るらしく、ダンジョン内の何階層かにいる小型・大型獣などを食べるらしい。はやくレベル上げをして階層攻略しないと食欲に追いつけなくなり、家の牛と鶏たちが危険だ。

今日から4階層に行くことにした。俺も初めての階層なので緊張する。




4階層だ。



4階層は、テレビでよく見るアフリカの大草原のようだった。
壁や仕切りや木は見当たらない。とにかく何もない広い草原だった。
レオとライヤが先に迷うことなく進んでいく。俺は二人の後をついていく。
10分くらい走ると遠くに陽炎かげろうのように揺らめく影が見えた。


『魔物がいるよ。』



レオが言った。俺の視力はレベルのおかげで5Km先も見えるようになっていた。
目をこらしてみると、そこには5mくらいのりんごの木が歩いている。
見た目は赤いリンゴを実らせた木なのだが、足のような根っこで移動しているのだ。
なんだが、ゲームに出てくるキャラクターを連想させる。


呆けている俺を置いて、レオとライヤがものすごいスピードで駆け出し、ふたりは爪攻撃の一撃で木の魔物を倒した。
倒されたリンゴの木は、実のっていたリンゴを全部地面におとすと光の粒子をだしながら縮んでいった。
すると手のひらサイズの若木となり、地面に根付いた。


どうやら4階層モンスターは木の魔物のようだ。


俺は、落ちたリンゴを全部拾い収納した。
地面をよく見るとところどころに若木が生えている。
すごい、この若木踏まれそうになると器用によける。



俺がリンゴを拾っている間、レオとライヤはリンゴを転がし遊んでいた。
「食べ物で遊んでダメ。」と注意しようとしたら一口でかじり食べた。
ふたりの成長は思っているより早そうだ。




また、先に進む。
しばらく行くと、柿とみかんの木が見える。
やはり移動しうごいているが、このふたつはお互いに自分の身(実)を投げつけ、相手の身(実)を落としあっている。
移動したあとには、みかんと柿が落ちている。
どうやら、仲が悪いようだ。
俺がまたも呆けている間に、レオとライヤが向かっていき、あっさりと一撃で倒した。
ふたつの木は縮むと、若木となりその場に根付いていた。
ひたすらドロップした大量の柿とみかんを俺は拾った。



「こらこら、そこの子ライオンたち、食べ物で遊んではいけません。」


今度は注意できた。





気づくと4階層にきてから、戦いはレオとライヤで、俺はひたすらドロップした実を拾い集めるだけだった。
さすがに、ブルーベリーや木苺などの小さい実の収集は、最初の一本分だけで面倒なのであきらめた。
4階層木のモンスターの種類豊富だ。ゆず、かりん、桃、栗と次々とでてくる。



途中、3メートルくらいの梅の木が根付いていたが、ちょうど根っこが地面から次々とでてきて、動き出すところを見た。
ある程度大きくなると、ああして根っこを土からだし、移動するようになるのか。さすが、ダンジョンのモンスター




進むと今度は、サクランボの木が5本、カボスの木が8本相対していた。
仲が悪いのか、まるで合戦の前のように睨み合っているように見える。
これまた、うちの子たちが飛び出してあっという間に倒し、あとには大量のさくらんぼとカボスが残った。
拾うのが面倒だな。


『パパ、ぼく手伝うよ。』


レオが言うと、小さな竜巻が起こり、実を巻き込みながら、周りを一周すると実の山ができていた。
これは、風魔法の応用だな。うちの子天才か!



「すごいなレオ。魔法使えるようになったのか?」


『うん、レベルが上がると使える魔法も増えてきた。』



青い目を、きらきらさせながら俺を見つめてくる。
うちの子は天才の上、超可愛い。



『パパ、見てみて。』


ライヤがそばに来て話しかけてきた。
すると、淡く光り出すと縮んでいく。そして普通の猫のサイズに変化した。


「おお、すごいぞライヤ。もう、変化できるようになったのか。」


『うん。』



おもわず抱き上げて、すりすりしてしまった。
びっくりしたのか赤い瞳をめいっぱい開くと、恥ずかしそうにしている。
気が抜けないダンジョンの中だが、仲間といるとほっとしてしまうのはしかたがない。
だってうちの子たち、最高の相棒なんだから。





とにかくダンジョンの探索を続ける。
4階層の木の魔物は種類ごとに敵対しているときが多い。木のくせに縄張り意識が強いのだろうか。
でも、レオとライヤで倒してしまうので、俺の出番はない。
ひたすら俺は、ドロップ品を風魔法で集め、収納していくだけだった。
また、集団でさくらんぼの木がいる。高級さくらんぼに母さんが大喜びしそうだ。




