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第一章 始まり

9 2階層キングボススライム登場

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冬でダンジョン探索に時間がついやせるので、量もそれなりにそろいネット販売も順調だった。むしろ絶好調といえる。

オークションのおかげで、俺のダンジョン品たちは新鮮・大きさ・味といい一般の品より上等らしく特品とネット内で評価が高まり、なんと市場価格より高値がつくようになっていた。




そんな時、何回か取引のあった人から直接連絡があった。
その人は、都内の有名レストランの料理人らしく、俺のトリュフを絶賛してくれ、高値で大量に取引きしたいとのことだった。
他にも大阪の人で、やはり日本料理を営んでいるが、松茸を定期的に取引きできないかと連絡もあった。
レストランなどをやっている数人から、ある程度のまとまった量があれば高値で直接取引きできないかと、問い合わせもある。




始めたばかりは、郵便局や銀行に行って、手配等のため頻繁に外出を余儀なくしていたが(冬の北海道の外出は大変で活動時間が少ないんだぞ)、あまりにも件数が増えたため、今では、毎日 宅配便屋に回収しにきてもらい、銀行はネットを利用している。
相手とのやり取りや取引き量の多さに、面倒になっていた。
それと、ネットの売り上げがものすごい額になってきて、目立つようになってきたこともあり、ネットはやめて、数人と直接取引きをすることにした。



皆が、高値でしかも出来高収穫でよいといってくれるので、その都度、連絡し大口取引きすることにした。
個人でやり取りしていた時は気がつかなかったが、星持ちの有名店を送り先に指定している人もいて驚いた。


母さんと相談し、なんせ一回につき十数万の取引になるため、領収書やら諸々で神崎牧場として売買することにした。ちなみに、神崎牧場は自営業の青色申告、社長兼経理担当は母さんで、唯一の社員は俺、のふたりだけだけど。
母さんに、この販売を丸投げしたおかげで、俺はダンジョン探索に専念することができた。




なかには勘の良い人がいて、松茸やトリュフなど北海道ではとれないはずなのに送られてくるので、栽培に成功したのではと疑ってさぐってくる人もいる。

ダンジョンも一種の量産培養になるのか?

産地ダンジョンでこちらも後ろめたいし、相手は俺のダンジョン品がほしい、いわゆるウィンウィンの関係だから(まさかメードインダンジョンとは知らないだろうが)大口注文の方々は暗黙の了解で取引きをしている。




そんなあわただしく過ぎていく中、俺は2階層ダンジョンの探索を続け、大きめの金属扉と2回目の邂逅をはたした。まさしく、2階層ボス部屋だろう。


一階層のボス攻略のように突撃せず、1階層で大量の回復薬ポーションを手に入れたり、儲けたお金でちょっと高めだが強度の高いプロテクターを買ったりと、今回は時間をかけて準備し、2階ボス部屋に挑んだ。

あと、母さんにも、3日帰らないと前もって伝えた。




そういえば、1階層キングボススライムだが、1ケ月くらいしたら復活した。
1階層のアイテムドロップ集めをしていたら、偶然にもボスが復活していたのに気がついた。
やはり、50匹くらいの普通のスライムの後、20匹の大きなスライムがでて、そして最後にキングボススライムがでた。
俺の身体能力がパワーアップしていたので、これらのスライムを無傷で倒すことができた。
2階層ダンジョンを探索しているうちに、1階層ボスを凌駕するくらいレベルがあがっていた。
けれど、大量のアイテムをドロップしたが、残念ながら魔法のスクロールだけはドロップしなかった。
スクロールは初回オンリーのレアアイテムのようだ。
ボスは、たぶん1ヶ月くらいしたら、また復活するだろう。






2階ボス部屋に入ると中は熱帯のように暑く、汗がでてきた。

目の前には30匹くらいの白菜とホウレン草スライムがいた。
やつらは俺に向かって突進してきて爆発するが、俺は跳躍ジャンプしてかわす。
今の俺は10mくらいまで軽く跳躍できるくらい、身体能力が上がっていた。
オリンピックに出れば金メダルも夢ではない。出場しないけど。


