7 / 20
第一章 始まり
7 2階層と魔法陣、新スライムがでた
しおりを挟むさすがにボロボロの姿を見て母さんが心配してダンジョンに行くことを反対し始めたが、なんとか説得、四日後ようやくダンジョンに入った。
俺は、ワクワク、ドキドキしながら探索をはじめた。
1階層ダンジョンを走って、ボス部屋に向かった。
驚いたことに格段に走るスピードがあがっている。今なら日本新記録も出せるのではないだろうか。
ボスを倒して飛躍的に身体能力があがっていた。
スライムを瞬殺しアイテムを拾わず走り抜けたので、ものの数十分でボス部屋の大きな金属扉の前についた。
ボス部屋の自動扉が開き、中に入ったが何もいなかった。ラスボスはもう出ないか、もしくは時間がたてば復活するのかわからないが、とにかくやたら広い部屋を通りぬけると、キングスライムがいた場所の地面に紋様なものが書かれていて円柱状態で天井に向かって光っていた。
俺は、「鑑定」と唱えた。
【鑑定】
移動魔法陣
解放:1階層2階層
目の前に透けたバネルがあらわれ表示される。
1階層で手に入れたスクロールのひとつ、【スキル 鑑定】だった。
その名の通り、対象の鑑定をする。
【スキル 鑑定】は回数制限がないようで、何十回使っても気絶しなかった。
あれから魔法は夜に練習していた。気絶しながら。
紋様というか魔法陣だった。
光るライトを投げ入れてみた。うっすらと見えるライトに変化はないようだ。
消滅することはないようだが、さてどうするか?
意を決して、俺はその中に入ってみることにした。
光のカーテンを通り魔法陣の上に立つと、目の前に『入口』と『2階』と書いてある立体スクリーンのようなものがでてきた。
俺は『入口』のボタンをタッチした。
一瞬光ったかと思ったら、すぐに光はおさまり、一畳くらいの広さで地面には謎の魔法陣が描かれている狭い部屋にいた。
取手のない扉になぜか漢字で『入口』とかいてある。
扉に触れると自動的に開いたので出てみると、そこは、ダンジョンの出入口だった。
いつのまにか、ダンジョンに入ってすぐの壁だった場所に、取手のない金属扉が出現していた。
すごい、魔法陣は瞬間移動装置だった。
俺は小部屋に戻り魔法陣の上に乗ると、「2階」と書いてある立体スクリーンが目の前に出たので「2階」をタッチする。
一瞬光り、同じような一畳くらいの部屋にいたが、扉には『2階』とかいてある。
俺は、自動扉にふれ出た。
そこは、草が生い茂っている、2階層ダンジョンだった。
2階層ダンジョン、デビューである。
地面にはくるぶしくらいまでの草が生えている。
一階層より通路は倍広く、やはり迷路になっているようだ。
壁は岩より柔らかい不思議な素材でできていて明るく、温かい。
いや真夏に近い温度があり、温室のようだ。
さて、2階ダンジョン探索をしよう。草むらを慎重に進んでいった。
少し進むと、すぐにスライムに出会った。
だが、今までのスライムと違うのが一目でわかる。
大きさは今までのスライムくらいだが薄緑色、透明の体をしている。
しかも、なんと頭に立派な白菜のような葉が生えているのだ。
その横にはやはり頭にたわわになったホウレン草のような葉を生やしたスライムもいる。
ふたつが歩いてくるではないか。
俺が茫然と見ていたのに気ついた二匹は、一瞬で穴を掘り、葉を地表に残し地面に埋まってしまった。
見た感じは普通の畑にある白菜とホウレン草だ。
俺は鑑定のスキルを使った。
【鑑定】
種族:ホウレン草スライム
レベル2
【鑑定】
種族:白菜スライム
レベル2
目の前に透明パネルが表示される。
やっぱり、野菜スライムだった。
未知なるダンジョンの産物がわかるので、【スキル 鑑定】辞書のかわりになり、便利だ。
ちなみに俺自身の鑑定は
【鑑定】
種族:人間 神崎達也 27歳
レベル5
スキル 【鑑定】
高いか低いかよくわからない。俺は凡人だから一般人のステータスの気がする。
俺はホウレン草の葉を持ち、引き抜いてみた。
わりと簡単に抜けたが、そのあとおもちゃの打上花火くらいの火力で爆発した。
少し前の俺だったら大怪我していたと思う。
防衛能力が上がっていたのだろう、手と腕が少しの火傷ですんだ。
ポーション瓶を飲み回復した。あいかわらず苦かった。
驚いた、土から引き抜くと爆発するとは、なかなか厄介だな。
白菜も爆発するかと思うと簡単には引き抜けない。
さて、どうしたものか?