先に進むと20m級の大木の集団、森が見える。
松や杉の木がゆっくりだが、どしどし動いている。動く森、初めて見た。
松や杉は仲良しなのか、一本一本が大きいのでぶつからないよう適度の距離をおきながら動いているようだ。
また、レオとライヤが駆け出して行ったが、数が多いのでどうするのかと思っていたら、森から一本だけ、はぐれた木が出た。
二人はその木に集中して攻撃をするが、大きな木は何本もある枝をふり回しながら、二人が近寄るのを阻止していた。
似たようなシーン、映画で見たな。



吃驚した、ライヤが口から炎を吹いた。葉っぱや枝が燃え始めた。木が火を消そうと、やたら枝を振り回し始めた。
すきをついて、レオが木の本体に近づき一撃を加える。一撃が効いたのか、大木は倒れた。
ライヤも鋭い爪で攻撃する。木の周りが光だし粒子となって消えた後には、20mくらいの杉の木の丸太があった。




丸太を収納し、ライヤの口を観察した。やけどはしていないな。
どうやら、炎魔法を使えるようになったらしい。
何度も言うおやばかだが、うちの子天才だ!!




動く森の数本の木からドロップした丸太を、収納しながら先に進んだ。
桐の木もあり、たしかご近所の佐々木のじいさん、昔、家具職人だったから喜びそうだ。
なんせ20mもの桐の木なんて、そうそうないからな。
なんて思いながら探索を続ける。




奥に進むほど木が大きくなっていく。それが動くから不思議だ。
もう草原はない。まわりは動く森林状態だ。
俺たちに向かって攻撃してくるのは巨大な30m級の大木だけで、わりと若いといっても20mはあるがそれらの木は逃げていく。



レオとライヤだけで倒せるが、さすがに体格差があり一撃では、なくなってきた。
でもすごい反射神経と爪攻撃で戦闘している。
ちなみに山火事怖いので、炎の魔法は使わないよう言い聞かせている。
あいかわらず、俺はドロップした材木を、ひたすら収納するだけだった。






4階層ダンジョンを探索初めて5日たった。
俺たちは取っ手のない巨大な金属の扉の前にいる。
扉だけある。不思議だ。ほんと、どうなっているんだ、ダンジョン。


「ボス部屋だ。準備はいいか。」


『『はい』』






俺たちは、ボス部屋攻略を開始した。
ボス部屋の中は草原だった。
まずは、いろいろな果物の木が100本はいるだろうか、俺たちに突撃してきた。
俺たち三人はほぼ一撃で倒していく。俺たちの通った後には、大量の果実が落ち、縮んだ苗木が根付いていた。
10分程度で木は全滅していく。


次に出てきたのは、数えきれないくらいの10mから20m級の大木が襲ってきた。
俺たち3人は連携して、次々と倒していく。
あっ、ライヤがめんどくさがって口から炎を出した。
1本の木に火がつき、燃えだしている。それを、他の木が枝で火を消そうとしてハラっている。
他の木に火がついた。また、別の木が、木を助けようとしている。
助けようとしていた別の木に、また火がついた。



俺たちと戦闘どころではないようだ。おもしろいように炎が広がっていく。


ライヤの炎魔法は普通の火ではなく、特殊な炎だ。簡単には消えない。



おや、どこからか巨大な動くサボテンが、数十本現れた。
サボテンから大量の水が放出され、燃えている木の消火をしていく。
すごい、サボテン消防団だ。




消火が終わったので、戦闘開始である。
だが、相手は見るからにボロボロ状態で、巨大サボテンも水を出したせいか干からびている。
もちろん手加減なしで攻撃したので、30分程であれだけいた大木が全滅していた。



次に出てきたのは30m級の大木たち。
これまた大きすぎて、数がわからない。
しかも小さな俺たちを的にするには、1本が大きすぎる。俺たちに近づけないでいる。
俺たちは、時間がかかるが3人対1本の戦闘で、1本づつ倒していくことにした。
倒されてドロップした大きな丸太が邪魔で、踏み潰せばよいのに、避けながら戦おうとしていて、俺たちに近づけないでいる。
果実は仲が悪いのに、大木はほんとうに仲が良い。
どれくらい戦っていただろうあちこちに、ドロップした30mの丸太が横たわっていた。