次に、茄子なすやら胡瓜きゅうりスライムが30匹くらい突進してくる。それらも跳躍ジャンプでかわし、茄子や胡瓜は互爆で自滅していていった。まさに、高見の見物だった。


その後も野菜スライムのオンパレードだ。もう何匹いるかわからないほど突進してくるので、ジャンプで跳ねながらかわしていく。数が多いせいで互爆はもちろん誘爆もしている。



すると、今度はじゃがいも攻撃がきた。
俺は素早く移動しながら、飛んでくるじゃがいもをナイフで打ち返した。俺の速度も格段に上がっており、爆発する前に打ち返すのでじゃがいもも自爆し、次々に自滅していった。
にんじんや玉ねぎも参戦してくる。
今回はスライムの数がやたら多いな。
爆発だと野菜がドロップしないのでもったいないと思いつつ、野菜スライムを倒していく。




攻撃が止まったかと思うと、今度は大きなきのこ系スライムがでてきた。マツタケスライムもいる。
爆発させられない。なんて心理的作戦をしかけてくるんだ。


しかも、スライムたちは頭のきのこから胞子みたいなのを放出し始めた。
あわてて、離れるが少し吸い込んだようで、めまいがする。神経系のガスなのだろう。

俺は逃げながら回復薬ポーションを飲んだ。そして、持っていたタオルに回復薬をたらし、口にまいた。
持ってきたスライム水を、きのこスライムたちにいた。
スライムたちの動きが鈍り、胞子も少なくなったところで、俺はスライムたちの魔核をナイフで攻撃し倒していった。



でかスライムたちは俺の速さについてこれず、なおかつ土に埋もれないので魔核が狙いやすい。
スライム水を撒いては魔核攻撃を繰り返し、『マツすら』は次々に松茸をドロップしていった。
数が多く消える時の粒子の光がまぶしい。




ようやく光がおさまると、奥にいました、2階層キングボススライム。



俺は思わず

なんと、2階層キングボススライムは大きさが5mくらいあり、てっぺんにドラゴンフルーツと呼ばれる果物を数えきれないほど実らせ、その下の部分の体のいたるところにはマンゴーや大粒いちごやメロンなどがあり、高級フルーツ盛りだくさん状態だ。
下部の体には松茸、トリュフ、高級しめじがびっしりついている。
歩く豪勢かつ美味な盛りかごの様相をしていた。
もちろん小さい王冠もある。



あれ?魔核が見あたらない?

どこだ?どうやって倒せばいい?



キングボススライムはどこからか雄叫びをあげると、何本もの触手みたいなものを生やし、なんと、自分の身(実)であるフルーツやきのこをちぎっては、俺に向かって投げつけてきた。もちろん爆発する。



逃げながら俺の顔はムンクの絵画状態だ。
やめろー、高級食材が爆発していく。
2階層キングボススライムは、身体攻撃よりも心理的攻撃をしかけてくるので精神的につらい。
体の傷ではなく俺の心の傷が悲鳴をあげる。
あわてて、時間稼ぎになるかわからないが、持っていたスライム水を投げ続けた。



逃げながら、キングボススライムの周りを何周かしていて気づいたが、上部、中部、下部の3か所のフルーツやキノコがひとつずつ光っていた。
光は一瞬で消えるのでわかりづらいが、なるべく俺の場所から死角になる場所へと移動している。
あれがキングボススライムの魔核だろう。
俺は手をかざし魔法を発動した。