長めの棒にナイフをつけ、離れたところから埋まっていない野菜の部分を切りすばやく逃げた。
切ったとたんに、野菜スライムが土の中に埋まったまま葉ごと爆発した。失敗だ!
どうやったら、野菜部分が手に入れられるだろう。
先に進むと今度は、見たことのある葉が3つ埋まっていた。
あれは、にんじんの葉だ。
【鑑定】
種族:にんじんスライム
レベル2
俺はスタンガンを葉にあててみたが、やはり土に埋まったまま爆発した。難しい!!
その場を通り過ぎようとしたら、残りのふたつの にんじんスライムが爆発した。
危ない、すばやく後方にとんだ。
スライム2匹だとなかなかの威力の爆発になるな。
俺の歩く振動でも感知して爆発したのかな。
野菜部分をあきらめて燃やすか、いやいや、ダンジョン野菜食べてみたい。
ますますやっかいだな。
歩きながら考える。野菜スライムかあ。
そうだ!俺はある事を閃めく。
すると、偶然にもほうれん草スライムが歩いてきた。
俺に気づくと、ほうれん草スライムはものすごい速さで埋まった。
俺は手をかざし、魔法「ウォーター」を発動、ほうれん草にかけた。
おお、ほうれん草の葉がピンとたちあがった。
俺はほうれん草を引き抜いて遠くに放り投げた。3秒くらいしてから爆発した。
おお、新鮮化すると爆発が少し遅くなるのか。
この3秒を利用して、あとは核をいかにすばやく攻撃するかだな。
しばらく歩くと白菜スライムと葱スライムがいた。俺に気づくとふたつとも土に埋まった。
魔法発動「ウォーター」。葱がキラキラ輝いている。
俺は葱をつかみ引き抜き、すかさず核をナイフでついた。光ったのであわてて手を放した。
するとなんと、足元に葱が3本と小さな魔石がおちていた。
スライムは光の粒子となり消えた。
やったぞ、葱と魔石をゲットした。
よし、次だ。
魔法発動「ウォーター」。
水を浴びた白菜の葉が倍近くに広がった。白菜をつかみ引き抜いた。
だが、片手で大きな白菜の葉は持ちづらく、核の攻撃が遅れて爆発してしまった。
すかさず手を放したが火傷してしまった。失敗だ!!!回復薬ポーションを飲んだ。苦い。
なかなか難しいな。
とにかく、野菜スライムの対処方法をみつけた。
野菜スライムは土にすぐ埋まってしまい、無理に引き抜いたり近くを歩くだけでも爆発する。
そこで俺の魔法は回数制限があるので、スライム水を使い、爆発を遅らせ野菜スライムを攻略していくことにした。
そのあと白菜、ほうれん草、葱のほかにレタスや胡瓜と茄子などいろいろな野菜スライムと出会った。
すべてドロップして野菜を収穫できた。
1階は液体ダンジョン(液体スライム)、2階は野菜ダンジョン(野菜スライム)だった。
そのあともカブや大根スライムが出てきたので倒した。
景品を手にするゲームコーナーみたいだ。
順調に野菜スライムを倒していったが、ある野菜の葉っぱスライムが埋まっている。
なんと北海道名物のじゃがいもの葉ではないか。
うっかり近づいてしまい、爆発するかと思ったら、葉からパイプのようなものが出てきて突然石のようなものが飛び出し攻撃してきた。
とっさによけられたが、なんと飛び出してきたのは”じゃがいも”で壁にあたると爆発した。
そして、次々にじゃがいも攻撃してきた。
『ああ、もったいない』と思いながらよけ続けたが、10発くらいで攻撃が止まり、みるみる葉が枯れ、地面に埋もれたまま爆発した。
じゃがいもスライムは、身?実?を犠牲にして攻撃してくるのか。なんとなく切なさを感じさせられる。
ここは、道民として『じゃがいも』を何としてもゲットしてやらないといけない!