さらに奥に進むといた、4階層ボス。
まだかなりの距離があるのに、みるからに大きい50m級の大木が1本みえる。
おお、こんなに距離があるのに、無数の葉っぱが刃物のように襲いかかってきた。
カッターの刃のごとく鋭い葉っぱが俺たちを襲ってくるが、俺たちの防護力にはかなわず、俺たちは大量の葉っぱに埋もれた。



レオが風魔法を使い、葉っぱが舞い散り、俺たちは何事もなかったように先に進む。



ボスモンスターに近づいていくと、その巨大さに圧倒される。
今度は、先端のとがった枝が、槍のように無数に飛んできた。
枝は爆発するが、俺たちはレオの風魔法の応用でバリアみたいな薄い風の幕で守られているので傷ひとつない。
どんどんボスモンスターに近づいていく。


ライヤが炎を吹き、ボスモンスターの葉や枝に火がついた。
レオが雷撃を打つと、てっぺんからものすごい衝撃でつらぬいた。
ボスモンスターは、大きく一振りすると火を消した。ライヤの炎を消せるとは、さすがボスモンスターだ。
雷攻撃もてっぺんあたりに黒い煙がでてるが、ダメージはなさそうだ。



ボスモンスターから蔓のようなムチが、無数に飛んできた。
俺はそれをよけながら、【スキル解析】を使った。


【解析】
対象4階層ボス エターナルツリー
レベル15
木の大精霊。
再生能力が高い。魔核は根分にあり、普段は地中の深いところにあるため発見がむずかしい。



「レオ、ライヤ。魔核は地中にあるぞ。破壊できるか?」


『『わかった。』』




俺は『ボスツリー』の気をひくため、特大炎魔法を放った。
盛大に燃え始めたボスツリーのために、またサボテン消防団が出てきた。
だが俺の炎の威力に、焼け石に水の状態だ。
するとボスツリーのムチのような蔓が、しぼんだサボテンを捕まえ、雑巾を絞りだすようサボテンを締め付けた。
水を出しきったサボテンは光の粒子となり、そのあとにはソフトボール大の丸いサボテンが数個いたが、ボスツリーの蔓にとらえられ、炎に放り込まれている。
サボテン消防団の扱いが哀れだ。




サボテンはかわいそうだが、手を抜かず戦いを続けていたが、しばらくすると、ボスツリーの動きが止まった。
地面を見ると、いくつもの穴が掘られていた。
うちの子たちが、魔法を使い穴を掘って、魔核を破壊したようだ。





レオとライヤが穴から出てきて俺のそばにきた。
足元から地響きがしたかと思ったら、『ボスツリー』の根っこが出てきて、ボスツリーの巨体が倒れてきた。
俺はあわててふたりをだきあげ、跳躍した。
50m級の大木が倒れるのに時間がかかり、といっても30秒くらいだが俺たちが逃げるのには十分な時間だ。
地鳴りと地響きがすると、光の粒子の雨が空から降り注ぐ。




魔法陣がでていた。
どうやら無事、4階層ボスを倒せた。



あれ、ドロップアイテムがでない。
不思議に思いあたりを見わたしていたら、200m先位に1m位の高さの若木がいた。
若木は俺が見つめていたら、あわてて近づいてきて、そのまま土下座してきた。



わけわからない。



【鑑定】
種族:ユグドラシル・ツリー  年齢不詳
レベル100 
世界の始まりの木、世界樹とも呼ばれているツリー族の象徴。攻撃力がない。臆病なので常に隠れている。
その葉を煎じると、どんな病も傷も、たちところに治せ、1枚につき10歳は若返ることができる。



変わった魔物がでてきた。
土下座状態で葉を50枚くらい差し出している。
あれ、スクロール3つと短剣も差し出してきた。


「もしかして、『ボスツリー』に隠れていたのか?」


俺の言ったことを理解しているようで、世界樹は縦に枝を揺らす。
まあ、くれるものは受け取っておこう。葉とスクロールと短剣を収納する。



「ライヤ、レオ。ボスも倒したし、今日は帰るぞ。」


『『はーい』』




俺たちは、出きたばかりの魔法陣に乗った。
世界樹は枝をふって、俺たちを見送ってくれている。あいつ世渡り上手だな。





あれ、相棒たちが頼もしくて、今回俺の出番がほとんどなかった・・・





ライヤも小さく変化できるようになったので、牧場内を案内した。
なぜか、牛鶏やつらはライヤが近づいても逃げなかった。
ライヤに聞いてみた。

「ライヤ、牛鶏、食べてみたい?」

『いいえ。』



牛鶏やつら、勘がいいな。強さではなく、レオの食い意地を察してたのか。
レオの食いしん坊め。







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