「ウォーター」


手から、水があふれるように流れ出て、光る部分を狙い打ちした。
俺の魔法ウォーターは、水の曲芸人のように、左右上下、曲げたりと自由自在に水を操れるようになっていた。
続けざまに「ウォーターカッター」を発動させ、光るきのこの魔核を狙い攻撃をした。
あっさりと、下部のきのこ魔核を破壊した。下部からの伸びていた触手がとまった。
この要領で、今度は中部の魔核を狙い撃ちし、これまた簡単に破壊することができた。



残るは、上部の派手なフルーツだけだ。
すると、キングボススライムの大きな体が回転しはじめた。
すべてのフルーツやきのこが、一斉に飛び散り爆発する。いたるところで爆発するので、広いスペースのなかに煙が充満する。



煙が薄くなりキングボススライムのシルエットが見えてくる。回転は止まっていた。
だが体には、新たなフルーツやきのこがびっしり生えかわり、なんと魔核も復活し、また移動しながら光始めている。

触手がでてきて、新しく生えたフルーツを投げつけてくる。
思わず舌打ちする。



きりがないと思いつつも魔核を破壊しては、新たに生えてくるという戦闘を何回、何時間も繰り返した。
俺の魔法も回数の限界を迎える。あと5回くらいしか使えないだろう。
やはり3か所同時攻撃するしかない。



心を鬼にして最終手段を使う。いわゆる、火責めだ。
俺はガソリンを投げつけ火をつける。

キングボススライムが火だるまになるかと思いきや燃えなかった。
逆にきのこやフルーツだけが燃えていて、焼きフルーツや焼ききのこのおいしそうな臭いが室内にただよう。


キングボススライムがまた回転しはじめ、体から燃えたものが次々と落ちた。
おや、今度は爆発せずそのまま地面に転がっている。
また新しく生え変わるが、あれ、さっきより、きのこも果物も大きくなってないか?



また火責めする。
キングボススライムが回転して焼けたきのこ果物を落とし、また新しく生え変わるを繰り返した。


部屋中おいしそうな匂いが充満する。
少し汚いが俺は焼け落ちた果物やキノコをおいしくいただいた。
しまった。醤油をもってくればよかった。
逃げながら食べているとふと思った。これ食い放題バイキングじゃん。




逃げて食べてを繰り返していたが、そろそろ飽きてきた。
じつは、生え変わるたびに、きのこや果物が大きくなり、生え変わる時間がかかることに気づいた。
最初に比べると5分くらいだが。俺には、5分で十分だ。


火責めをおこない、キングボススライムが回転。
生え変わるタイミングを見計らって、俺は続けざまに【ウォーターカッター】を3回発動させ、魔核を攻撃した。




キングボススライムが大爆発したかと思うくらい、部屋中が光に包まれた。
とっさに目をつむり身をかがめてしまった。
1分くらいしただろうか恐る恐る目を開けてみると、キングボススライムのアイテムドロップがそこら中に落ちていた。
高級マンゴーはもちろんメロン、いちご、フルーツドラゴンや松茸しめじ等々所せましと落ちている。




もちろん、大小さまざまな魔石もいたるところにあり、1階層ボスのドロップしたものより長い豪華なナイフや今度は槍が落ちていた。
もちろん、スクロールもあった。

レベルが上がるブザー音が鳴る。
さっそく、スクロールを開く。




【ファイヤー】
【ファイヤーボム】
【スキル 錬金】


激しい頭痛とともに、俺は3つの新しい魔法を手に入れた。




2階層キングボススライム戦はこうして幕を閉じた。





今回、気絶せず戦闘も1日ですんだが、ドロップアイテムの量が多い。
高級食材をひろっては家に運びを丸二日延々と行った。
なんせ、高級食材の大きさが3倍になっていたのだ。
助かったのは、キングボススライムのいた後に、魔法陣が出現してくれたことだ。



ほっとけばいい?
そんなもったいないことをするほど、俺の貧乏性をなめるなよ。
しかし、大きすぎてこのままだと売れないだろうな。
まあ母さんがなんとか加工するだろう。



しばらくは、焼いたきのこ果物は食べたくない。




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