ちなみに、じゃがいもスライムも普通にスライム水をまけば、じゃがいも発射攻撃してこなかった。
普通に倒し、初ジャガイモを10個ゲットできた。
ほかに、玉ねぎも攻撃してくるので要注意だ。
いろいろな野菜が集まった。
しかも新鮮でどれも旨そうだが、結構、荷物になるのが難点だな。
野菜をみてたら、腹が減ってきた。
まだ、早いが今日は帰ろう。
母さんが、ダンジョン野菜を使った、ポトフ、カレー、野菜炒めを作ってくれた。
大量に作ったが、はたして二人だけでこの量を食べきれるのかと思っていたら、あっという間に完食した。
ふたりして黙々と食べた。旨すぎる。
幸せを感じた夜だった。
10
お気に入りに追加
472
あなたにおすすめの小説
彼女たちの恋愛対象:シーズンⅡ
いちば なげのぶ
恋愛
シーズンⅡは2015年。
物語の構成上、東北6県の県庁所在地等が架空の名前です。
北東北3県⇒津刈(つかる)、北部(ほくぶ)、安西(あんざい)
南東北3県⇒刻文(こくぶん)、茂上(もがみ)、星那(ほしな)
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
英雄の息子
全幻庵
ファンタジー
帝国の圧政に苦しむ故郷・ベスルベルクを憂いたアルバンは、ゲリラを組織し、帝国との戦いに身を投じる。激しい戦いの末、彼らは帝国からの独立を果たす。アルバンは、「建国の英雄」として称えられた。
そんな独立戦争から、はや40年。戦いの日々は既に過去のものとなり、英雄たちは第一線を退いた。巧みな政治交渉で帝国との関係を修復したベスルベルクは、「トラビス」などの独自技術を背景に、「小さな大国」として大繁栄を遂げていた。
そんな「小さな大国」で、アルバンの養子として育てられたコーは、自然を愛する心優しき青年へと成長し、質素ながらも平和で幸せな日々を送っていた。しかし、とある事件をきっかけに、世界のすべてが歪み始める。
平和に見えた国に渦巻く陰謀を知ったコーは、ベスルベルクの真の姿を知り、私情と大義の間で揺れ動く。
「お前は、裏切り者を許せるか?」
※この物語は、法律・法令、倫理に反する行為を容認・推奨するものではありません。
最愛のオメガ
マツユキ
恋愛
自分の全てにコンプレックスを持っている華。そんな華はオメガだった。アルファが頂点にたつこの世界で、オメガはなにも出来ない者として認識されてきたが、それも昔の話。アルファとオメガは見目の整った者が多く、現代でオメガはアルファに次いで、羨望されている性となっていた。自分がオメガだと分かり、更にコンプレックスが刺激される華。
運命の番に憧れるアルファが、オメガであることを隠す華を溺愛し、華が受け入れるまでの物語
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
彼女たちの恋愛対象:シーズンⅢ
いちば なげのぶ
恋愛
シーズンⅢは2016年。物語の構成上、東北6県の県庁所在地等が架空の名前です。
北東北3県⇒津刈(つかる)、北部(ほくぶ)、安西(あんざい)
南東北3県⇒刻文(こくぶん)、茂上(もがみ)、星那(ほしな)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる